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“異例中の異例”ネトフリからNHK放送へ「衝撃だった」「再放送もしてほしい」10年前の芥川賞受賞“原作”実写ドラマ

  • 2026.6.20

2016年にNetflixで配信された、第153回芥川賞を受賞した又吉直樹のベストセラー小説のドラマ化作品『火花』。多くの視聴者の心をつかんだ本作が、2017年にNHK総合にて放送され、驚きを呼んだ。SNSには「ネトフリからのNHK放送って異例中の異例」「NetflixドラマをNHK総合で観られるなんて衝撃だった」といった声が。Netflixは有料配信のプラットフォームであるからこそ、制限を取っ払い、攻めた内容の作品を送り出せるのが魅力だ。それをテレビの地上波、しかもNHKで放送されたという事実は、あまりにも画期的なことだった。それゆえ、「再放送もしてほしい」というリクエストが後を絶たないのだろう。

※以下、本文には放送内容が含まれます。

若手芸人と天才肌の先輩芸人との交流を描いたドラマ『火花』

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林遣都(C)SANKEI

2017年には、菅田将暉と桐谷健太のW主演で映画化もされた『火花』。映画は約2時間という凝縮された内容になっているが、全10話で構成されたドラマ版は、原作小説を限りなく忠実に再現していると評判を呼んだ。『第54回ギャラクシー賞』のテレビ部門で、フロンティア賞を受賞し、奨励賞にも選出されたことでも、評価が高かったことがよく分かる。主演は林遣都が務めた。

あらすじ
売れない芸人の徳永(林遣都)は、営業で行った熱海の花火大会で先輩芸人の神谷(波岡一喜)と出会う。 誰にもこびないスタイルと天才的なセンスに強くひかれた徳永は、神谷に弟子入りを懇願する。神谷が伝えた唯一の条件、それは「俺の伝記を作ってほしいねん」という言葉だった。夜ごと酒を酌み交わしつつ、「お笑い」について熱く語り合う徳永と神谷。神谷はみずからの笑いの哲学をさらけ出し、徳永はそのすべてを吸収しようとする。ばかばかしくも純粋に笑いに向き合う時間を共有する中で、2人の歯車は少しずつかみ合わなくなっていく。コンビとして少しずつ売れていく徳永と、すべてがうまくいかずもがき苦しむ神谷。 ある日神谷は借金を抱えたまま、こつ然と姿を消してしまうのだった……
出典:NHKドラマ 『火花』 放送開始のお知らせ

主人公・徳永役の林、そして先輩芸人・神谷役の波岡一喜の熱演ぶりは絶賛され、夢中でドラマを観る人が続出した。

芸人が“売れる”のは並大抵のことではない

筆者は子どもの頃からお笑いが好きで、劇場にも通っている。テレビで漫才やコントを観るのも楽しいが、ライブでしか味わえない各芸人の魅力を感じられるのがたまらない。ただ、お笑い芸人の数は物凄く多いので、まだ観たことのない人たちもたくさんいる。特に、『火花』の原作者である又吉(ピース)が所属する吉本興業は巨大な事務所で、6,000人以上の芸人がいるから、その中で“売れる”のは至難の業だと思う。ライブに客が詰めかけ、その大勢を笑わせたり、テレビに出演して人気者になったり。そういったことを“売れる”と表現するのだと思うが、そこに到達するのは並大抵のことではないだろう。

『火花』の、徳永と山下(好井まさお/元 井下好井)のコンビ“スパークス”も、神谷と大林(村田秀亮/とろサーモン)の“あほんだら”も、なかなか売れないでいる。スパークスが所属している芸能事務所は、俳優をメインとしているため、芸人の扱いに慣れていないというのが興味深い。そのため、徳永たちは仕事を得るのも一苦労で、ますます“売れる”までのハードルが高い状況にいる。

スパークスを担当する事務所の社員・緒方を染谷将太が演じており、まずこの豪華なキャスティングに引き付けられた。緒方は、厳密にはスパークスを全面的に支えるマネージャーではなく、お笑い部門を嫌々担当させられている一般社員だった。だが、スパークスの2人が、たとえ小さな仕事でも必死に食らいつき、ネタを磨き続けている姿に、心を動かされていった。“売れる”ためには、事務所(マネージャー)の支えも重要で、どんなに芸人が“理想”を追求しても、それを実現するのは非常に難しいことがよく伝わってくる。

「想像を超えていきたい」林遣都

徳永が憧れを抱いた神谷は、独自のスタイルを貫く、天才的なセンスを持っている。まさに、お笑いの“理想”を追求している芸人だが、その姿勢は受け入れられにくい。徳永にとって神谷は、弟子入りを懇願するほどの天才であっても、それが“売れる”ことには結び付かないのだ。このジレンマが、やがて徳永と神谷の間に距離を生み、終盤で神谷が選んだ“誰も思いつかない衝撃の方法”へとつながっていく。

芸人の純粋さをとことん描出したドラマ『火花』は、主演の林、波岡、そして染谷らの秀逸な体現によって、観る者の心をつかんで離さない傑作に仕上がっている。林は、本作がNHKで放送される際、以下のようなコメントを寄せている。

2016年にWEBドラマとして放送されて大きな反響をいただいて、改めてNHKでも放送されると聞きとても光栄でした。大きな話題となった又吉直樹さんの芥川賞受賞作のドラマ化に、自分が徳永として声を掛けていただけて本当にこれはチャンスでしかないなと思いました。と同時に、小説のイメージも皆さんにはあると思うのですが、その想像を超えていきたいという思いも僕にはあったんです。
出典:NHKアーカイブス/林遣都/ドラマ『火花』インタビュー(抜粋)

「想像を超えていきたい」という林の熱い想いは、見事にドラマに昇華されていると思う。

林は、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)には『べっぴんさん』と『スカーレット』に出演。さらに、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』、プレミアムドラマ『京都人の密かな愉しみ』シリーズといったNHK作品でも活躍している。2026年7月2日にNetflixで配信が開始される『ガス人間』や、TBS系 日曜劇場『VIVANT』第2シーズン(2026年7月26日放送開始/2クール連続放送)にも出演する林。これらの超大作のリリースを待ちつつ、彼の渾身の主演作である『火花』を観て、林の名演技を堪能してみてはいかがだろうか。

「胸がいっぱいになる」OKAMOTO'Sによる主題歌

ドラマ『火花』の主題歌は、OKAMOTO'Sが書き下ろした『BROTHER』。心にぐっと来る、エモーショナルなロックナンバーだ。この曲は、結成16年以上を対象とした漫才の賞レース『THE SECOND 〜漫才トーナメント〜』の、決勝戦の出囃子としても使用されている。

最後の2組が激突する“グランプリファイナル決勝戦”まで勝ち上がれた漫才師のみが、味わうことができる『BROTHER』。SNSには「火花と重なってアツすぎる」「胸がいっぱいになる」といった感想が書き込まれていた。ドラマを観る度に、この曲にしびれ、リアルな賞レースを観て、また『火花』への想いを重ね合わせる。芸人の葛藤や理想、コンビ愛を綴ったドラマ『火花』が、NHKで再放送される日が待ち遠しい。


出典:NHKアーカイブス/ドラマ『火花』
出典:NPO法人 放送批評懇談会/第54回(2016年度)ギャラクシー賞

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X:@KumikoShimizuWP

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