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『HODINKEE Japan』編集長 関口優のタイムピース探訪。腕時計は本当に投資対象になったのか?

  • 2026.6.4
Hearst Owned

大きな益をもたらす存在になった時計。自らの美学で選び抜いた一本へ生き方を投影していくことで、人生の価値が増幅される。そこにこそ、投資対象としての価値が潜んでいます。プライマリーとセカンダリー、時計の価値を形づくる二つのメカニズムについて、『HODINKEE Japan』編集長の関口優が解説します。

<Profile>
関口優(せきぐちゆう)/『HODINKEE Japan』編集長

1984年生まれ。腕時計専門誌編集長を4年間務め、業界最年少編集長にして同誌を専門誌売り上げNO.1に導く。2019年より現職。2023年から『リシェス デジタル』編集長を兼務。

時計の価値を作る二つのマーケット

David Cairns/Getty Images

2017年、クリスティーズ・ニューヨークのオークション。一人の女性が愛用したCARTIER(カルティエ)の「タンク」が、約4000万円という、その小ぶりなケースからは想像もつかない価格で落札されました。元の持ち主の名は、ジャクリーン・ケネディ・オナシス。それ以来、一度も市場に姿を現していないこの「タンク」は、新たな物語が上書きされ、価値をさらに不可逆的なものとしていつかまた顔を見せることでしょう。

昨今、ちまたでは「時計投資」という言葉が聞かれるように。果たして時計は本当に、不動産や株と同じような投資対象になったのか。ホディンキー・ジャパンの編集長としての私の答えは、意外かもしれませんが「イエス」です。 ただし、ここでの投資とは転売益を狙うことを指しません。私は時計を、自らの生き方を証明し、継承していくための「財産」と定義したいと考えています。

まず、その価値を作る二つのメカニズムを整理してみましょう。新品の時計を販売する直営ブティックなどは「プライマリー市場」と呼ばれ、ブランドの技術や伝統が、時計に揺るぎない「格」を授けます。私たちが支払う対価はそのブランドを手にする誇りと、未来への投資そのものです。対して、オークションを中心とした「セカンダリー市場」は、時計が経てきた「時」を価値に変える場所。誰が、どのような思いでその時計を愛でたのか。オークションのハンマーはその尊さを証明し、財産としての新たな価値を確定させます。そしてこの二つの市場は、鏡合わせのように互いを高め合うことで、今日の時計の熱狂を生み出してきました。冒頭に挙げたジャッキーの「タンク」のような存在は、それ以外のヴィンテージ「タンク」にも人気を波及させた一方で、カルティエにこうしたヘリテージを再解釈させるという影響も与えることに。その流れの中で、1917年のオリジナル「タンク」を思わせる「タンク ノルマル」が2023年に限定復活。ヴィンテージを背景としたこれらのクラシックなオマージュモデルは、いずれも数百本しか製造されないことでプレミアムが付き、プライマリー市場でのカルティエの「格」も一段と高まることになりました。

プライマリーが「格」を創り、セカンダリーが「時」を価値に変える。この循環があるからこそ、時計は時代を超えて機能する、硬質な価値の保存先となり得るのです。それが、私たちが時計を愛し情熱を注ぐ、真の理由ではないでしょうか。

【カルティエ】タンクの伝統を継承する抑制されたフォルム

時計“タンク ノルマル”[YG アリゲーターストラップ ケース32.6×25.7㎜ 手巻き][参考商品](Cartier/カルティエ カスタマー サービスセンター) Antoine Pividori (C) Cartier

2023年の「カルティエ プリヴェ」として発売されたタンク ノルマル。現代的にリデザインされた本作は、YGとPtで各200本ずつと希少。(現在は製造・販売を終了)

【パテック フィリップ】人気の高いモデルがオークションでも話題に

時計“ノーチラス 7010/1G”[WG×ダイヤモンド ケース径(10-4時位置)32㎜ クオーツ]¥10,770,000(Patek Philippe/パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター) (C)Patek Philippe

2021年のオークションで、とあるノーチラスが7億円を超える額で落札。それ以来、セカンダリーでも一段階高い評価に。本作は2025年の新作。

問い合わせ先
カルティエ カスタマー サービスセンター
TEL/0120-1847-00
URL/www.cartier.com

パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
TEL/03-3255-8109
URL/www.patek.com

初出:リシェスNo.55 2026年3月27日発売

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