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電子制御時代でもブレーキングの本質は同じ|“曲がれない”を解決するブレーキ術 最終回

  • 2026.5.28

ABSや電子制御の進化によって、現代のスポーツバイクは驚くほど高性能になった。しかし中野真矢さんは、「ブレーキングの基本は昔から変わっていない」と語る。今回の“曲がれない”を解決するブレーキ術 最終回では、進化するマシンと変わらないライディングの本質について解説する。

PHOTO/S.MAYUMI TEXT/T.TAMIYA

取材協力/ドゥカティジャパン ☎0120-030-292

https://www.ducati.com/jp/ja/home

バイクは進化しても、ライダーがやるべきことは変わらない

近年のスポーツバイクは、電子制御の進化によって驚くほど高性能になりました。

ABSやトラクションコントロールはもちろん、ラジアルマウントキャリパーやラジアルマスターシリンダーなど、ブレーキ関連パーツも今ではハイグレードなものが当たり前になっています。タイヤやサスペンション性能も含め、減速性能そのものは昔とは比較にならないほど向上しました。

レースの世界でも、ライダーたちの技術は進化を続けています。

バレンティーノ・ロッシ選手が広めた“足出しブレーキング”は、今やMotoGPだけでなく世界中のレースシーンへ浸透しましたし、近年の欧州ライダーたちは、以前より前寄りのライディングポジションを取る傾向も強くなっています。

しかし、それでも僕は、「ブレーキングの基本そのものは変わっていない」と考えています。

例えば近年のスーパースポーツには、高性能なレースABSを搭載するモデルも増えました。ですが、だからといってABS介入を前提に“ガツン”とレバーを握ることはありません。

むしろ、上手いライダーほどABS介入を嫌います。

もちろん、公道でのABSの有効性を否定しているわけではありません。これはサーキットで限界を探るような走りをしているときの話です。

フロントタイヤの限界を探りながらブレーキングしている最中にABSが介入すると、一瞬「止まれない」と感じる場面があります。ABS自体は正しく作動しているのですが、人間は“想定外の動き”に対して恐怖を感じやすいんです。

加速時のトラクションコントロールなら、「前に進まない」方向なのでまだ安心感があります。しかしブレーキングでは、「止まれないかもしれない」という恐怖につながるため、より敏感に感じるのでしょう。

最近では、ドゥカティが採用している“ポストラン機能”のように、ブレーキング終盤で自動的にリアブレーキを補助する技術まで登場しています。

以前なら考えられなかった電子制御ですが、それでもなお、バイクのブレーキング制御は発展途上です。

だからこそ、時代が変わっても、基本テクニックを身につけることは非常に重要だと思っています。

電子制御時代でもブレーキングの本質は同じ|“曲がれない”を解決するブレーキ術 最終回
【アコスタが模索するのは新時代のブレーキングか?】右はカワサキMotoGPライダー時代の中野さん、左は現KTMワークスの21歳、ペドロ・アコスタ選手。ギリギリまでハードにブレーキングで追い込むアコスタ選手の腕の突っ張り具合は強烈で、かなりシートの前側に座っている。本来ブレーキングではリアを浮かせたくないはずだが、それよりも優先したい“何か”があるのかも知れない

今回の特集では、そんな“基本”を中心に解説してきました。

ただ、ひとつだけ一般的ではない部分があります。それは、僕のフロントブレーキレバーの握り方です。

僕はポケバイ時代から、中指・薬指・小指の3本がけでブレーキを操作しています。

恐らく少数派でしょう。

パワーをかけやすいメリットはありますが、レース中にブレーキタッチが変化した際、人差し指が挟まるなどのデメリットもあります。

現役時代、他のライダーたちの握り方を観察したこともありましたが、実際はかなりバラバラでした。

ただ、これからスポーツライディングを覚えるのであれば、やはりおすすめは人差し指と中指の2本がけです。

繊細なコントロールがしやすく、現代の高性能ブレーキシステムとも相性が良いと思います。

最後にもう一度伝えたいのですが、ブレーキングは本当に難しい技術です。

MotoGPライダーですら、初めて走るコースや久しぶりのコースでは、ブレーキングポイントを探りながら走っています。

「ここだ!」と思った位置でブレーキングを始めても、早すぎて途中でレバーを放し、握り直すことも珍しくありません。

その日のコンディション、マシン状態、路面温度などによって、最適解は常に変化するからです。

だからレーサーたちは、数十cm単位でブレーキングポイントを調整しながら、“理想の進入”を探っています。

しかも、その目的は単純に止まることではありません。

理想的なラインへ、無駄なく、スムーズにつなげるためにブレーキングを磨いているのです。

プロですらそうなのですから、趣味としてスポーツライディングを楽しむ皆さんは、焦る必要はありません。

欲張らず、安全を優先しながら、一歩ずつスキルアップしていけば大丈夫。

ぜひ今回の特集を参考に、ブレーキングの楽しさと奥深さを体験してみてください。

(中野真矢)

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