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「数分で消えるから…」エンジン始動時のキュルキュル音を放置した結果。豪雨の高速道路で運転手を襲った“異変”

  • 2026.6.20
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「エンジンをかけたときだけキュルキュル鳴るけど、そのうち消えるから大丈夫」

そんな軽い異音を放置していませんか。実はその音、車が発する重要な故障予告かもしれません。特に梅雨時期は、ベルトの劣化が表面化しやすい季節です。

今回は、始動時のベルト鳴きを放置した結果、豪雨の高速道路で突然ハンドルが重くなり、走行継続が困難になった事例をもとに、ベルト劣化の危険性について解説します。

数か月前から続いていた「キュルキュル音」

「最近、朝エンジンをかけるとキュルキュル鳴るんですよ」

点検でこう相談されることがあります。詳しく聞いてみると、

「数分走れば消えるんです。ずっと同じなので気にしていません」

というケースが少なくありません。

エンジンルームから聞こえるキュルキュル音の多くは、補機ベルトのスリップが原因です。補機ベルトは、オルタネーター(発電機)やエアコンコンプレッサー、車種によってはパワーステアリングポンプなどを駆動しています。新品時は十分な摩擦力がありますが、経年劣化によって表面が硬化したり摩耗したりすると滑りやすくなります。また、張力が低下してもスリップが発生しやすくなります。

「ベルトが傷んでいますね。交換した方がいいですよ」

と提案しても、

「音が消えるなら次の車検でいいです」

と先送りにされることもあります。しかし、この段階ですでにベルトは劣化しており、雨の日にはさらに症状が悪化する可能性があります。

梅雨の豪雨で一気に症状が悪化

梅雨に入ると、

「雨の日だけ音が大きくなる」

という状態になることがあります。これはベルト表面に水分が付着することで摩擦力が低下し、さらにスリップしやすくなるためです。今回のケースでも、雨の日の鳴きが徐々に増えていました。それでも車は普通に走れていたため、オーナーは深刻に考えていませんでした。

ところがある日、豪雨の高速道路を走行中に異変が発生します。突然、「なんだかハンドルが重い」と感じたのです。

同時にバッテリー警告灯も点灯しました。実は、このように「ハンドルが突然重くなる」という症状が発生する仕組みは、車のパワーステアリング方式によって少し異なります。油圧式パワーステアリング車の場合、一本の補機ベルトがパワーステアリングポンプやオルタネーターなどを同時に駆動しています。そのためベルトが大きくスリップするとポンプの回転が低下し、アシスト力が急激に失われます。

オーナーが「急にハンドルが重くなった!」と感じるのは、このためです。

一方で電動パワーステアリング(EPS)車の場合は、ベルトが直接パワーステアリング機構を駆動しているわけではありません。しかし、ベルトスリップによってオルタネーターの発電量が低下すると車両電圧が下がり、EPSのアシスト性能が制限されることがあります。こちらは油圧式のように突然ではなく、徐々にアシスト量が減少するケースが多いのが特徴です。

つまり、

・油圧式は「ポンプ駆動喪失による急激な重ステ」
・EPS車は「電圧低下による段階的なアシスト低下」

という違いがあります。どちらの場合も、高速道路で発生すると非常に危険です。

ベルト鳴きは「故障予告」と考えるべき

今回の車両はサービスエリアまで何とかたどり着いたものの、その後は自走不能となりレッカー搬送となりました。

点検すると、補機ベルトは著しく摩耗しており、張力も不足していました。幸いエンジン本体への深刻な被害はありませんでしたが、もしベルトが完全に切れていた場合はさらに重大なトラブルへ発展していた可能性があります。

オーナーは後からこう話していました。

「たかがベルトの音だと思っていました」

しかし、実際には数か月前から車が異常を知らせていたのです。ベルト交換だけであれば、多くの車種で数万円程度の修理費で済むケースが一般的です。それが放置によってレッカー費用や追加修理費用まで発生すれば、結果的に大きな出費につながります。

特に注意したい判断基準は、

「雨の日に鳴きが増えるかどうか」

です。

晴れの日よりも雨の日に音が大きくなる場合、ベルトの摩耗や張力低下がかなり進行している可能性があります。「始動時だけだから大丈夫」「数分で消えるから問題ない」。そう考えて放置していると、ある日突然、大きなトラブルとして表面化するかもしれません。

ベルト鳴きは単なる不快な音ではなく、車からの重要な警告です。梅雨本番を迎える前に一度点検を受け、早めの交換を検討することが安全なカーライフにつながるでしょう。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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