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「いつもと様子が違うんです」酒に酔って転倒した50代男性…同僚の一言に救急隊が察知した“隠れた異変”

  • 2026.7.30
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。ライターのとしです。

酒を飲んだあとにふらついて転倒していれば、多くの人が「酔いすぎたのだろう」と考えるかもしれません。

しかし、救急現場では、飲酒だけでは説明できない重大な異変が隠れていることがあります。

今回は、元救急隊員として現場で活動してきた筆者が、同僚が口にした「いつもと違う」という言葉が重要な手がかりになった事案をご紹介します。

帰ろうとしたところで突然転倒

救急要請が入ったのは、50代男性が飲酒後に転倒したという事案でした。

男性は同僚と酒を飲み、帰ろうとした際に足元がふらついて倒れたとのこと。

現場に到着すると、男性からはお酒のにおいがしていました。
受け答えもはっきりせず、一見すると、酒に酔って足元がふらつき、転倒したようにも見えます。

同僚も最初は、男性がいつもより酔ってしまったのだと思ったそうです。

救急隊は転倒によるけががないかを確認しながら、意識状態や呼吸、血圧などを観察していきました。

同僚が感じていた「いつもとの違い」

救急隊が同僚に普段の飲酒時の様子を尋ねると、気になる答えが返ってきました。

男性は普段から酒を飲むことはあっても、ここまでふらついたり、言葉が聞き取りにくくなったりする人ではないとのこと。

この日の飲酒量も、いつもと大きく変わらないようでした。

同僚は心配そうに「今日はいつもと様子が違うんです」と話していました。

本人の様子だけを見れば、酒に酔っているようにも見えます。

しかし、普段を知る人が感じた「何かがおかしい」という違和感は、救急隊にとって見過ごせない情報でした。

酒の影響と決めつけず、改めて男性の全身状態を詳しく確認することにしました。

飲酒だけでは説明できない異変

救急隊が男性の手足の動きを確認すると、片側に力が入りにくい様子が見られました。

両手を同じように上げてもらっても、片方が徐々に下がってきます。
言葉も聞き取りにくく、ろれつが回らない状態でした。

飲酒している人にふらつきや、ろれつが回らない様子があれば、酔いの影響と思われやすいものです。

しかし、片側の手足に力が入りにくい様子まであると、飲酒だけでは説明しきれません。

救急隊は、脳の病気が隠れている可能性を考えました。

酒のにおいや「飲酒後の転倒」という分かりやすい状況があるからこそ、別の異変が見えにくくなることもあります。

発症した時刻を確認して医療機関へ

救急隊は同僚から、男性が最後に普段どおり話していた時刻や、ふらつき始めた時刻、転倒前後の様子を詳しく聞き取りました。

脳の病気が疑われる場合、症状がいつから始まったのかという情報は、その後の検査や治療にも関わります。
意識状態や手足の動き、顔の左右差、血圧などを確認し、対応可能な医療機関へ状況を伝えました。

受け入れ先が決まったあとは、搬送中も男性の意識状態や麻痺の様子、受け答えに変化がないかを繰り返し観察します。

幸い、搬送中に大きな容体変化はなく、無事に医療機関へ引き継ぐことができました。

その後、男性は搬送先で脳梗塞と診断されました。

結果的に、転倒やろれつの回りにくさは、飲酒だけによるものではなかったのです。

飲酒後の転倒に見えても、普段を知る人の「いつもと違う」という言葉から、別の病気が見えてくることがあります。

目の前の酒のにおいや状況だけで判断せず、本人の状態と周囲から得た情報を照らし合わせることの大切さを感じた事案でした。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。  


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