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現在放送中の話題ドラマを機に、“再評価”されている【NHKドラマ】「ハッとさせられる」「同じ脚本家」

  • 2026.6.29
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池田エライザ (C)SANKEI

月10ドラマ『銀河の一票』への注目が高まると共に、再評価されているNHKドラマがある。2024年2月にNHK BS・NHK-BSプレミアム4Kで放送され、2025年6月にはNHK総合でも放送された『舟を編む〜 私、辞書つくります〜』(以下、舟を編む)だ。2作品の共通点は、脚本家・蛭田直美が手がけていること。2作品を比較すると、蛭田が書くセリフの純度の高さを感じることができる。

※【ご注意ください】本記事はネタバレを含みます。

舞台を現代へ、主人公を変更、それでも評価された理由

ドラマ『舟を編む』は、2011年に発売された三浦しをんによる同名小説を原作にしたドラマ。2013年には映画化、2016年にはアニメ化もされている人気作だ。

物語の舞台は、玄武書房辞書編集部。10年以上かけて玄武書房初の中型辞書「大渡海」が作り上げられていく様子を通して、辞書作りに燃える仕事人たちの姿が描かれている。

原作小説と映画、アニメの主人公は、玄武書房に入社して3年目の馬締光也。彼が辞書編集部に配属されてからの日々と、さらにその13年後に責任者として活躍する姿が描かれている。

ドラマが特徴的なのは、舞台を2017年に移し、主人公を主任となった馬締(野田洋次郎)の部下・岸辺みどり(池田エライザ)に変更した点だ。みどりの視点から描き直すことで、物語の別の側面を描くことに成功している。

みどりは、元読者モデルでファッション雑誌編集部に所属していた人物。異動を命じられ、辞書編集部へとやってくる。

第1話時点でのみどりの口癖は「辞書なんて」。その一言だけで、みどりがどれだけ辞書に関心がなかったのかがうかがえる。辞書に関心のなかったみどりを主人公にしたことで、辞書編集の仕事を楽しんでいく姿がメインで描かれ、人の情熱に巻き込まれて自分も熱中し、社会人として成長していく尊さが原作よりも強調されている。また、時代設定を2017年からの3年間に変更したことで、紙の辞書ならではの魅力を問い直す試みや、コロナ禍にどう向き合うのかなどのオリジナル要素も追加されている。

本来、原作からの改変は歓迎されにくい。それでも、新たな物語としてドラマ『舟を編む』が受け入れられたのは、辞書編集に向き合う人々の情熱という物語の核を守りつつ、時代を現代に、主人公をみどりにしないと描けない物語をオリジナルで紡いでいったからだ。

言葉をただそこにあるものとしてニュートラルに扱う本作は、SNSの発達により、原作が出版された当時よりも言葉が武器として扱われがちになってしまった現代にこそ、描かれるべき作品だったといえる。時代背景を踏まえれば、辞書編集に関わるまで言葉を大切にできなかったみどりが主人公になるのも必然だったのかもしれない。

だからこそ、ドラマを支える蛭田直美の脚本にも、言葉への誠実な眼差しが宿っている。

蛭田直美の脚本から感じる言葉との向き合い

『舟を編む』『銀河の一票』の2作品から感じるのは、脚本家の蛭田が言葉と丁寧に向き合っていることだ。

『舟を編む』の第1話では、みどりの口癖であった「なんて」という副詞がメインに扱われる。みどりは、自覚がなく「なんて」という言葉を使っていた。辞書編集部では「辞書なんて」、カメラマンを目指す恋人には「カメラなんて」。「なんて」を辞書で引き、軽視という意味があることを知って、無自覚のうちにさまざまなことを軽視するような発言をしていたことに、みどりはやっと気が付く。

一方、「なんて」という副詞には、感動という意味もある。最終話で、みどりは辞書の監修者である松本(柴田恭兵)から「辞書編纂の日々、とくに岸辺さん、あなたがきてからの3年間はなんて楽しいものだったでしょう」と言葉をかけられる。軽視の意味で「なんて」を使っていたみどりに、感謝の意を込めた「なんて」が返ってきた。「なんて」を通して、みどりの辞書への対峙の仕方の変化が見えるのだ。

この「なんて」にまつわる展開もドラマのオリジナル。『舟を編む』ならではのエピソードでありながら、蛭田自身が言葉を大切に扱っているからこそのアイデアといえるだろう。

そのほか「上手くなくていいです、それでも言葉にしてください。今あなたのなかに灯っているのは、あなたが言葉にしてくれないと消えてしまう光なんです」など、本作が持つ言葉との向き合いが象徴されるセリフでありながら、人生の宝物にしておきたくなるようなセリフが散りばめられている。このセリフの威力は、蛭田自身が言葉の力を信じている証拠だろう。

SNSでは、「セリフにハッとさせられる」「珠玉のセリフの数々」など、一つひとつの言葉に感銘を受けている人の声が溢れている。そして、『銀河の一票』に対して、『舟を編む』と比較しながら、「同じ脚本家なだけある」「どちらもセリフがスッと入ってくる」など、蛭田の書くセリフの強度を改めて評価している人も多い。

『銀河の一票』のセリフの純度の高さが好きだという方は、ぜひ『舟を編む』でも言葉の力を味わってほしい。


出典:NHK プレミアムドラマ「舟を編む~ 私、辞書つくります~」NHKアーカイブス より

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202

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