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「うちは今のままで困っていない」築25年の中古戸建てを買った30代夫婦が隣人に断られた“大誤算”

  • 2026.6.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「境界のブロック塀が古くなって、ひびや傾きが出てきたんです。お隣に『折半で建て替えませんか』と相談したら、『うちは今のままで困っていないので』と断られてしまって…」

そう話すのは、昨年、郊外の中古戸建て(築25年・4LDK・延床約32坪/土地約42坪、約4,500万円)を購入したEさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。隣家との境には、前の持ち主の代からあるブロック塀。売買時の書類を確かめると、境界線の上に立つ「共有」の塀でした。

「地震のときに崩れないか心配で。でも、うちだけの判断で建て替えていいのかも分からなくて」とEさんは振り返ります。

共有の塀は「片方の意思」だけでは建て替えられない

境界線の上に立つ塀は、費用を出して設置した人の所有になり、それがはっきりしない場合は、隣り合う家の「共有」と推定されます。そして共有かどうかで、できることが大きく変わります。

法律では、境界の囲い(塀など)の設置や手入れにかかる費用は、隣り合う所有者が等しい割合で負担するのが原則とされています。つまりEさんの「折半で」という提案は、法律の原則に沿った筋の通った話なのです。ただし、これはあくまで原則で、分譲時の取り決めや、その地域に古くからある慣習がある場合は、そちらが優先されることもあります。負担割合は、こうした事情によって変わる場合がある、と知っておくとよいでしょう。

しかし、共有の塀を取り壊して建て替えるには、基本的に共有者であるお隣の同意が必要です。相手が「困っていない」と言えば、勝手に工事を進めることはできません。直したい側にもっともな理由があっても、共有である以上、一方の意思だけでは動かせないのです。

古いブロック塀には「放置のリスク」がある

一方で、傷んだブロック塀をそのままにしておくことにも、リスクがあります。2018年6月の大阪府北部地震では、高槻市で小学校のブロック塀が倒れ、登校中の児童が亡くなる事故が起きました。これをきっかけに、国は既設の塀の安全点検のチェックポイントを示しています。高さや厚さ、控え壁の有無、ひび割れや傾きなどを確認し、危険性があれば、通行する人への注意表示や、補修・撤去などの対応が必要とされています。

また、塀が万が一倒れて人にケガをさせれば、塀の所有者が責任を問われることがあります。共有の塀であれば、その責任には双方が関わりうる――「困っていない」かどうかにかかわらず、傷んだ塀は両家にとっての問題なのです。

Eさん夫婦はどう対応したのか

断られて途方に暮れたEさん夫婦は、感情的に押し返すのではなく、材料を揃えることにしました。

まず市の建築指導課に相談し、国のチェックポイントに沿って塀の状態を確認すると、ひび割れと傾きがあり、補修や撤去を検討すべき状態だと分かりました。そこで、ぐらつきの大きい部分の応急的な補修は、Eさん側で先に行いました。傷んだ塀の手入れは、共有者の一方でも行えるとされているためです。

あわせて、市にブロック塀の撤去・建て替えを支援する補助制度があることも判明。自己負担を抑えた見積もりを取り直し、点検結果の写真と補助制度の資料を添えて、「危ないですよ」と迫るのではなく「負担を抑えて直せそうです」という形で、改めてお隣に伝えました。 それでも、お隣はすぐには首を縦に振りませんでした。

「安全に関わることなので、急かさず話し合いを続けるつもりです。倒壊時の責任問題は残りますが、どうしても難しければ、共有の塀はそのままに、自分の敷地内に新しいフェンスを立てる方法もあると知って、少し気持ちが楽になりました」とEさんは話します。

家を買うときは「境界の塀」まで確認して選ぶ

中古住宅を検討する際は、建物だけでなく、境界の塀の状態と所有関係も確認しておくと安心です。とくに以下の点を意識してみてください。

・境界の塀が共有か、どちらかの単独所有か(立っている位置と、費用を負担した経緯)
・ひび割れ・傾き・ぐらつきなど、国のチェックポイントに当てはまる傷みがないか
・自治体に、ブロック塀の撤去や建て替えの補助制度があるか

「直したいのに直せない」を防ぐために

共有の塀は、費用も維持もお互いさまの仕組みである一方、直すにも相手の同意が要ります。「折半で」という筋の通った提案でも、相手には相手の事情や温度差があり、一度で話がまとまるとは限りません。大切なのは、感情的にぶつからず、点検の結果や補助制度といった材料を揃えて、根気よく話し合うこと。そして家を買う段階で、建物だけでなく境界の塀の状態と所有関係まで見ておくことです。

塀は「困ってから」では動かしにくいものです。「買う前に、塀まで見ておく」こと。それが、境界をめぐる悩みを抱え込まないための第一歩です。

参考: ブロック塀等の安全対策について(国土交通省)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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