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世界的建築家が手掛ける、「サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン」全作品リスト

  • 2026.6.3
Iwan Baan

毎年夏、英国王立公園ケンジントン・ガーデンに登場する「サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン」は、世界的建築家による革新的な建築が楽しめる期間限定の建築イベント。ザハ・ハディドやオスカー・ニーマイヤー、フランク・ゲーリー、SANAA、藤本壮介などの過去の名作と共に、その建築的魅力を振り返ってみよう。

iwan baan

「サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン」の始まり

始まりは2000年、サーペンタイン・ギャラリーの前庭の敷地に、ギャラリー30周年を祝うパーティーのための建築をザハ・ハディドに依頼したことから。

毎年選ばれる設計者の条件は、英国に作品がないこと。設計の条件は、短い工期内に作品を作ることと来場者が利用できるカフェとレクチャースペースを設けること。シンプルな条件下でこの25年間、建築家やアーティストは自身のビジョンを反映した作品を発表してきた。

Hélène Binet

【2000年】

ザハ・ハディド

「サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン」で最初の作品を発表したのは、建築家のザハ・ハディド。テントの構造を生かした600㎡もの空間は、屋根部分が布でできており、無柱で成り立っている。内部には、白から黒に変化する特別にデザインされたテーブルが並んだ。ザハによる展示は、当初の3日間の予定を越えて、夏中展示された。

Sylvain Deleu

【2001年】

ダニエル・リベスキンド

空に鋭角に貫くような斬新で幾何学的なパヴィリオンを設計したのは、建築家のダニエル・リベスキンド。アルミニウムでできたあるゆる角度のついた面は、太陽の光を反射し、ドラマチックな空間を作り出した。

Getty Images+Sylvain Deleu

【2002年】

伊東豊雄+セシル・バルモンド

2013年に建築界のノーベル賞ともいわれるプリツカー賞を受賞した伊東豊雄と、構造デザイナーのセシル・バルモンドによる共作。壁面は、多角形の面をアルミパネルとガラスで貼った構造。

Getty Images

【2003年】

オスカー・ニーマイヤー

「自由で大胆なものにしたい」というブラジルの巨匠建築家オスカー・ニーマイヤーは、女性の体を模した曲線を使用した屋根の作品を展示。内観の壁には、オスカーによるスケッチも描かれた。

MVRDV

【2004年】

MVRDV

2019年までの展示で、唯一実現されなかったのが、オランダの建築家集団MVRDVによる、サーペンタイン・ギャラリー自体を覆う小高い丘のパヴィリオン。MVRDVは、ギャラリーとパヴィリオンの強い絆を表現したかったが、予算や工期、行政の基準の折り合いがつかなかった。

Getty Images+Sylvain Deleu

【2005年】

アルヴァロ・シザ+エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ

ポルトガルの二大巨匠であるアルヴァロ・シザとエドゥアルド・ソウト・デ・モウラが手掛けたのは、400㎡の大型パヴィリオン。木製の梁が格子状に組まれた伝統的な建築様式と、太陽電池照明が埋め込まれたポリカーボネートパネルの技術が融合した。

Getty Images+John Offenbach

【2006年】

レム・コールハース

国際的に活躍する建築事務所OMAを主宰するレム・コールハースによるパヴィリオンは、空気で膨らむ構造の屋根を有す気球のような外観。ポリカーボネートパネルで取り囲んだ、エリアでは様々なイベントが行われた。

John Offenbach+Deborah Bullen

【2007年】

オラファー・エリアソン+スノヘッタ

現代美術作家のオラファー・エリアソンとニューヨークの建築事務所スノヘッタによる共作は、今までのパヴィリオンの動線にはなかった、らせん状に上っていく構造を採用。パヴィリオンの屋上では、庭園を一望できる空間が広がった。

Getty Images

【2008年】

フランク・ゲーリー

建築界の様々な賞を受賞している巨匠フランク・ゲーリーは、野外劇場のような階段状の座席を配したパヴィリオンを設計した。これは、レオナルド・ダ・ヴィンチがデザインしたカタパルト(投石機)からインスパイアされた。

Luke Hayes+Claire Byrne

【2009年】

SANAA

妹島和世と西沢立衛による建築家ユニットSANAAは、公園のような建築を提案。雲のような形をした屋根や、建築場所の前庭をはみ出しながらも、周辺の建築と調和するような自由さを目指した。パヴィリオンには壁がなく、どこからでも自由に出入りできる開放的な空間となった。

Getty Images

【2010年】

ジャン・ヌーヴェル

フランスの建築家ジャン・ヌーヴェルは、公園の緑と反対色の赤で構成された人目を引くパヴィリオンを設計。ロンドンのポストやバスを彩る赤を、ガラスやポリカーボネート、ファブリックの多様な素材使いで空間にコントラストを与えた。

