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美容・医療ジャーナリストの海野由利子さんが医師に聞く、人生100年時代の再生医療のリテラシー

  • 2026.6.21
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美容医療や再生医療は、美や若々しさを求めるリシェス世代にとって関心の高い分野だからこそ、適切な知識をもつことが必要です。美容・医療ジャーナリストの海野由利子さんが再生医療分野のドクターに取材。ロンジェビティ視点で読者のリテラシーを高めるアドバイスや、医師自らの哲学などを教えていただきます。

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<Profile>
海野由利子(うみのゆりこ)/美容・医療ジャーナリスト

1981年より女性誌編集部でファッションと美容を担当。’89年、美容ライターとして独立。90年代後半から美容医療の体験と取材を開始。21世紀に入り幹細胞培養研究が盛んになると再生医療にも注目し取材を行う。日本抗加齢医学会会員。

美容医療&再生医療を受診する前に

KENICHI YOSHIDA

大人が利用する美容医療の傾向は、かつての“若見え至上”から、エイジングサインを穏やかに整え、健康的な印象を保つことへ。そのニーズに応えるのが美容医療のボディ治療や、研究が進む再生医療。これらは自由診療として提供されるほか、さらなる発展に向けた臨床研究も続けられています。自らの意思で選択できるからこそ、安全性の確保と信頼できる医師選びが重要。長年、保険診療や美容医療の最前線に携わり、研さんを積む4人の医師に最新知見を取材しました。今回は、穏やかな美を維持するために、再生医療について考えます。

【田中里佳医師】加齢で足は痛み、歩行困難になるという、日本人の思い込みに挑み、支えたい

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<Profile>
田中里佳(たなかりか)/順天堂大学大学院医学研究科再生医学主任教授、RiCarna Clinic医師

医学博士。東海大学医学部卒業、ニューヨーク大学形成外科学留学などを経て現職。日本専門医機構認定形成外科専門医・指導医。日本再生医療学会認定再生医療専門医。順天堂大学医学部附属順天堂医院 足の疾患センター センター長。フットケア・足病治療認定師。

順天堂大学医学部 形成外科学講座 教授、順天堂医院 足の疾患センター センター長も務める田中医師。「ロンジェビティの捉え方は立場により異なるでしょう。私は、足病医療を行う形成外科医として、再生医療の研究者として、細胞が生き生きと増殖分化し、それぞれの働きを担うことが全身の健康や美につながると考えています。また健康で自立した人生を歩むには歩行機能の維持が重要です」。一般的に、年齢と共に足の痛みや歩きにくさを感じるのはよくある加齢症状とされますが「皆、我慢のし過ぎです。日本では人間ドックで足を診ませんし、自分の足が健康かどうかを知らないのです」とのこと。「股関節と膝は関節が一つなので人工関節と入れ替えられますが、足の関節は33個以上もあり取り換えができません。足に合わない靴や良くない歩き方の影響で足にはタコができ、足の裏が痛み、血流の低下や変形によって歩行困難へと進行します」。このような“足病”の治療のために田中医師が着目したのは血液に含まれる幹細胞。「血管の健やかさをサポートする働きのある成分を取り出して増やし、患部に注入すれば血流が良くなり、栄養が届くことで組織の健やかなコンディション維持が期待できる」と考えて大学で研究を開始。現在も再生医療技術の確立のために研究開発を行い、薬事承認と保険医療への収載を目指しています。患者の負担を減らせる少量の採血と、短期間の培養で行える自己血液由来の細胞治療が可能になれば、足の健康意識も変わりそうです。

田中医師が設立した「順天堂医院 足の疾患センター」の公式ホームページでは、動画で正しい歩き方、靴の履き方、爪の切り方などを公開しています。写真は田中医師の研究で認められた副次効果をもとに、順天堂大学と順天堂発ベンチャーのリィエイルとが共同開発した治療も行う「RiCarna Clinic(リィカルナ クリニック)」。 Hearst Owned

【辻 晋作医師】自身の脚で歩く機能維持のために考える、培養幹細胞による再生医療という選択肢

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<Profile>
辻 晋作(つじしんさく)/アヴェニューセルクリニック 再生医療統括医師

医学博士。東京大学医学部卒業。同大学形成外科、東京警察病院などを経て、美容医療を行うアヴェニュー表参道クリニックを開院。院長を13年務めた後、現職。日本専門医機構認定 形成外科専門医、日本再生医療学会再生医療認定医、日本再生医療学会認定細胞培養加工施設管理士。

美容医療から再生医療にシフトした辻医師。「2014年に再生医療等安全性確保法ができるとき、幹細胞を培養できることを知りすぐ学びに行きました。学生時代から皮膚再生の研究をしていたため、再生医療は近い分野です」。最近注目されている、脂肪由来の間葉系幹細胞(MSC)を活用した、膝関節など運動器の治療について伺います。「まず、MSCとは、骨・軟骨・脂肪・筋肉・神経などの細胞に分化する能力と自己複製能をもつ体性幹細胞。安全面では中リスクに分類されています。一般的に膝に違和感や痛みを覚えるときは、湿布薬や飲み薬を使い、改善しなければ関節にヒアルロン酸を注入して潤滑剤とする治療があります。進行すると人工関節の手術、それができないと寝たきりとなることも。幹細胞を注入する治療は、できるだけ長くご自身の関節で過ごすための選択肢の一つ。ヒアルロン酸治療と人工関節手術との間に位置づけられる治療です」。ただし、「注入のみで完了ではありません」とも。「膝は運動器ですから動かすことが必要です。リハビリテーションと膝への負荷を減らすならダイエットも。健康でないと美は成り立ちません。美容医療の医師時代には日焼けしたらシミの治療をしても意味はないといっていましたが、今は逆に、日焼けでシミができても取れますので、運動をしてください!と伝えています。もちろん幹細胞は美容領域への応用も期待されています」

