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観客動員は過去最多の132万人を突破! 進化を続けるジャパンラグビー リーグワン、神戸Sが5代目王者に輝いた「熱狂の2025-26シーズン」を振り返る

  • 2026.6.12

昨年12月に始まった「NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26」、半年間の戦いの末、6月7日のプレーオフトーナメント・ファイナルで5代目王者が誕生した。コベルコ神戸スティーラーズとクボタスピアーズ船橋・東京ベイによる頂上決戦は、最後の1分までどちらが勝つかわからない攻防の末、神戸スティーラーズが勝利。MUFGスタジアム(国立競技場)に詰めかけた5万人超の観客を熱狂させた激闘と、今季リーグワン全体が刻んだ進化の軌跡を振り返る。

コベルコ神戸スティーラーズ、激闘を制して7季ぶりの頂点

試合途中から降り出した雨とともに、40歳・山下裕史の頬は涙で濡れていた。その姿を見て、25歳の若き主将・李承信の目頭も赤くなっていた……リーグワンとしては初、トップリーグ時代から数えると7季ぶりの日本一に輝いたコベルコ神戸スティーラーズ。その涙も納得できてしまうほど、決勝戦は激闘となった。

画像1: ©ジャパンラグビーリーグワン

前半はまさに一進一退。スピアーズはこの試合で引退となる元オーストラリア代表バーナード・フォーリーがペナルティゴール(PG)を決めると、負けじと神戸スティーラーズも日本代表キッカーでもある李承信がPGで得点。その後もお互いがトライとキックで得点を重ね、13対13でハーフタイムへ。

迎えた後半は、まさに意地と意地、規律と規律がぶつかるディフェンス合戦に。両チームともトライにはわずかに届かない場面が続く。そんな中、神戸スティーラーズはファウルから得たPGで着実にリードを重ね、6点差で試合終盤。追いかけるスピアーズが怒涛の攻撃を見せるも、神戸スティーラーズの赤い壁がトライを許さない。逆に我慢できなかったのがスピアーズで、試合終了間際にファウルを許し、李承信が冷静にPGでダメ押しの3点を追加。22対13で、リーグワンの前身トップリーグ時代の2018-19シーズン以来の日本一奪還となった。

画像2: ©ジャパンラグビーリーグワン

その勝利の瞬間、前半で退いていた山下裕史は堪えきれず落涙。2008年の入団以来、社員選手として神戸一筋18年。レジェンド平尾誠二らが活躍した平成初期には7連覇を果たした名門も、近年は低迷続き。その労苦と悔しさを誰よりも知るからこその涙でもあった。

「やっぱりうれしいですね。感極まってしまったというか。優勝して1位になることは、自分たちがやってきたことが間違ってはいなかったという証明になる。国立競技場という舞台を知らない選手も多かったですから、大歓声の中でどうコミュニケーションを取ればいいかは、自分なりにアドバイスができたと思います。平尾さんが亡くなって10年。何かちょっと後押ししてくれたのかもしれない。いい報告ができます」

ラグビーができる喜びを噛み締めて躍動した選手たち

ベテラン山下とは対照的に、涙なしで優勝を味わったのは、今季のリーグワン新人王に輝いた22歳の上ノ坊駿介だ。

画像3: ©ジャパンラグビーリーグワン

「優勝したら涙が出てくると思っていたんですけど、最後まで油断できない試合展開で、泣く余裕もなかったです。強敵だったので、1つ1つのプレーで気持ちを切らさずに頑張ろうとグラウンドに立ち続けました。優勝できてホッとしています」

大学最終学年の選手が卒業前に出場できる「アーリーエントリー」で第7節(2月7日)の静岡戦でリーグワン初出場。その試合でいきなり3トライを決めるハットトリックでの衝撃デビュー以降、全試合でフルバックとしてスタメン出場し、チームの快進撃に貢献。決勝でも技アリのキックアシストでトライにつなげる活躍を見せた。

すべてが順風満帆のように見えるスーパールーキーも、ちょうど1年前のこの時期はどん底にいた。主将を務めていた天理大学ラグビー部が不祥事で活動停止となる苦境を経験したからだ。「好きなラグビーが毎日できる。そのことに本当に感謝ばかりです」としみじみ語る姿がそこにはあった。

一方、敗れたクボタスピアーズ船橋・東京ベイにも、ラグビーができる喜びをプレーで体現する男がいた。スクラムハーフとして先発した岡田一平だ。4月25日の第16節で約3年ぶりの公式戦出場を果たすと、以降、チームの新たなエナジーに。決勝戦でも的確で素早い球出しと闘志あふれるプレースタイルでチームを鼓舞し続けた。

