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恵比寿・焼鳥の予約困難店 薪と炭を操る注目の焼鳥店が新規開店  今のうちに恵比寿の「ひき田」に急げ

  • 2026.6.26

グルメ最前線 トップレストランを探訪する

ひき田
薪火でじっくりと焼き上げられた「比内地鶏のもも肉」。

瞠目すべき焼鳥店が恵比寿に誕生した。店主は、まったく予約が取れないことで知られる麻布十番のあの「薪鳥新神戸」で、オープン当初から大将をつとめた疋田(ひきた)豊樹氏その人だ。

 

 

この店の特徴は火入れに薪と炭の両方を使用することにある。

カウンター8席の対面には、薪床の上で網の高さを自由に変えられる段付きの薪火窯と、平らな薪床の上で網の高さを無段階に操れるハンドル付きの薪火台が設置してある。カウンターに接した付け台には炭火台もある。

薪火、熾火(おきび)、炭火という3種の火と、燻煙などを駆使して、鶏の部位ごと、あるいは野菜などの食材ごとに、ベストな火入れをするのだ。

大将によれば、「炭火は強い輻射熱によって火入れをするので一瞬の判断が求められる。薪火は常に変化し続ける火力と、食材に作用する燻香を見極める必要がある」のだそうだ。

 

焼鳥に懸けた日々の探求と考察を聞くと、頭を下げたくなるほどだ。

 

店内
カウンターからは、店主が焼いている様子が全部見える。

いざ、実食へ

 

最初に登場したのは、大将が自信をもって贈る「本家比内地鶏(秋田)」のもも肉だ。薪火窯でじっくりと火を入れた。黄金色の皮の中に、肉の旨みが閉じ込められ、噛めばジュジューッと肉汁が口中に溢れる。薪の燻香が凄い。

鶏に振った塩がとてもいい味なのだが、2種の塩をブレンドし天日干ししているという。

ちなみに薪に使うのは、楢(なら)や樫(かし)だが、一串目から直球ど真ん中の焼鳥劇場に、まさにかぶりつき状態で引き込まれる。

薪や炭と店主が格闘する様を目の前で見ていると、心は躍る。

二品目は「きさ輝地鶏(鹿児島)の胸肉の鳥わさ」だ。胸肉の間にレバーを挟み、からすみのように乾燥させた金柑のパウダーを鳥わさに振りかけてある。肉はプルンと歯に食い込み、レバーを入れることで味の深みは倍加する。

 

鶏皮
大根と土佐酢が素晴らしい「鶏皮ポン酢」。

とりわけ印象深かったものに絞って紹介する。

土佐酢を使った「鶏皮ポン酢」が忘れられない。カリッと香ばしく焼き上げた鶏皮に、大根を絡めてあるのだが、これが大根おろしと大根のみじん切りのミックスなのである。このみじん切りのシャリシャリするところが、口腔内に想像以上の喜びをもたらす。土佐酢の按配も見事だ。

 

「長州鶏のレバー」のレバーもプルンと半生で見事な火入れである。これも薪火だ。弾力があるのに、口の中でクリーム状に溶けていく。もちろん、レバーの臭みはどこにもない。

野菜と薪火の相性が素晴らしく、特に「薪焼きの椎茸」が絶品だった。じんわりと焼いて塩を振ったシンプルな調理法で、こんなにジュースが溢れるようになるなんて! 椎茸は茨城県古河市「安喰きのこ園」のものなのだが、なんとここで使われている薪も同じ山から切り出したものだ。まさにテロワールなんだねえ。

椎茸
ジュースが凄い薪火で焼いた椎茸。

驚嘆した「比内地鶏の胸肉」

 

 

店主は「比内地鶏の旨味や上質な脂に惹かれます」と話す通り、比内地鶏に深い愛を抱く。焼いている姿を見れば、鶏を旨く焼くことに対する身を削るような想いが見て取れるだろう。パリッとした皮の旨さが際立っていた。もちろん、ジュースを閉じ込めた胸肉も凄い。

焼鳥っていいもんだなあ、というか、鶏ってこんな旨かったかと目が醒めるような体験だ。

「薪焼きのブロッコリー」は、かなり長い時間をかけて熾火の遠赤外線を当てていた。野菜の甘味に、燻(いぶ)された薪の香りが移っている。削ってかけられた鶏節(鶏を乾燥させた鰹節のようなもの)は、鶏の旨みのエッセンスで、おかげで野菜焼きが鶏料理の範疇からそれることがない。

コースの後半には、大将秘伝の日本酒が香るタレを塗った焼き物が供される。いずれも素晴らしい。

だが、これでは終わらない。〆の三品で衝撃が待っていた。

そぼろご飯
「鶏のそぼろご飯」は米の炊き上がりもいいしニラが秀逸だ。

まず、「ねぎトロ手巻き」だが、これは比内地鶏のトロ(サガリの部分にある内臓の脂)を白米と海苔で巻いたもの。脂肪にこれほどの旨みがあったんだと誰もが驚くレベルだ。と言うか、脇役になることも多い部位の美味しさを、新しい形で出してくれることに感動する。

白米は薪火にかけた羽釜で炊いたあきたこまちだ。羽釜で炊いたご飯は確かに、粒立ち、旨みと甘みに優れている。大将も、「羽釜ならではの味わいが生まれる」と言う。

 

 

次の「鶏のそぼろご飯」は比内地鶏のそぼろなのだが、薪火であぶったニラが載せてある。このニラとのコンビ―ションが、鶏油を含んだそぼろご飯を只者ではないものに仕上げていた。

そば
実に味わい深い「比内地鶏の鳥そば」。

〆の絶品「比内地鶏の鳥そば」と衝撃のデザート

 

 

最後に出されたのが「比内地鶏の鳥そば」。蕎麦は大将自らが打つもので、蕎麦店での数年間の修業の賜物である。石臼で自家製粉にした蕎麦粉を、手打ちし手切りにした二八蕎麦だ。もりつゆは、鶏出汁とカツオ出汁を合わせて寝かせたもので、しみじみと味わいが深い。「いやー、今日の食事は素晴らしかったなあ」と、感嘆の溜息をつかせる。

それで済んだと思っていたら、最後のデザートでとどめの一撃をくらった。言葉にすれば「黒蜜のかき氷」と、何てことないのだが、これは比類なきかき氷なのである。

風味絶佳とは、このことか。

聞けば大将はかき氷が大好きなのだそうだ。繊細に削ったかき氷にミネラル豊富な天然塩と黒糖というシンプルな構成だが、コースを締め括るにふさわしい一品だ。

予約困難になるのは目に見えている。1日にたった16席のプラチナシート、行くなら今のうちしかない。

 

ひき田

住所:東京都渋谷区恵比寿南1-14-15 ラ・レンヌ恵比寿4F
営業時間:17:30~/20:30~一斉スタートの2回制
定休日:水曜日、隔週火曜日
コース価格:税込み2万円(サ別)

インスタグラム:@hikihiki07

文:石橋俊澄

Toshizumi Ishibashi

「CREA」「CREA Traveller」元編集長

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