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【ゾッとする怖い話】この家の“おかしな風習”。実家の座敷で行われていたこと【ホラー小説】

  • 2026.6.6
日本家屋
出典:www.google.com

実家は田舎の本家で、法事や祝いごとのたびに親族が集まります。 十歳の誕生日の夜、私は実家のいちばん奥の間に座らされていました。

本家の長女

実家は田舎のちょっと大きな家で、私はそこの本家の長女なんです。一人っ子で。

親戚づきあいの濃い土地だったので、法事や祝いごとがあるたびにうちに親族が集まりました。
宴会の時には、ふだん仕切りになっている客間の襖を全部開けて広く使うんです。

玄関からすぐの客間から廊下を挟んだ奥の座敷までひと続きになると、家がぐんと広くなって楽しくて。
いとこ達と駆け回って、よく大人から怒られました。

十歳の誕生日

私の十歳の誕生日の夜も、そうでした。

親戚が何人も来て、台所は朝から忙しそうで、座敷には座布団がずらっと並んでいます。

私は新しい服を着せられて母に髪を丁寧に梳かされて、お姫様みたいな扱いに少しそわそわしていました。

夕方になってもなかなか宴席が始まりません。
私はいちばん奥の和室へ連れて行かれて、床の間の前に座らされます。

そこへ伯母がやってきて、後ろから私の肩を押さえながら「動かんでよ」と言いました。
伯母は私の髪をつかんで、ためらいなく小刀を入れました。

背中まで伸ばした髪が、重たい音を立てて半紙の上に落ちます。

それから、祖母が私の少し後ろに立って言いました。

「十の齢を迎えしこと、家の内に告げ奉る」

そう言って、切った髪を半紙に揃えて床の間へ置きます。練習通りでした。
後ろから祖母が弱く肩を押して、私のセリフを促します。

「おめしください」

私がつっかえず言うのを見届けるとそれまで黙っていた親戚たちが一斉にふっと息をつきました。
それからようやく宴席が始まって、大人たちは笑いながらお酒を飲み始めます。

でも私は宴会のあいだ、床の間の前から動かないよう言いつけられていました。
自分の髪が置かれているすぐ前で、座ったまま。

宴会のざわざわした声と、背後の床の間あたりの空気が妙に冷たかったことだけ、記憶に残っています。

自分だけお喋りもできない、ごはんも出てこない宴会なんて当然退屈です。
いつの間にか眠ってしまったらしくて、気がついた時には、自分の布団の中でした。

不格好に短い髪のまま朝ごはんを食べていたら、母に「あとで美容室ねー」と声をかけられました。

座敷へ行くと、襖はいつものように閉められていて、家はもう普段通りの広さに戻っています。

床の間には、髪をのせていた半紙だけが残っていて、その上にあったはずの髪の束はなくなっていました。

髪くらいで済むなら

今思えば、おかしな風習です。
一度だけ、あれはなんだったのかと母に聞いてみたことがあります。

母はふっと顔を歪めて一言、「髪くらいで済むなら安いもんでしょ」と。
吐き捨てるような言い方でした。

私、結婚する気も子どもを持つ予定もないんですけど、うちってあれをやらなくなったらどうなるんでしょう。
「髪くらい」では済まなくなるんでしょうか。

※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

◆味醂 子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。 映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。 読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。 【SNS】 X:@a_mirin0223

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