Getty Images

【2011年】

ピーター・ズントー

スイスの建築家であるピーター・ズントーが手掛けたパヴィリオンのコンセプトは「閉ざされた庭」、「黙想的な部屋」、「庭園の中の庭園」。四方が壁でできた黒い建物に入ると、中央に庭園が現れるという印象的な体験を提案した。

Iwan Baan+Luke Hayes

【2012年】

ヘルツォーク&ド・ムーロン+アイ・ウェイウェイ

2008年にも北京オリンピックスタジアム設計でコラボレーションした、スイスの建築ユニットヘルツォーク&ド・ムーロンと中国のアーティストアイ・ウェイウェイの共作は地面を約1.5m掘り下げる初の試みを行った。屋根部分は水盤としての機能を持ち、内観はコルクで覆われた。

Getty Images+Iwan Baan

【2013年】

藤本壮介

2013年は建築家の藤本壮介が設計。「公園の緑に溶けていくような半透明な地形」のアイデアをもとに、繊細なスチールパイプを格子状に組みあわせて形作った。半円のポリカーボネートディスクをはめ込んで屋根にすることで雨をしのぐ構造にした。

Iwan Baarn+John Offenbach

【2014年】

スミルハン・ラディック

チリの建築家スミルハン・ラディックによる2014年のパヴィリオンは、オスカー・ワイルドの短編『わがままな大男』から着想を得たもの。巨大な石の上に、厚さ10mmのファイバーグラスでできたシェル構造の本体が乗っているユーモラスな作品。

Iwan Baarn

【2015年】

セルガスカーノ

スペインの建築デュオ、セルガスカーノが設計したのは、半透明のパネルやフィルム、テープを使った蛇型ドームのパヴィリオン。カラフルなマテリアルの内観は、光の加減で表情が変化する仕立て。「フォートナム&メイソン」のカフェや、アイスクリームパーラーなどもあり注目を集めた。

Getty Images+Iwan Baan

【2016年】

ビャルケ・インゲルス(BIG)

ビャルケ・インゲルスが率いる建築集団BIGが設計したのは、「アンジップド・ウォール」とタイトルが付けられた、1800以上の空洞のブロックが積み上げられたパヴィリオン。ファイバーグラス製のブロックでできた壁は、タイトルの通り、ファスナーを開いたようなフォルムを表現した。

Iwan Baan

【2017年】

フランシス・ケレ

べルリンに拠点を置く建築家フランシス・ケレは、故郷のアフリカを思わせる鮮やかなインディゴブルーに染めた木材で文様を作った壁と屋根で「木」を表現。フランシスの故郷で、人々が集まる場であった「木の下」を、コミュニティの場としてのパヴィリオンに投影した。

Rafael Gamo+Ste Murray

【2018年】

フリーダ・エスコベド

メキシコの建築家フリーダ・エスコベドは、当時史上最年少でパヴィリオンの設計を手掛けた。コンセプトは、メキシコ建築とイギリスの歴史や素材との融合。波形のコンクリート瓦を重ねた壁やステンレス張り天井、床に配した水盤など、伝統的な要素を融合させ、現代らしさが随所に見られるエレガントなパヴィリオンに仕上げた。

Iwan Baan

【2019年】

石上純也

2019年のパヴィリオンを手がけたのは、建築家の石上純也。建築の中でも最も一般的なパーツである屋根からインスピレーションを受けた作品は、イギリスで屋根に多用される粘板岩を用いた張り出し屋根が、芝生の間近から緩やかなカーブを描き上昇するデザイン。パヴィリオン内部は、重さのある屋根を支えているとは思えないほど細い柱で構成されており、屋根が浮遊しているかのような開放感を演出するとともに、自然との調和を目指した。

Getty Images

【2020年/2021年】

カウンタースペース

2020年の建設が延期になり、2021年に完成したのは、南アフリカのヨハネスブルグを拠点に活動するカウンタースペースによるもの。1990年生まれのスマヤ・ヴァリー、アミナ・カスカル、サラ・デヴィリアスによるカウンタースペースは、「サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン」史上最年少での抜擢となる。「過去と現在をつなぐ、ミーティングの場」をテーマに、スチール、コルク、木材などの素材にマイクロセメントを施し、ロンドンの建築の要素を抽象的に落とし込んだ形状を組み合わせて作り上げた。

Serpentine Pavilion 2022 designed by Theaster Gates © Theaster Gates Studio. Photo: Iwan Baan. Courtesy: Serpentine.

