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「寒すぎて体調が悪い」猛暑日のバスで凍える高齢女性…周囲が良かれと思ってやっていた“裏目に出た親切”

  • 2026.7.29
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

今回は、15年ほど前、自治体の福祉バスに乗務していたときに起きた車内トラブルをご紹介します。

当時、今のように40℃に迫るほど夏の気温は高くなかったものの、35℃を超える日は多くありました。福祉バスを利用する高齢者からは、「最近の夏の暑さは体力・気力ともに削られる」とよく聞いたものです。

そんな猛暑のある日に起きた乗客同士のトラブルをお話します。

真夏なのに寒い?快適な車内で起こった体調不良

厳しい暑さが続くある日、福祉バスに乗務していると、高齢の女性から声をかけられました。「寒すぎて体調不良」という、真夏にはそぐわない内容に、私は頭の中にハテナが浮かびました。

女性の話をよく聞いてみると、車内が寒すぎるとのことでした。しかし、マイクロバスの冷房は適度な風量に設定しており、特に車内が寒いとは感じませんでした。

他の乗客を見ても、寒そうにしている人は見当たらないなか、さらに女性から寒さが苦手であることを聞きました。

バス停に到着したとき、サイドブレーキを引いてから運転席を離れ、乗客が座っていた場所に足を運びました。車内には多くの乗客がいましたが、他の乗客に状況を伝え、荷物を置いていた座席をあけてもらいました。

寒いという女性には、エアコンの風が直接当たりにくい通路側の席に移動してもらいました。しかし、そのとき私は違和感を覚え、もともと女性が座っていた座席に視線を移しました。

最初に座っていた座席も通路側なのに寒かった理由

車内が寒いという女性が座っていたのは通路側でした。つまり、席を移動しても大きな変化は期待できないということです。

しかし、なぜ通路側の座席でそんなにも寒かったのか、私のなかでは疑問が残りました。

そこで、ふと気になり視線を移したエアコンの吹き出し口を見て、女性が寒いと言った疑問が解けました。

女性が座っていた座席の前後にあたるエアコンの吹き出し口が、1つずつ女性に向いていたのです。座席ごとに吹き出し口は2つあります。前後を含む3つの吹き出し口から冷たい風が女性に当たっていたなら、寒く感じるのも無理はありません。

しかし、なぜそんな不思議なことが起きていたのか気になった私は、乗客に吹き出し口を変えたのかどうかを尋ねました。

すると、女性が座っていた座席の窓側に座っていた男性は「暑そうな服装だったから、暑いだろうと吹き出し口を変えた」と教えてくれました。

また、前後の座席に座る乗客から聞いた理由も、同様の内容でした。

乗客の親切心から起きた体調不良トラブル

確かに、女性の服装だけを見ると、猛暑の日なのに春秋用に近く、暑そうに見えます。乗客たちが暑そうだと感じたのも無理はないでしょう。

しかし、実は女性は寒さに弱く、病院内が寒いため長袖を着ているとのことでした。

「夏に夏服を着る」というのは、人の価値観によって異なるものだと、当時の私は初めて気づき、目から鱗が落ちる思いでした。

寒く体調が悪くなったという女性は、今日に限って冷たい風がきつく感じた理由を知り、驚いていました。しかし、同じバスに乗車する人の親切心であったことから、怒って責めるようなことはありませんでした。

私自身も、乗客がエアコンの吹き出し口を変えたからといって、注意できるわけがありません。乗客に吹き出し口をもとに戻すことへの了承を得て、それぞれの座席へ風が行きわたるよう調節しました。

冷たい風が当たらなくなった女性は、本来の車内温度に慣れてきたのか、体調も良くなってきたようでした。車内での体調不良は、対処する方法の判断に迷うことが多いため、本当に安心したのを今でも覚えています。

優しさが招いたトラブルに今でも心が温まる

当時の体調不良トラブルは、乗客の優しさが招いた結果でした。トラブルとはいえ、今から考えると背景には相手を思いやる温かい気持ちがありました。

そして、今の自分に「どれだけ人を気にかける余裕があるか」を考えさせられるトラブルだったと感じます。

当時のトラブルを思い出すたび、心に余裕を持つ大切さを実感します。こうしたトラブルに出会えたからこそ、これからも人を思いやる気持ちを忘れずにいようと思って、私は日々を過ごしています。


ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


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