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K-POPは認められたのか、“排除”されたのか グラミー賞「アジアポップ部門」新設に韓国が揺れているワケ

  • 2026.6.17

K-POPアーティストにとって、朗報のようにも見えるニュースだった。

米音楽界最高権威とされるグラミー賞が、新たに「ベスト・アジアン・ポップ・ミュージック・パフォーマンス」部門を設けることになったからだ。

報道によると、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーは、来年2月7日に開催される第69回授賞式から、「ベスト・アジアン・ポップ・ミュージック・パフォーマンス」を含む5部門を新設・再編すると発表した。

新部門は、K-POPをはじめ、J-POP、C-POP(中国)など、アジア圏のポップ音楽を対象とするものだ。グラミー側は、アジアポップが世界の音楽産業に与える影響力の拡大を反映したものだと説明している。

K-POPを“別枠”へ?

これまでBTSは『Dynamite』『Butter』などでグラミー賞に挑んできたが、受賞には届かなかった。BLACKPINKのロゼも『APT.』で世界的なヒットを記録したが、グラミーの壁は高かった。

BTS
(写真提供=OSEN)BTS

そのため、新部門の創設によって、BTSをはじめとするK-POPアーティストがグラミー受賞に近づいたという見方もある。賞レースを専門的に扱う米メディア『Gold Derby』も、今回の部門拡大について、BTSにとって「良いニュースになった」と伝えている。

ところが、韓国の反応は単純な歓迎ムードではない。

むしろオンライン上では、「主流部門から切り離すための枠ではないか」「アジアで一括りにするのか」といった冷ややかな声も少なくない。なぜ、K-POPにとってチャンスにも見える新部門が、韓国で反発を招いているのか。

まず大きいのは、K-POP、J-POP、C-POPをひとつの「アジアポップ」としてまとめることへの違和感だ。

韓国の『聯合ニュース』は、大衆音楽評論家チョン・ミンジェ氏の見方として、「K-POPをはじめとするアジア音楽の影響力が北米で拡大し、J-POPやC-POPも取り込もうとして“アジア”でまとめる妙手を置いたようだ」とし、「共通点の少ないアジア各国の音楽をひとつにまとめた点は批判の余地がある」と伝えている。

実際、K-POP、J-POP、C-POPは、言語も市場も制作システムも違う。K-POPは練習生システムやグローバルファンダムを基盤に発展し、J-POPは国内市場と独自のアイドル文化、C-POPは中国語圏の巨大市場と結びついてきた。

それらをひとつの部門に入れることは、アジアの音楽を評価するように見えて、実際には「アジア」という大きな箱に雑に放り込んだようにも映る。

オンライン上で「アジアは広く、多様な国で構成されているのに、共通点を見つけにくい音楽を一緒にするのか」といった不満が出ているのも、そのためだ。

もうひとつの反発は、より根深い。

『APT.』
(画像提供=THEBLACKLABEL)ロゼとブルーノ・マーズの『APT.』

韓国の音楽業界や一部ファンが警戒しているのは、グラミー賞がK-POPを主流部門で評価するのではなく、“アジア枠”に押し込めるのではないかという点だ。

これまでBTSやBLACKPINKは、アメリカ市場でも大きな成果を残してきた。ビルボードチャートで記録を作り、世界的なストリーミング数を獲得し、英語圏のポップシーンにも食い込んだ。それでも、グラミー賞の主要部門やポップ部門ではなかなか評価されなかった。

そこに新たに「アジアポップ」という部門が作られた。それが、一部のK-POPファンには「あなたたちの音楽は人気がある。だから賞は作る。ただし、メインの舞台ではなく、アジア枠で評価する」と見えたのだ。

つまり、チャンスの拡大であると同時に、主流部門からの線引きにも見えるのだ。

韓国メディア『ヘラルド経済』は、「業界では、突然登場した“アジアポップ部門”が、かえって主流リーグからアジアアーティスト、とりわけK-POPを排除するための防御壁ではないかという疑念も提起されている」と伝えた。

