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東急電鉄「充電はお控えください」異例の呼びかけが話題。モバイルバッテリー発火、現役鉄道マンの見解は

  • 2026.7.4
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

スマートフォンが手放せない現代で外出時の必需品となったのがモバイルバッテリーです。大変便利なアイテムですが、近年、電車内でモバイルバッテリーが突然発火し、電車が緊急停止したり乗客が避難したりして、大きな混乱を招くニュースをたびたび耳にするようになりました。

ここまで発火事故が相次ぐと、鉄道会社としても何とか対策を打ち出したいところですが、現実的には非常に厳しいのが実情です。今回は、鉄道現場を悩ませるモバイルバッテリーの現状と、私たち利用者にできる対策について迫ります。

過去最多となる発火事故と山手線での影響

2025年7月、東京都内を走行するJR山手線の車内でモバイルバッテリーが突然発火する事故が発生しました。持ち主が火傷を負っただけでなく、乗客が避難する際に負傷者が出たうえ、首都圏の各路線で長時間の運休や遅延が発生するなど、非常に大きな影響が出たことは記憶に新しいニュースです。

総務省消防庁の統計によると、2025年に発生したモバイルバッテリーを含むリチウムイオン電池からの発火事故は、全国で1200件を超え、過去最多を記録しました。この中には先述の山手線の事故をはじめとする鉄道車内でのトラブルも含まれており、鉄道各社は有効な対策を迫られています。

航空機やバスで進む厳格なルール化

他の交通機関に目を向けると、厳しい対策がすでに進んでいます。

例えば航空機では、火災防止の観点から、以前よりモバイルバッテリーを預け入れ荷物として貨物室へ預けることは禁止されていました。これに加えて、2026年4月からはルールの厳格化が始まり、機内への持ち込みが「1人2個まで」に制限されただけでなく、「機内でモバイルバッテリーを使ってスマートフォン等を充電すること自体が禁止される」という新ルールが適用されました。

また、長距離を走る高速バスなどでも、客室下のトランクに預ける荷物の中にモバイルバッテリーを入れることを明確に禁止している会社が増えています。

鉄道会社が抱える「対策の限界」と独自の工夫

これに対し、鉄道では航空機ほど厳格な持ち込み制限や対策ができていないのが現状です。毎日数百万人が利用し、次々と乗り降りする通勤電車において、航空機のような手荷物検査を実施することは非現実的で、持ち込み自体を厳格に禁止することは困難だからです。

そのため鉄道会社では、ポスターやアナウンスで使用時の注意を呼び掛けるとともに、万が一の発火後の対応に重きを置いています。例えば京王電鉄では、車内で火災が発生した際に初期消火を行い、炎をすっぽりと覆って延焼を防ぐための特殊な防炎器具「ファイヤーブランケット」を、全駅および全列車に配備するなどの物理的な対策を進めています。

東急電鉄の異例の呼びかけ

禁止が難しい中で、鉄道会社の苦悩が浮き彫りになった出来事があります。

2026年6月15日、東急東横線の武蔵小杉駅においてモバイルバッテリーの発火事故が発生しました。これを受け、東急電鉄は事故後、公式Webサイトおよび公式X(旧Twitter)を通じて、「お客さまの安全確保のため、車内でのモバイルバッテリーを使用した機器の充電や、一部の車両に設置されている電源コンセントを使用したモバイルバッテリーへの充電はお控えくださいますようお願いいたします」と異例の呼びかけを行いました。

重大な事故になりかねない状況を受け、鉄道会社が使用を控えるようお願いしたことはSNS等でも大きな話題となりました。

私たち乗客に求められる注意と協力

先述のように、鉄道車内への持ち込みを完全に制限することは現状できません。しかし、満員電車で発火事故が起きれば、逃げ場のない車内では大惨事につながる恐れがあります。だからこそ、私たち乗客一人ひとりが注意を払う必要があります。

大きく膨らんだり変形したりしているもの、長年使用して劣化した古いもの、落として強い衝撃を与えてしまったものは絶対に使用しないこと。また、安全基準を満たしていない非純正品は避け、使用する際も手元の目の届く範囲で使用するといった日常的な心がけが重要です。

ほんの数年前まで、モバイルバッテリーが鉄道の運行を脅かすこれほどの社会問題になるとは、筆者自身も思っておらず驚いています。しかし、技術の進歩とともに生まれるこうした新しい問題に対し、現場の地道な対応と乗客のモラルが組み合わさることで、鉄道の安全性はさらに高まっていくはずです。

誰もが安心して電車を利用できるよう、ぜひ一人ひとりのご協力をお願いいたします。


参考:
リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果について(令和7年)(総務省消防庁)
モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて~4月24日から新たなルールを適用します~(国土交通省)
バス車内でのモバイルバッテリーの収納・使用に関するお願い(西日本ジェイアールバス)
お荷物のご案内(阪急観光バス)
京王線 ・井の頭線の全駅・全列車にファイヤーブランケットを配備します(京王電鉄)
モバイルバッテリーによる充電についてのお願い(東急電鉄)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとしても、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


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