画像4: ©ジャパンラグビーリーグワン

「濃密な1ヶ月でした。出られないシーズンが長かったですから。この決勝戦はもうデビュー戦のような新鮮な気持ちで戦えました。優勝には届かなかったけど、
自分が自信を持てるパフォーマンスはできました」

さらに岡田は「実は今年の退団リストに名前が入っていたんです」と衝撃の事実を明かす。今年3月末に、シーズン終了後の戦力外を言い渡されていたのだ。しかしその直後、同じスクラムハーフの谷口和洋が負傷したこともあり、戦力外はキャンセルに。さらにチームの大黒柱・藤原忍も手術することになり、一気にスタメンに定着。まさにラグビー人生崖っぷちからの、起死回生の大舞台だった。

「やっぱり練習試合では得られないものがあります。この1か月でたくさんのことを得たので、それは来シーズンにも生かしたい。谷口とも忍ともまた一緒にラグビーをすると思うので、
一緒に成長して、いいライバルとして戦っていきたいです」

勝ったチームにも、負けた選手にも、それぞれに背負うドラマがある。その熱い気持ちがぶつかりあったからこそ、5万人を超える観客が熱狂する決勝戦となったのだ。

群雄割拠のリーグワン。その勢いを日本代表へ

5季目の戦いを終えたリーグワン。ディビジョン1〜3すべてをあわせた総観客数は132万人超。昨季の119万人から13万人も増えた。リーグ創設の2022年は40万人台だったことを思うと、5シーズンで3倍に増えたことになる。

画像5: ©ジャパンラグビーリーグワン

改めて感じるのは、年々チーム格差がなくなり、混戦になってきたことだ。象徴的だったのは5月1日のレギュラーシーズン第17節、試合前時点で首位だった埼玉パナソニックワイルドナイツと最下位の浦安D-Rocksの一戦だ。この試合ではノーサイドを告げるホーンが鳴ってから浦安D-Rocksが奇跡的な逆転劇で金星を飾った。もし、この一戦で順当にワイルドナイツが勝利していれば、レギュラーシーズン順位でも神戸スティーラーズを上回って1位フィニッシュだったはず。そうなればプレーオフトーナメントの情勢もまた変わっていたはずだ。

この一戦に限らず、各節で好試合や劇的展開が生まれる要因のひとつは、各チームに世界的スタープレーヤーがいること。ワールドラグビーが選出する「2025年のベスト15」のうち3人がリーグワンに在籍し、その中の1人、スピアーズのマルコム・マークスは世界最優秀選手にも選ばれている。日本のスポーツリーグの中で、リーグワンほど世界トップ選手が数多く戦う競技はないはずだ。そんなスター選手に揉まれることで、日本人選手たちの意識とプレー精度もますます高まりを見せている。リッチー・モウンガ(東芝ブレイブルーパス東京)、チェスリン・コルビ(東京サントリーサンゴリアス)、ファフ・デクラーク(横浜キヤノンイーグルス)らは今季限りでリーグワンを離れるが、また新たなスター選手が来季、日本にやってくるだろう。

そして、リーグワンが終われば、ここからは代表チームの季節。各チームで成長した選手たちが、今度は日の丸を背負って戦う。今季の代表シーズンでは、フランス、オーストラリア、イングランドといった世界的強豪との戦いがマッチメークされた。見据えるのは来年に迫るラグビーW杯オーストラリア大会。まだ代表未キャップの選手でも、あと1年の飛躍次第でW杯メンバーに選ばれる可能性は十分にある。

今季のリーグワン新人王・上ノ坊駿介もその候補のひとり。6月10日に発表された代表合宿のメンバーにも名を連ねた。目指す桜のジャージーへ、決意をこう語る。

「もし日本代表に選ばれるのであれば、その責任も背負って戦わなければならないと思います。ワールドクラスの選手になれるように頑張りたい。そのためには、もっと一貫性のあるプレーをすることが大事になります。まだ自信はないですが、日々の成長が日の丸へとつながっていくはずです」

画像6: ©ジャパンラグビーリーグワン

【取材・文=オグマナオト】
ライター/構成作家。書籍執筆や構成、インタビューを手掛けるほか、テレビ朝日「報道ステーション」スポーツコーナー、プロ野球解説者YouTubeなどスポーツ番組での構成作家も担当。著書に『早稲田とスポーツ、覇者の150年』など。

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