院内には培養室があり、培養士資格をもつ専任スタッフが品質管理を徹底し、細胞培養を行っています(写真上)。その後は凍結保存を行う施設が多い中、鮮度にこだわった管理体制を敷いています。患者本人の細胞を採って培養。細胞培養加工施設管理士の資格を持つ辻医師は、今後の再生医療のニーズが増していくことを予想し、確かな技術を持つ細胞培養士の養成にも力を注いでいます。 Hearst Owned

【野村紘史医師】治療と休養を兼ねられ、長期滞在も可能なクリニックをつくりたい

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<Profile>
野村紘史(のむらひろし)/N2クリニック ホテル椿山荘東京院院長

東京大学医学部卒業。同大学形成外科入局。脂肪組織由来幹細胞を用いた乳房再建プロジェクトを立ち上げたのち、米国留学の基礎研究などを経て2021年にN2クリニック ホテル椿山荘東京院を開院。日本専門医機構認定 形成外科専門医。日本臨床培養上清研究会理事長。

患者さまそれぞれに理想とするロンジェビティがありますが、美と健康の両立は必要です。体の内側の健やかさと外側の美しさをかなえ、維持できる治療を提案しています」と野村医師。「再生医療の個別化」をテーマに開院したクリニックは、広い庭園のあるホテル内にあり、受診はプライバシーを重視して1組ずつの貸し切りで行います。個々の体の状況を把握する、詳細な検査と治療を組み合わせた1週間の宿泊や、治療後の宿泊など、快適なホテルライフとの自由な組み合わせはリラックスできると好評だそう。野村医師に、特殊なレーザー式脂肪吸引機LipoLife(ライポライフ)を使った再生医療について伺います。「採取した脂肪細胞を微細化した“ナノファット”を、顔など別の部位に注入するのがライポライフです。脂肪採取部位の内出血や腫れ、痛みに配慮されているのが特徴で、脂肪細胞を傷つける度合いが低いため、脂肪由来幹細胞(ASC)、間質血管細胞群(SVF)などが良質な状態で採取されやすいのが特徴といえます」。脂肪由来幹細胞や間質血管細胞群は、健やかな肌状態へのアプローチや、エイジングケアの可能性が注目されています。自身の細胞で注入の安全性が高く、培養を必要としないため、採取の翌日にも治療が可能です。野村医師は、「美容+再生医療は、美と健康を保つための先進的な選択肢です。機能低下にも早く気付けます

クリニックはカウンセリングと治療のための広々した空間が取られています。プライバシーが確保され、医師がたっぷり1時間相談を受けるスタイル。ライポライフを用いた治療に精通し、国内外で技術指導も行っているベテランの野村医師。保険診療の経験があり、今後の治療相談はもちろん、体の変化や不調に対する疑問も、「何でもご相談ください。できる限り対応します」とのことです。 Hearst Owned

【山田秀和医師】まだ固まってないロンジェビティの概念、そこに込めるべきは「寿」と「幸福」

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<Profile>
山田秀和(やまだひでかず)/近畿大学アンチエイジングセンター客員教授、東京リライフクリニック 最高顧問

医学博士。近畿大学医学部卒業。同大学奈良病院皮膚科教授などを経て、同大学アンチエイジングセンターを創設。日本抗加齢医学会認定 抗加齢医学専門医、日本専門医機構認定 皮膚科専門医、日本東洋医学会認定 漢方指導医、日本アレルギー学会認定 アレルギー指導医。

クリニックで再生医療・抗加齢分野の顧問を務める山田医師は、日本抗加齢医学会前理事長。早くから“健康寿命の延伸”の価値を語り、ロンジェビティについてもいち早く発信。海外の研究者たちと活発に意見交換を続けています。「健康長寿という言葉には寿、つまり祝うという意味の漢字が使われています。長命は祝、という感覚は漢字文化圏やアジア圏の共通認識。国内ではロンジェビティの共通概念がまだ固まっていませんが、そこに“幸福”の意味合いを感じませんか? 個人的には“その人にとっての最高の状態の維持”のイメージがあります。かつて60歳は見た目も身体機能も老人で、100歳まで長寿なら老人期間が40年。一方、現在の60歳は健康を維持できれば“老人”以前の状態で100歳を迎えられそうです。この話の背景には、人の健康度合いを暦年齢ではなく生物学的年齢で示すようになったことが挙げられます。医療機関の測定では、遺伝子レベルで臓器ごとに生物学的年齢が測れるように。いち早く高齢化が進む日本は、人類史上かつてない“知恵と経験が豊富で健康体の高齢者”が増える可能性の中にあります」。もちろん医療にはリスクがあり慎重さも必要ですが、まず必要なのはけがや疾患の治療。不調を運動や食事で整えた先にロンジェビティも目指せるでしょう。「年齢を重ねても、快適な心身で過ごす日常を目指せることは大きな価値かもしれません」

東京リライフクリニックの内観(写真上)。血液検査に加え、全身の生物学的年齢の測定、遺伝子検査などを行い、個々のライフプランと医師のアドバイスを組み合わせ、多角的なアプローチが医師により検討されます。また医師のカウンセリング、治療、点滴などは全て個室で行われています。 Hearst Owned

初出:リシェスNo.55 2026年3月27日発売
TEXT:YURIKO UMINO
EDITING:MIHO KASHIWABARA

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