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彼のボイスメモに録音されていたのは、駅の発車音だけ。返信のない間に膨らんだ私の想像

  • 2026.6.17
ハウコレ

メッセージアプリの通知が鳴り、彼の名前の横にボイスメモのアイコンが並んでいました。再生してみると、聞こえてきたのは電車の発車を知らせるメロディと、ホームのアナウンスとざわめきだけ。彼の声は、最後まで一度も入っていませんでした。

声のないボイスメモ

最近の彼は、メッセージの返事が少しずつ短くなっていました。会っても考えごとをしているような表情を見せることが増え、私はその理由を聞けないままでいたのです。そんなとき届いたのが、あのボイスメモでした。

再生ボタンを押すと、発車を知らせるメロディが流れ、ホームのアナウンスとざわめきが続きました。三十秒ほど経っても、彼の声は聞こえてきません。間違えて送ったのだろうかと思いましたが、それにしては長すぎる気がしました。何度か再生し直しても、入っているのは同じ音だけ。彼が今どこにいて、何をしているのか、私には何ひとつわかりませんでした。

既読のまま止まった会話

すぐに「どうしたの?」とメッセージを送りました。既読はすぐにつきました。それなのに、返信は来ません。

何かあったのかもしれない。あるいは、私に言えないことを抱えているのかもしれない。一度悪い想像が始まると、止められませんでした。誰かと一緒にいて送る相手を間違えたのか、それとも別れを切り出すための前置きなのか。考えるほどに、あの発車音が頭の中で繰り返し鳴り続けます。返事を待つ間、私は家の中を意味もなく歩き回っていました。

彼が抱えていたもの

しばらくして、彼から電話がかかってきました。開口一番、彼は「ごめん」と言いました。声には、いつもの落ち着きがありませんでした。

彼が話してくれたのは、私が想像していたどれとも違う内容でした。遠い土地の支社へ移ってほしいという話が進んでいて、それを何週間も一人で抱えていたというのです。私にどう切り出せばいいのかわからず、ホームで録音を始めたものの、最後まで言い出せなかったのだと、彼は打ち明けました。「どうして言ってくれなかったの」。気づけば、私はそう口にしていました。ただ寂しかったのです。

そして...

浮気でも、別れ話でもなかった。そのことに、私はほっとしました。それでも、二人のこれからに関わる話を一人で決めようとしていたことが、少しだけ寂しく感じられたのも本当です。「心配させたくなかった」という彼の気持ちは、たぶん嘘ではないのだと思います。

でも、それなら次は、迷っている途中でもいいから声にしてほしい。私もきっと、待っているだけにはしないから。声にならなかったあのメロディは、彼が立ち止まって考えていた場所の音だったのだと、今はそう思えます。あの発車音は、もう怖くありません。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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