韓国で出ている反発の核心は、まさにここにある。

グラミー賞がK-POPを認めたのか、それとも主流部門とは別に管理するための枠を作ったのか。その見え方によって、今回の新部門の意味は大きく変わる。

英語曲は対象外? 韓国語歌詞が増える可能性も

さらに、今回の新部門には独特の条件がある。

「ひとつ以上のアジア言語を意味ある形で使用すること」だ。

一見すると、アジア音楽を評価する部門として自然な条件にも見える。しかし、K-POPにとっては少し複雑だ。

BTS
(写真提供=OSEN)BTS

近年の大型K-POPアーティストは、ビルボードや米ラジオでの露出を意識し、全編英語の楽曲を発表してきた。BTSの『Dynamite』や『Butter』はその代表例だ。BLACKPINKのロゼによる『APT.』も、英語中心の楽曲として世界的ヒットを記録した。

ところが、新たなアジアポップ部門では、アジア言語の使用が条件になる。そうなると、世界市場を狙って英語曲を作る戦略と、グラミー賞の新部門を狙う戦略が必ずしも一致しない。

韓国メディアでは、今後はグラミー賞を意識して、韓国語歌詞の比重を増やすチームが出てくるのではないかという観測も出ている。

これは皮肉な展開だ。

これまでは、アメリカ市場で戦うために英語曲が増えた。だが、グラミー賞の“アジアポップ”部門を狙うなら、今度は韓国語を入れる必要が出てくるかもしれない。K-POPが世界に出るために英語へ寄せてきた流れが、グラミー賞の新ルールによって逆方向に揺り戻される可能性があるのだ。

オンライン上の怒りには、もうひとつ感情的な背景もある。それは、グラミー賞がK-POPの人気を利用してきたという不信感だ。

BTSは過去にグラミー賞の舞台に登場し、世界中のファンを引きつけた。K-POPアーティストの出演やノミネートは、授賞式の注目度を高める大きな要素でもあった。

それにもかかわらず、主要部門では受賞に届かなかった。ファンの側からすれば、「視聴率や話題性には使うのに、賞は与えない」という不満が残っている。

今回の新部門も、その延長線上で見られている。つまり、同じ土俵で評価するのではなく、別の部門を用意して“ここで満足してほしい”という意図ではないかということだ。

ネット上で「グラミー賞の意図が見える」「主流部門は米国メインストリーム中心のままではないか」といった反応が出ているのは、こうした不信感があるからだ。

チャンスであり、境界線でもある

もちろん、今回の新部門がK-POPにとって前向きな意味を持つことも事実だ。

これまでグラミー賞に届かなかったK-POPアーティストにとって、新たな受賞ルートが開かれたともいえる。BTS、BLACKPINK、そして次世代のK-POPグループにとって、グラミー賞のトロフィーは以前より現実的な目標になるかもしれない。

実際、韓国の音楽業界でも、アジア音楽を公式に扱う部門ができたこと自体を肯定的に見る声はある。グラミー賞がようやくK-POPを含むアジア音楽の存在感を認めざるを得なくなった、という受け止め方もできる。

ただし、韓国が懸念しているのは、受賞の可能性そのものではない。

問題は、K-POPがグラミー賞の中心に進んだのか、それとも“アジアポップ”という別枠に固定されるのかという点だ。

もし今後、K-POPアーティストがアジアポップ部門では評価されても、主要部門やポップ部門では相変わらず壁に阻まれるなら、今回の新設部門は「多様性の拡大」ではなく「隔離」と受け止められ続けるだろう。

それは、BTSのグラミー受賞を待ち望んできたファンにとっても、手放しでは喜べないニュースといえるかもしれない。

はたして新設される「ベスト・アジアン・ポップ・ミュージック・パフォーマンス」部門は、K-POPの新たな突破口になるのか。それとも、主流部門の外側に引かれた新しい境界線になるのか。来年のグラミー賞では、その答えにも注目が集まりそうだ。

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