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STUTSと読み解く! 日本のヒップホップの最前線

  • 2026.6.24
Hearst Owned

今、日本のヒップホップシーンが盛り上がっている。次々と誕生する新世代のラッパーやシンガーたち、邦ヒップホップ界をけん引し続ける強者クリエイターたち。リスナーの層も数も、これまでにないほどの勢いで広がり増え続けているという。その理由はいったい何なのだろうか?

数多くのコラボレーションやTV・CMへの楽曲提供も行う音楽プロデューサー、トラックメーカーとして、進化し続ける日本のヒップホップ界の第一線で活躍するSTUTS。「日本のヒップホップの最前線」を知るSTUTSとともに、盛り上がり続けるシーンのルーツとリアルを読み解く。

リスナーの心に刺さる「リアル」な言葉や前向きな精神

STUTS Hearst Owned

ELLE 今、日本のヒップホップがかなり盛り上がっていますよね。シーンの最前線で活動されているSTUTSさんはこの状況をどんな風に見ていらっしゃいますか?

STUTS 実際、これまでで一番かなと思うほどリスナーの数が多くなっていると感じます。例えば、ロックのように楽器を買ったりしなくても、パソコンやスマホで容易に楽曲が作れたり、「TuneCore」のようなプラットフォームから作った曲を配信でリリースできたり、インディーズでもすごくやりやすくなってる。僕もビート提供で何度か参加させてもらったAbemaのオーディション番組『ラップスタア』の影響も大きくて、入り口や出口が広がったことも今の盛り上がりに貢献していると思います。

ELLE 「ラップ」をきっかけにヒップホップにハマるパターンが多そうですね。

STUTS ラップは言葉数も多いし、いわゆるメロディーを歌う「歌」とは少し違って、通常の日本語の歌のメロディーには乗らないような歌詞も書ける。僕自身、そのラッパー自身が体験したことや、その人自身が思ってることがリアルに出てるなと感じる曲がいいラップだと思っています。最近ご一緒させてもらったElle TeresaさんやSonsiくんもそうですが、音楽性の多様さに加えて、ラッパー本人が実際に経験した「リアル」な言葉や、上昇志向だったり前向きな精神、地元を大事にする気持ちが表現された歌詞が、今のリスナーたちに刺さっているんだと思います。

Elle Teresa(エル テレサ)/静岡県出身のラッパー。自己肯定感の高い歌詞で女性からの共感を獲得。 Hearst Owned
Sonsi(ソンシ)/鹿児島出身のラッパー。『ラップスタア』への出演を機にブレイク。 Hearst Owned

ELLE 例えば、今のシーンにつながる流れを作ったラッパーというと?

STUTS 素晴らしいラッパーさんやグループが大勢いるので具体的な名前をあげるのがとても難しいのですが……今の流れにつながるということで言うと、2000年代後半のS.L.A.C.K(5lack)さんやSEEDAさんもそうですし、2010年代に千葉雄喜さんやFla$hBackSが登場したことや、Abemaの『高校生RAP選手権』からの『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)といった、MCバトルブームの影響も大きいと思います。そこからのBAD HOPやKANDYTOWN、YEN TOWN、CreativeDrugStoreといったクルーの台頭、という流れも大きかったと思います。

千葉雄喜/邦ヒップホップに多大な影響を与えるラッパー。新曲「まーいいや」が好調。 Hearst Owned
Fla$hBackS(フラッシュバックス)/2010年代の日本のヒップホップシーンに大きな衝撃を与えた、Febb As Young Mason、JJJ、KID FRESINOによるヒップホップ・ユニット。 Hiroki Obara

ELLE そういった流れも含めて、今注目しておきたいラッパーはいますか?

