1. トップ
  2. エピソード
  3. 同棲前の荷造りで私の本だけ別の箱に分けた彼。素っ気ない一言に、突き放された気がした話

同棲前の荷造りで私の本だけ別の箱に分けた彼。素っ気ない一言に、突き放された気がした話

  • 2026.6.14
ハウコレ

引っ越しを控えた休日、二人で荷造りをしていたときのことです。彼が私の本を一冊ずつ手に取り、ほかの荷物とは別の段ボールにまとめ始めました。同棲を楽しみにしていたはずなのに、それを見ているうちに、私の中に小さな違和感が生まれていったのです。

別にされた一箱

新しい部屋で一緒に暮らすために、私の荷物を二人で詰めていました。食器も服も小物も、彼は手際よくまとめてくれます。

けれど私の本を見つけると、彼はそれだけをほかの箱から取り分け、新しい段ボールを一つ用意しました。学生時代から少しずつ集めてきた本でした。何度も読み返した小説も、表紙が日に焼けた古い文庫もあります。

私の本だけが、ほかの荷物と違う場所にまとめられていく。その光景が、なぜか引っかかりました。

「本は別にしておきたくて」

気になって、私は彼に聞きました。「これ、どうして別の箱にするの?」

すると彼は手を止めずに、「本は別にしておきたくて」とだけ答えました。理由を聞いたつもりでしたが、返ってきたのは短い言葉だけ。それ以上は何も続きませんでした。

私の本は、二人の暮らしには混ぜたくないということなのだろうか。彼にとっては邪魔な荷物に見えているのかもしれない。考え始めると、いろいろな想像が膨らんでいきました。

同棲という新しい一歩の前で、自分のいちばん好きなものだけに線を引かれた気がして、私はそれ以上聞くのをやめてしまいました。

新しい家で

引っ越しの日、荷物を運び込むと、彼はまっすぐにあの本の箱へ向かいました。そして窓際のいちばん日当たりのいい場所を指して、「ここ、空けておいたから」と言ったのです。

そこには、私の本がちょうど収まる大きさの棚が、きれいに整えて置いてありました。彼は箱を開け、私の本を一冊ずつ、ていねいに並べ始めます。日に焼けた古い文庫も、表紙の傷んだ小説も、まるで大事なものを扱うような手つきでした。

その背中を見ているうちに、荷造りのときに感じた引っかかりが、少しずつほどけていくのを感じました。

そして...

彼はどうして、あのとき素っ気なかったのだろう。今でもはっきりとは分かりません。けれど、私の本が、いちばん見てもらえる場所にすべて並んだとき、私は彼に「ありがとう」と伝えました。

あれは線を引かれたのではなく、たぶん別の意味があったのだと思えたからです。本当の理由は、聞けばすぐに分かったのかもしれません。それなのに勝手に傷ついて、口を閉ざしてしまったのは私のほうでした。

これから始まる暮らしでは、もう少し自分から尋ねてみよう。窓際に並んでいく背表紙を眺めながら、私はそっとそう決めたのです。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる