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彼女の荷物を全部箱に詰めたのに、合鍵だけはどうしても入れられなかった僕

  • 2026.6.14
ハウコレ

ガムテープを手に、僕は段ボールへ彼女の荷物を詰めていました。少し前に別れた相手が、部屋に残していったものを返すためです。きちんと収めたつもりでしたが、最後にどうしても箱へ入れられないものが、一つだけ手元に残ったのです。

一つずつ新聞紙でくるんだ荷物

別れたあと、彼女の私物を返すと決めてから、僕は休みの時間を使って荷造りをしました。部屋着、充電器、読みかけの本。雑に詰めて送りつけるような真似だけはしたくなくて、一つずつ新聞紙でくるみ、隙間ができないように箱へ並べていきました。

別れ話のときはうまく気持ちを伝えられず、ぎこちないまま終わってしまった。その後ろめたさもあって、せめて荷物くらいはきちんと返したかったのです。

手のひらに残った合鍵

ほとんど詰め終えたとき、机の上に残っていた合鍵が目に入りました。付き合い始めた頃、彼女が「これ、合鍵。いつでも来ていいよ」と渡してくれたものです。そのときのうれしさは、今もはっきり覚えています。

その鍵を、ほかの荷物と同じように箱へ入れる。たったそれだけのことが、どうしてもできませんでした。段ボールに鍵を収めた瞬間、二人で過ごした時間まで一緒に送り返してしまう気がしたのです。

ほどなくして彼女から、「荷物、届いたよ。ありがとう。でも、鍵だけ入ってなかったみたい」とメッセージが来ました。本当のことを打ち明ける勇気が出ず、僕は「ごめん、それはまた今度返す」とだけ送りました。

送った直後から、自分の素っ気なさが嫌になりました。

結局、別の封筒で送った

鍵を手元に残したところで、彼女を落ち着かない気持ちにさせるだけだと、頭ではわかっていました。自分が手放したくないという理由で相手を不安にさせるのは、いちばんずるいやり方です。

それでも数日、僕はその鍵を机に置いたままにしていました。何度も封筒に入れようとしては、また取り出して。最後に、メモを一枚そえて送ることにしたのです。

「あの鍵だけ、箱に入れられなかった」

言い訳めいたことを長く書く気にはなれず、書けたのはその一行だけでした。

そして...

封筒をポストに入れたあと、僕はようやく一区切りついた気がしました。彼女に渡された鍵を、最後まで物として扱えなかった。それくらい、彼女と過ごした時間が自分にとって大切だったのだと、返すときになって思い知ったのです。

本当は、素っ気ない返事を送る前に、きちんと言葉にすればよかった。手放せない弱さを、相手を不安にさせる形でしか表せなかった自分が、今も少し情けなく思えます。それでも、あの鍵を雑に送り返さなかったことだけは、間違っていなかったと信じています。

(20代男性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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