【2022年】

シアスター・ゲイツ

2022年のパヴィリオン「ブラック・チャペル」を手がけたのは、シカゴを拠点に活動するアーティスト、シアスター・ゲイツ。その名の通り、黒一色のパヴィリオンは、陶器産業で栄えるイギリスのストーク=オン=トレントで使用されているボトルオープン窯や米国西部の蜂の巣窯、アフリカの泥小屋からインスピレーションを得た、直径16m、高さ10mほどの円筒型の建物。内部には、天井に空いたサークル状の穴から光が降り注ぎ、瞑想空間としての機能も。

Serpentine Pavilion 2023 designed by Lina Ghotmeh. © Lina Ghotmeh — Architecture. Photo: Iwan Baan, Courtesy: Serpentine.

【2023年】

リナ・ゴットメ

ベイルート出身でパリを拠点に活動するリナ・ゴットメが設計したのは、時事問題、政治、私生活、夢についてテーブルを囲んで語り合うことからインスピレーションを得た「テーブル」とタイトルが付けられたパヴィリオン。西アフリカのマリにある集会所トグナの雰囲気と、ヤシの葉の構造を採用したプリーツ屋根、植物のような透かし彫りを施した壁が、周囲の自然と調和する。

Serpentine Pavilion 2024, Archipelagic Void, designed by Minsuk Cho, Mass Studies © Mass Studies Photo: Iwan Baan Courtesy: Serpentine

【2024年】

チョ・ミンスク

2024年のパヴィリオンを手掛けたのは、OMAのロッテルダム事務所勤務やニューヨークで建築事務所を設立したのち、韓国を拠点に活動する建築家のチョ・ミンスク。「アーキペラジック・ヴォイド」と題されたパヴィリオンは、中庭をもつ韓国の伝統的な韓屋のレイアウトを参考に、1つのオープンスペースと5つのユニークな形状の構造で構成されている。各構造体は、ギャラリーや図書館、プレイタワー、ティーハウスとしての機能を持ち、人々が安らぎ、集えるような空間を実現した。

Iwan Baan

【2025年】

マリーナ・タバスム

2025年のパヴィリオンを手掛けたのは、気候、場所、歴史と深く結びついた現代的な建築で知られ、バングラデシュを拠点に活動する建築家のマリーナ・タバスム。「ア カプセル イン タイム」と題されたパヴィリオンは、アーチ型の庭園の天蓋からインスピレーションを得た4つの彫刻的な木製カプセル型で構成されている。

Iwan Baan

半透明のパネルでできたファサードからは、柔らかい日光が拡散され、内部では周辺の木々の影が幻想的に映し出される。ファサードの一部は可動式で、空間をダイナミックに変化させることができるのも特徴。中央には、ケンジントン・ガーデンで樹木景観に貢献していることから選ばれたイチョウの木が佇む。

Iwan Baan

人々が集い、語り合うための開かれた空間を実現するため、パヴィリオンには本棚が備え付けられており、さまざまな書籍が収蔵されている。会期終了後には、誰もが利用できる図書館として再利用されることが構想されている。

<写真>Serpentine Pavilion 2025 A Capsule in Time, designed by Marina Tabassum, Marina Tabassum Architects (MTA). Exterior view. © Marina Tabassum Architects (MTA), Photo Iwan Baan, Courtesy: Serpentine.

Iwan Baan

【2026年】

ランザ・アトリエ

2026年のパヴィリオンを手掛けたのは、メキシコシティを拠点とする建築スタジオ、ランザ・アトリエ。イサベル・アバスカルとアレッサンドロ・アリエンツォが率いる同スタジオは、地域の文脈や素材、人々の営みに深く根ざした建築で知られる。今回発表した「a serpentine」は、英国の庭園に見られる蛇行したレンガ壁「サーペンタイン・ウォール」から着想を得たもの。ケンジントン・ガーデンズの樹木群に呼応するように、ゆるやかにうねるレンガ壁が風景へと溶け込む。

Iwan Baan

パヴィリオンは、曲線を描くレンガ壁によって構成される。隣接するサーペンタイン・サウスの歴史的なレンガ建築との対話を意識しながら、壁面は内部と外部をゆるやかにつなぐフィルターとして機能する。上部には半透明のキャノピーが架けられ、自然光や風を取り込みながら、木立を思わせる軽やかな空間を生み出している。

Iwan Baan

内部には、ランザ・アトリエがサペリ材でデザインした椅子やスツールが点在。円弧を描くレンガの床とともに、人々が自由に集い、語らうための空間を生み出している。会期中はトークやパフォーマンス、上映会など多彩なプログラムが開催される予定で、建築そのものが交流のためのプラットフォームとして機能する。

<写真>Serpentine Pavilion 2026 a serpentine, designed by Isabel Abascal and Alessandro Arienzo, LANZA atelier. Interior view © LANZA atelier, Photo Iwan Baan, Courtesy Serpentine.

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