1. トップ
  2. 暮らし
  3. 「段差を越えるとギシギシ音が」放置した結果…想定外のダメージを与えた“異音の正体”

「段差を越えるとギシギシ音が」放置した結果…想定外のダメージを与えた“異音の正体”

  • 2026.7.9
undefined
出典元:photoAC(画像はイメージです)情

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「段差を越えるとギシギシ音がするけれど、乗り心地は普通だから大丈夫だろう」

そんな小さな異音を放置していませんか。走行に支障がなくても、車の足回り部品が少しずつ劣化しているケースがあります。特にサスペンション周辺のゴム部品は経年劣化によって性能が低下し、異音だけでなく操縦安定性にも影響を及ぼすことがあります。

今回は、段差を越えるたびに発生する異音を数か月以上放置した結果、車検前点検で危険な損傷が見つかった事例をご紹介します。

「ただの古い車の音だと思っていた」異音の正体

ある日、ユーザーからこんな相談がありました。

「最近、段差を越えるとギシギシ鳴るんです」

詳しく話を聞くと、異音が出始めたのは数か月前とのことでした。

「でも乗り心地は変わらないし、普通に走れるんですよ」

実際に試運転すると、低速で段差を通過した際に足回りからギシギシという音が聞こえます。さらに興味深かったのは、晴れの日になると音が大きくなるという点でした。このような症状は、サスペンション周辺のゴムブッシュが劣化している際によく見られます。

サスペンションブッシュは、車体と足回り部品の間に取り付けられたゴム製の緩衝材です。走行中の振動を吸収したり、部品同士の動きを適切に制御したりする重要な役割を担っています。しかし長年使用すると、ゴムは徐々に硬化し、細かなひび割れが発生します。すると、本来ゴムが吸収していた振動や衝撃を吸収できなくなり、異音として現れるのです。

「走れるから問題ないと思っていました」

そう話す方は少なくありません。しかし足回りから発生する異音は、車からの重要な警告サインである場合があります。

異音だけでは終わらない。進行する足回りの劣化

点検を進めると、ブッシュの劣化は想像以上に進行していました。ゴムには深いひび割れが発生し、一部は変形も見られます。本来であればゴムが支えるべき荷重を支えられなくなり、金属部分同士が接触し始めていたのです。

「この状態になると異音がどんどん大きくなります」

「音だけの問題ではないんですか?」

「はい。ハンドリング性能にも影響します」

ブッシュは単なる防音部品ではありません。サスペンションやロアアームの位置を正しく保持する役割があります。そのため劣化が進行すると、足回りのアライメントが徐々に狂い始めます。すると直進安定性が低下したり、カーブでの挙動が不安定になったりすることがあります。

さらに問題なのがタイヤです。足回りの位置関係が変化すると、タイヤが正常な接地状態を保てなくなります。その結果、タイヤの内側だけが極端に減る「偏摩耗」が進行することがあります。ユーザー自身は気づかなくても、タイヤ寿命が大幅に短くなっているケースも珍しくありません。異音は足回りトラブルの入り口に過ぎず、放置期間が長くなるほど修理範囲は広がっていくのです。

車検前点検で見つかった危険な亀裂

今回の車両は、車検前点検でさらに深刻な問題が発見されました。ロアアーム周辺を詳しく確認すると、ブッシュの損傷だけでなく、周辺部品に亀裂が発生していたのです。

「このまま車検まで乗り続けるのはおすすめできません」

「そんなに危険なんですか?」

「はい。さらに進行すると足回りの破損につながる可能性があります」

もちろん、すぐに部品が脱落するような状態ではありませんでした。しかし足回りは走行安全性に直結する重要保安部品です。負荷が繰り返しかかることで亀裂が拡大すれば、最悪の場合はサスペンションやロアアーム周辺の損傷がさらに進行する恐れがあります。

結果として今回は、劣化したブッシュだけでなく関連部品の交換も必要となりました。さらに交換後にはアライメント調整も実施することになり、修理費用は当初想定していたより大きくなりました。

もし異音が出始めた初期段階で点検を受けていれば、交換部品を最小限に抑えられた可能性もあります。車の異音は、必ずしも乗り心地の変化を伴うとは限りません。特に段差で発生するギシギシ音やゴトゴト音は、サスペンションブッシュやロアアーム周辺の劣化が隠れていることがあります。

「普通に走れるから大丈夫」

そう考えて放置せず、早めに点検を受けることが安全と修理費用の両面で大きな差につながります。足回りからの異音を感じたら、乗り心地が正常であっても一度整備工場で確認してもらうことをおすすめします。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる