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乗務員がわずか4人に?2025年鉄道業界に激震が走った、地方鉄道を襲った大幅減便の危機

  • 2026.7.9
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

現在、日本社会のあらゆる業界で人手不足が深刻な社会問題となっていますが、私たちの生活を毎日支えている鉄道の現場も決して無縁ではありません。

電車は時間通りにやってくるのが当たり前という常識が揺らぎつつある今、鉄道現場で起きている人手不足の実態と、各社が生き残りをかけて挑む対策について考えていきます。

乗務員わずか4人― 熊本電鉄の衝撃

2025年1月、熊本市を走る熊本電鉄が乗務員不足を理由に同年2月からの大幅な減便を発表し、地元の利用者や全国の鉄道関係者に大きな衝撃が走りました。退職者が相次いだ結果、なんと乗務員がわずか4人という危機的な状況に陥ってしまったためです。

地方のローカル線とはいえ、政令指定都市である熊本市の近郊輸送を担う重要な生活路線が、そこまでの状況に追い込まれた事実は、鉄道業界の人手不足がいかに深刻なのかを象徴する出来事でした。

なぜ鉄道現場から人が離れるのか

売り手市場を背景にさまざまな業種で人材獲得競争が激化していますが、鉄道現場が敬遠されるのにはいくつかの理由があります。

最大の要因は、特有の過酷な勤務形態です。早朝や深夜の勤務、そして泊まり勤務を挟むような拘束時間の長い不規則なシフトは、ワークライフバランスを重視する現代の働き方のニーズと合致しづらくなっています。さらに、命を預かる重責に対して他業種と給与水準を比較された際、割に合わないと判断されてしまうケースもあります。

また、「運輸事業における人材不足と安全確保の課題」に関する調査報告によると、特に私鉄においてバブル崩壊後の長期間にわたる採用抑制が現在の現場の首を絞めていると指摘されています。年齢構成にいびつな偏りが生じ、ベテランから若手への技術継承がうまく進まないことも、現場の余裕を奪う原因となっているのです。

見えないところで起きている悪循環

人手が足りなくなると、最悪の場合は冒頭の熊本電鉄のように大幅な減便という形でダイヤに直接影響を及ぼします。

しかし、表面的には電車が通常通り動いていて利用者の目には見えなくとも、現場では深刻な事態が進行しています。ギリギリの人数でダイヤを維持しようとすれば、一人ひとりの勤務時間が長くなり、有給休暇も思うように取得できなくなります。その結果、疲弊した社員がさらに離職してしまうという悪循環に陥っている職場も少なくありません。

「ワンマン運転」の都心部拡大

こうした状況を打破するため、鉄道各社は様々な工夫を急ピッチで進めています。その大きな柱の一つが技術による省力化です。

例えばJR東日本では、これまで地方路線が中心だった車掌の乗務しないワンマン運転を首都圏の主要路線へ一気に拡大しています。2025年春から常磐線(各駅停車)や南武線で開始され、2026年には横浜線・根岸線にも拡大されました。

さらに2030年頃を目途に、東京都心を走る山手線や京浜東北線などでもワンマン運転を実施する計画が発表されています。首都圏でのワンマン運転拡大の背景には、やはり人手不足があります。しかし同時に、ホームドアの整備や車両のカメラシステムなど、人の目に頼らなくても安全を確保できる技術の進歩がそれを裏付けています。

こうした技術進歩の先には自動運転の実用化も視野に入っており、すでに各社で走行試験や研究が盛んに進められています。

「働きやすさ」の改革が生んだ復活劇

現場に必要な人数をシステムで減らすだけでなく、働く環境そのものを現代に合わせて改善する取り組みも進んでいます。

実は、冒頭で紹介した熊本電鉄はその後、復活を遂げています。乗務員確保のために平日のみの勤務で土日は完全に休みという、従来の鉄道業界の常識を覆す新しい勤務形態を新設したのです。この柔軟な制度が功を奏して新たな乗務員が集まり、1年あまりで乗務員を増員し、減便を解消することに成功しました。

このほかにも、鉄道各社で早朝・深夜・泊まり勤務を制限・免除できる制度を設けたり、社員食堂に代わるサポートを導入したりと、働きやすい環境づくりが急速に進んでいます。鉄道現場=過酷な仕事というイメージは、少しずつ過去のものになろうとしています。

欠かせない人の力

新技術の導入と、働く環境の抜本的な改善。この両面からのアプローチによって、鉄道業界は人手不足という危機を乗り越えようとしています。しかし、どれだけ技術が進歩しても、最終的に乗客の安全と安心を守るためには、まだまだ「人の力」が不可欠です。

もしこの記事を読んで、変わりゆく鉄道の仕事に少しでも興味を持った方がいるなら、ぜひその力をこれからの鉄道現場に貸してほしいと願っています。


参考:
運輸事業における人材不足と安全確保の課題(国土交通省 運輸事業の安全に関するシンポジウム基調講演)
首都圏主要線区でワンマン運転を実施します (JR東日本)
人的資本経営の推進(JR東日本)
【ダイヤ改正】鉄道線<増便>のお知らせ 2026年5月11日(月)(熊本電気鉄道株式会社)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとしても、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


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