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「9,800万円」でタワマン30階を購入した30代夫婦。遠くの地震で痛感した誤算【一級建築士は見た】

  • 2026.7.2
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※ChatGPTにて作成

「遠くで大きな地震があったとき、わが家がゆっくり、大きく、長く揺れ続けたんです。低い階に住む知人は『そんなに揺れなかった』と言っていて。免震のマンションなのに、どうしてうちはこんなに、と不安になりました」

そう話すのは、都内のタワーマンション(築6年・42階建て・30階・約75㎡)を約9,800万円で購入したKさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。地震に強いと聞いて選んだ住まいでしたが、長い時間ゆさゆさと揺れる経験をして、高層階ならではの揺れ方があることに気づいたといいます。

「ものがゆっくり動いて、船に乗っているような感覚でした。揺れがなかなか収まらず、こわかったです」とKさんは振り返ります。

高層階を大きく揺らす「長周期地震動」

地震の揺れには、いくつかの種類があります。私たちがよく思い浮かべる、ガタガタとした小刻みな揺れは「短周期地震動」と呼ばれます。一方、周期の長い、ゆっくりとした大きな揺れを「長周期地震動」といいます。

長周期地震動は、規模の大きな地震で生じ、遠くまで伝わりやすい性質があります。気象庁によると、震源から数百km離れた場所でも、高層ビルが大きく長く揺れ続けることがあるとされています。建物には揺れやすい固有の周期があり、高層の建物はこの周期が長いため、長周期地震動と「共振」して、大きく揺れやすくなります。

短い周期の揺れは、戸建てや低層の建物が強く揺れ、数秒から数十秒で収まることが多いものです。これに対し、長周期地震動では、高層階ほど大きく、そして長く揺れます。揺れが10分を超えて続くこともあるとされ、低い階の知人とKさんとで感じ方が違ったのも、この特性によるものと考えられます。

免震や制震でも、「揺れそのもの」はなくならない

タワーマンションの多くは、地震の揺れをやわらげる仕組みを備えています。建物と地盤の間に装置を入れて揺れを伝わりにくくする「免震」や、揺れを吸収する装置を組み込む「制震」などです。これらは建物の損傷や倒壊を防ぐうえで、大きな効果があります。

ただし、知っておきたいのは、こうした仕組みがあっても、長周期地震動による高層階の揺れそのものを、ゼロにできるわけではないという点です。気象庁も、免震構造の建物が長周期地震動で大きく揺れることがある、としています。揺れが大きく長く続くと、固定していない家具や家電が、倒れたり落ちたりするだけでなく、大きく移動して人にぶつかる危険があります。

実際、東京消防庁の調査では、高層階ほど家具類が転倒・落下・移動した割合が高かったことが示されています。建物が守ってくれる部分とは別に、室内には室内の備えが必要だ、ということです。

Kさん夫婦はどう対応したのか

揺れの経験から、Kさん夫婦は、住戸内の地震対策を見直すことにしました。

まず、背の高い家具を壁に固定し、キャスターのついた家具には、ロックだけでなく専用のキャスター受けや滑り止めを使用。寝室には、倒れて出入り口をふさぐような家具を置かないよう、配置も見直しました。あわせて、揺れを感じたら慌てて動かず、身を低くして頭を守る、という行動も家族で確認したそうです。

「建物が守ってくれる部分と、自分たちで備える部分があると分かりました。やみくもにこわがるのではなく、できる備えをしておくことで、気持ちも落ち着きました」とKさんは振り返ります。

タワマンは「揺れ方の特性」まで知って選ぶ

高層階の住まいを検討する際は、地震への強さだけでなく、高層階ならではの揺れ方や、室内の備えまで考えておくと安心です。とくに以下の点を意識してみてください。

・建物の地震対策(免震・制震など)がどうなっているか
・背の高い家具や、キャスター付きの家具を固定・ロックできているか
・寝室や出入り口の近くに、倒れて避難経路をふさぐ家具がないか
・揺れを感じたときの行動を、家族で共有できているか

「建物の強さ」と「室内の備え」の両輪で

タワーマンションの高い建物としての性能は、年々向上しています。免震や制震といった技術は、住む人の安全を支える、頼もしい仕組みです。

ただ、その性能は、室内の安全までを丸ごと保証するものではありません。大切なのは、建物の強さに任せきりにせず、家具の固定や配置といった、自分でできる備えを重ねておくこと。長く続く揺れがあると知っておくだけでも、いざというときの行動は変わります。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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