STUTS ここ数年でいえば、「日本語のラップでここまでできるんだ」と感じるのがラッパーのLEXさんと、彼の実妹でもあるLANAさんでしょうか。音楽性の高さはもちろん、スター性やカリスマ性もあると思いますし、すごい兄妹だと思います。『ラップスタア』のオーディションでは勝ち進まなかったんですけど、Kaneee(ケイニー)くんはその時すごく気になって、一緒に曲を作りはじめました。99 Stepsでご一緒させてもらったKohjiya君も素晴らしいです。Sonsiくんも『ラップスタア』を機に注目されるようになったラッパーさんなんですけど、大変な家庭環境が背景にありながら、それを自虐的に歌いつつ、でもどこかポジティブというか。今回の『ラップスタア』で個人的に刺さったラッパーさんのひとりでした。

LEX(レックス)/どん底の過去からはい上がった生きざまでも高い支持を集めるラッパー。 Hearst Owned
LANA(ラナ)/ハスキーな歌声と圧倒的な歌唱力で人気のラッパー。LEXの実妹。 Hearst Owned

ELLE 他にも、今気になる動きはありますか?

STUTS ヒップホップって「地元を大事にする」みたいな考え方があって、昔からそれぞれの地域で素晴らしいラッパーさんがたくさんいるんですけど、最近は和歌山の方々が一丸となってムーブメントみたいなのを作っていて。3大都市圏と沖縄以外でここまで目立った感じの動きはなかったように思うのですごいなと思ってみてます。

ELLE ラッパーもそうですが、日本のヒップホップサウンドもかなり多様化している印象がありますよね。

STUTS そこはアメリカのヒップホップの影響もあると思います。例えば、2010年代前半ぐらいからヒップホップ全体の流れが結構変わったというか。2000年代前半とか中盤はミドルテンポな楽曲が多かった感じですけど、今はもっとハイハットやキックがベースというか。HIP HOPのビート感も変化して、日本語をラップに乗せやすくなったのかもしれません。あと、ラップ自体もメロディーが入るようなフロウとかが主流になったことも、日本語が乗せやすくなった要因な気がします。そういう流れもあって、この10年ぐらいでヒップホップがいろんな人に受け入れられやすくなってきているのかもしれないですね。

「夏を盛り上げるプレイリスト」選曲の秘密、とは?

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ELLE 今回、「夏を盛り上げる」をテーマにしたプレイリストを作っていただきましたが、どんな基準でセレクトしてくださった感じですか?

STUTS 今回選んだのは……今までヒップホップをそんなに通ってこなかった世代の方々にぜひ聞いてみてほしい感じの曲たちですね。僕もその世代なのですが、今30代の方々は青春時代にヒップホップに触れる機会があまりなかった人が多いのかなと思ってまして、そういう方々がイメージするヒップホップと多様化した今のヒップホップは結構違うと思うので、ここ5~10年くらいの曲を中心に入れました。そこにちょっと夏っぽさが入っていたり、聞いていて気持ちがあがるような曲を選びました。
例えば、「Perfect Blue feat. Tiji Jojo、Daichi Yamamoto, RYO-Z」は、自分とZOT on the WAVEさんとで作らせてもらったe.p.の中の1曲なんですけど、BAD HOPのTiji JojoさんとDaichi Yamamotoくん、あとRIP SLYMEのRYO-Zさんっていう組み合わせをフィーチャーした、まさに夏の一曲になってます。

Daichi Yamamoto(ダイチ・ヤマモト)/洗練された歌声とフロウで人気の京都出身のラッパー、デザイナー。 Hearst Owned

ELLE 1日の始まりに聞くのも良さそうです。

STUTS やっぱりヒップホップのアーティストはみなさん、前向きだなって思いますね。辛い経験もあるけど自分のことを愛して、かつ、前を向いて進んでいこう、みたいなスタンスが一貫して感じられるというか。とくにラッパーさんは「何かしら伝えたいことがある人」が多いかもしれないですね。それが具体的でも抽象的な事柄でも。やっぱり音楽ですから、この音にこういうメッセージが乗ってるんだとか、歌詞だけじゃなくてその曲・その歌詞の内容を誰がどう歌ってるかとか、その曲をどうパフォーマンスするかも含めたものが音楽の魅力というか。言葉で表現するのが難しいんですけど……そういうものを含めて心に響いてくるというか。

