1. トップ
  2. エピソード
  3. 好きな人との乾杯で、私のグラスだけ置かれなかった。理由を聞くと返ってきた一言に傷ついた話

好きな人との乾杯で、私のグラスだけ置かれなかった。理由を聞くと返ってきた一言に傷ついた話

  • 2026.6.22
ハウコレ

グラスとグラスがぶつかる軽い音が、テーブルのあちこちで響きました。「乾杯」の声に合わせて、みんなが飲み物を持ち上げます。けれど私の手元には、まだ何もありませんでした。好きな人が配ってくれたはずのグラスが、なぜか私の前にだけ置かれていなかったのです。

みんなで囲んだ、賑やかなテーブル

久しぶりに友人たちと集まった席でのことです。同じグループの中に、私がひそかに想いを寄せている人がいました。

みんなで飲み物を頼むと、彼が率先してお盆を受け取り、一つずつグラスを配り始めます。気が利く人だなと、その横顔を見ているだけで嬉しくなりました。グラスは、隣の友人へ、向かいの友人へと、次々に手渡されていきます。

私は、自分の番が来るのを少しそわそわしながら待っていました。彼の手から直接グラスを受け取れる、それだけのことが、私にとっては特別な瞬間に思えたのです。

私の前だけ、空いたまま

ところが、グラスは私の前を通り越していきました。彼は私の分を手元に残したまま、なぜか配るのをやめてしまったのです。

やがて誰かの「乾杯」という掛け声とともに、みんなが一斉にグラスを持ち上げました。持ち上げるグラスのない私は、中途半端に上げた手をそっと下ろしました。周りに気づかれないよう笑顔をつくりましたが、内心はいろいろな考えが渦を巻いていました。

私だけ後回しにされたのは、彼にとって私が、その程度の存在だということなのかもしれない。考えれば考えるほど、楽しいはずの席が遠く感じられました。

思いきって聞いた、たった一つの質問

少し落ち着いてから、私は彼のそばに行き、思いきって尋ねてみました。

「私のグラスだけ、なんで後だったの?」

軽い調子を装ったつもりでしたが、声は思ったより硬くなっていたかもしれません。彼は少し目を泳がせたあと、「深い意味はないよ」とだけ答えました。それ以上は何も説明してくれません。

深い意味がないのなら、どうして私のときだけ手が止まったのだろう。問い返したい気持ちをのみ込んで、私は自分の席に戻りました。届かなかった答えのぶんだけ、彼との距離が遠くなった気がしました。

そして...

その後の時間も、私は彼の横顔をどこか遠くに感じていました。たった一杯のグラスのこと、と自分に言い聞かせても、もやもやした気持ちは晴れてくれません。

それでも、帰り際にふと思い出したのです。私の分を手元に残していたとき、彼が一度、お店の人に小さく何かを伝えていたことを。あのとき彼は、本当に何も考えていなかったのでしょうか。

「深い意味はないよ」という言葉の裏に、私の知らない理由があったのだとしたら。確かめる勇気はまだありませんが、あの横顔を、もう少しだけ信じてみたい。そんな気持ちが、ほんの少し芽生えていました。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる