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「自分の庭にまいた除草剤で、お隣の木が枯れたと言われ…」境界トラブルに戸惑う30代夫婦。"越境した根"の落とし穴【一級建築士は見た】

  • 2026.6.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「庭の雑草がひどくて市販の除草剤をまいたんです。しばらくして、お隣から『おたくの除草剤のせいで、うちの木が枯れた』と言われてしまって。まさか弁償の話になるとは思わず、頭が真っ白になりました」

そう話すのは、郊外の戸建て(4LDK・約5,000万円)に暮らすHさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。隣家は境のフェンス沿いに庭木を植えており、その木の根が地面の下を通って、Hさんの敷地側にまで伸びていたといいます。

「自分の敷地に、いつもどおりまいただけなのに…。どう答えればいいのか分からず、困ってしまいました」と振り返ります。

境界を越えてきた「根」は、どう扱われる?

まず整理したいのが、隣家の木の根が境界を越えて自分の敷地に伸びてきていた、という点です。民法では、隣の木の根が境界線を越えてきた場合、こちら側でその根を切り取ってよいことになっています。

一方、地上の「枝」はかつて勝手に切れませんでしたが、2023年(令和5年)4月施行の改正民法で、所有者に切除を求めても相当の期間内に応じないとき、所有者や所在が分からないとき、急迫の事情があるときには、越境された側が自分で切り取れるようになりました。

ただし、「根は切ってよい」からといって自由に切り落としてよいわけではありません。根を切ったことが原因で隣家の木を枯らしてしまうと、必要以上の行為(権利の濫用)として、かえって損害賠償を求められる可能性もあるとされています。木全体に関わる太い根を安易に切るような対応は避け、心配なときは切る前にお隣に相談したり専門家の意見を聞いたりするのが安心です。

「まいた側が必ず弁償」とは限らない

では、自分の庭にまいた除草剤で隣の木が枯れた場合、必ず弁償しなければならないのでしょうか。実は、そう単純ではありません。

賠償を求める側は「その除草剤が原因で木が枯れた」という因果関係を示す必要がありますが、木が枯れる原因は病気や根詰まり、環境の変化などさまざまで、除草剤が原因だと明確に示すのは簡単ではないとされています。自分の敷地内で製品の使い方に沿ってまいただけであれば、ただちに責任を問われるとは限りません。

とはいえ「弁償しなくてよい」と一方的に突っぱねれば、関係はこじれます。大切なのは、白黒を性急につけることではなく、感情的にならずに向き合い、話し合いの糸口を探すことです。

Hさん夫婦はどう対応したのか

戸惑ったHさん夫婦は、感情的に言い返すのではなく、まず自分たちで確かめられることを整理しました。枯れた木はお隣の敷地にあり、原因をこちらで突き止めるのは難しいもの。できたのは、まいた除草剤の種類や使い方を確かめ、表示どおりに自分の敷地で使っていたと確認するくらいでした。

そのうえでお隣には「驚かせてしまってすみません。ただ、うちでまいたものが本当に原因なのか分からなくて」と、対立を避けつつ率直な戸惑いを伝えました。

結局、除草剤が原因だと示すことは誰にもできず、賠償の話はどちらが正しいとも決まらないまま立ち消えに。「頭ごなしにぶつからずに済んだぶん、最低限の関係は保てています」と振り返ります。

境界沿いの庭仕事は「お隣の植物」まで考えて

戸建ての庭で除草剤や薬剤を使う際は、自分の敷地のことだけでなく、境界の向こうまで意識しておくと安心です。

・境界沿いに、隣家の植物の根や枝が伸びてきていないか
・除草剤は、土に落ちると効果がなくなるタイプなど、周囲に広がりにくいものを選べているか
・庭木のそばや境界の近くで、薬剤を使うのを控えられているか
・越境した根が気になっても、太い根を安易に切らず、心配なときは事前にお隣や専門家に相談できているか

ご近所と「気持ちよく」暮らすために

庭の手入れは暮らしを心地よくする大切な営みです。問題になるのは、自分の敷地の中のことだから、と境界の向こうへの影響に気づかないまま進めてしまうこと。

大切なのは、境界沿いには目に見えない根が伸びてきていることもあると知っておくこと。そして、薬剤を使うときも、根が気になるときも、お隣と一声かけ合っておくことです。

多くの境界トラブルは、事前のひと言で防げます。「自分の庭をきれいにする」ことと「隣の庭に配慮する」こと。その両立が、ご近所と気持ちよく暮らす第一歩です。

参考:令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(法務省)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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