ELLE とくにラップは「この人がこの言葉を歌うからこそ響く」という要素が強いですよね。

STUTS もちろんどの音楽もそういう部分があると思うんですけど、やっぱりラップの場合、その人が歌わないと意味がない、みたいな曲がすごくある。ポップスとかなら他のアーティストがカバーすることもいっぱいあるじゃないですか。でもヒップホップでカバー……となるとなかなか難しい。ラッパーさんが歌っているのは「その人自身の人生」も乗っかった言葉だと思うので。

Awich(エーウィッチ)/シンガー、ラッパー。ドラマチックな生きざまへの支持も厚い。 Hearst Owned

ELLE そして、今回のプレイリストからは今の日本のヒップホップの多様性も感じました。

STUTS R&B寄りになりますが、Yo-Seaさんの歌声やメロディーは秀逸ですし、さまざまなジャンルを横断したゆるふわギャングさんの活躍も音楽的に日本語でラップすることの多様性を広げたなと思います。そしてヒップホップはもちろんヒップホップ以外の世界にも影響や広がりを与えたPUNPEEさんやAwichさん、BAD HOPさんの功績は絶大だと思います。他にもヒップホップを広げた素晴らしいアーティストは名前を上げたらキリがないほどいらっしゃいますが、テレビ等のメディアにまで広げられた方々はこの10年で言うとその三組が大きいのかなと思いました。

PUNPEE(パンピー)/プロデューサー、ヒップホップMC。ロック系との共演も多い。 Hearst Owned

ELLE 今回のプレイリストからもわかりますが、ヒップホップは共作やフィーチャリングなど、アーティスト同士がつながる機会が多いですよね。

STUTS なんとなくヒップホップは他のジャンルよりも団結感があるというか。とくに「団結したい」とは思ってないと思うんですけど、やっぱりフィーチャリングし合う、みたいな文化だからでしょうね。

「あさイチ」でおなじみ! STUTS×大貫妙子の新感覚の一曲

ELLE STUTSさんご自身も、“STUTSと大貫妙子”名義での楽曲「おはよう」(NHK「あさイチ」テーマソング)で音楽家の大貫妙子さんとの共演されていて。ヒップホップ版バート・バカラック、と言えそうなアプローチも新鮮でした。

STUTS この曲に関してはヒップホップだと思って作ってはないのですが、自分の好きなエッセンスはもちろん入ってるので結果そう聴こえたのかもしれません。この曲は大貫妙子さんからいただいたメロディーを元に、まさにバカラックとかの時代でもある’60年代的な雰囲気を参考にしながら作ったんですけど、今まで自分が作ったことのない感じの楽曲だったという意味でも、チャレンジングではありました。大貫妙子さんとも「今の音楽シーンにあまりないような曲が出来たよねって」って話してたんですけど、こういう曲が今の時代に受け入れられてもらえたら嬉しいなと思ってます。

ELLE ヒップホップの可能性、これからもますます広がりそうですね。

STUTS 表現方法は違っても、みんな「ヒップホップが好き」という気持ちから始まってる人たちだと思うので、昔からやってる人たちは「今の盛り上がりが変な方向に行かないようにやっていこう」という思いを持ってる人は多いんじゃないかなと思います。

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STUTS/1989年、愛知県生まれ。東京大学大学院情報学環・学際情報学府修士課程修了。2016年、1stアルバム『Pushin'』を発表。'18年、星野源の「The Shower」(シングル「ドラえもん」のCW曲)にMPCプレイヤーとして参加。'21年、連続ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』主題歌の作編曲・プロデュースを担当。同年、STUTS & 松たか子 with 3exes「Presence I (feat. KID FRESINO) 」で第108回「ザ・テレビジョンドラマアカデミー賞ドラマソング賞」受賞。’26年、 “STUTSと大貫妙子” 名義で新曲「おはよう」(NHKあさイチ)、STUTS & butaji「Our Hearts feat. アイナ・ジ・エンド」(Netflixシリーズ『ソウルメイト』主題歌)を発表。

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