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現在放送中のNHK夜ドラも執筆する“若手脚本家”の新境地 平成のドラマとは違う令和型“大人の学園ドラマ”が完結

  • 2026.6.20

6月9日、『時すでにおスシ!?』が最終回を迎えた。 本作は子育てを終えた50歳の女性が、鮨アカデミーに入学し、自分の人生と向き合っていく物語だが、大人の青春ドラマとして、とても見応えがあった。

※以下本文には放送内容が含まれます。

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火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』最終話(C)TBS

待山みなと(永作博美)は息子の渚(中沢元紀)を1人で懸命に育ててきた。
渚が就職して家を出たことで、子育てを卒業したが、50歳にして自分の人生と向き合うことになり、何をしていいのかわからなかった。

そんなもやもやとした気持ちを抱えて日々を過ごしていた彼女は、友人の磯田泉美(有働由美子)からパンフレットを見せられたことがきっかけで、3か月で鮨職人になれるという「よこた鮨アカデミー」に入学することになる。
みなとは、講師の大江戸海弥(松山ケンイチ)の指導を受けて、鮨の握り方や職人としての作法を学んでいく。
いっしょに学ぶ同級生は、大手コンサルティング企業で働いていたが、鮨職人にキャリアチェンジを図るために学びにきた柿木胡桃(ファーストサマーウイカ)、仕事をリタイヤした後、趣味として鮨を習いにきた老紳士・立石船男(佐野史郎)、鮨職人を目指す寡黙な青年・森蒼斗(山時聡真)、日本旅行した時に鮨のおいしさに感動して習いにきたフランス人留学生のセザール(Jua)と、年齢も境遇もバラバラ。

鮨アカデミーの生徒たちと学ぶ時間は、みなとにとって新鮮で、学生時代に戻ったような楽しさがあった。

一方、講師の大江戸は昔ながらの寡黙な鮨職人。本来なら弟子入りして何年もかけて習得する技術を3か月で学ぶことに対して疑問を抱きながらも、生徒たちを鮨職人に育てるため、基礎練習を重視する厳しい指導をおこなっていた。 その結果、他のクラスと比べて授業の進行が遅れ、タイパを重視する柿木と衝突してしまう。

令和ならではの大人の青春ドラマ

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火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』最終話(C)TBS

平成のドラマなら、厳しい教え方をする大江戸に生徒たちが反発しながらも、やがて彼のことを尊敬し鮨職人として成長していくといった学園ドラマ風の展開となるのだろうが、令和の現代において、それは通用しない。

基礎練習から「ネタの握り」を教える授業に進むために行われた「アジの一品料理」で自分の味を表現するという試験で、自分だけ不合格だったことに腹を立てた柿木は、かつて大江戸が店主だった鮨屋が、弟子へのパワハラ疑惑で閉店になったというネットニュースを本人に突き付け、そのことが原因で、彼は出勤停止となってしまう。

同じ失敗はしないと決めて講師となった大江戸だが、昔ながらの鮨職人としての態度はそのままで、威圧的な振る舞いを繰り返してしまう。
つまり、大江戸もまた、「新しい人生をどう生きるか」について迷っていたのだが、みなとと出会ったことで、少しずつ変わっていく。

鮨アカデミーでは講師と生徒という関係にある大江戸とみなとが、プライベートでは悩みを相談し合える仲間という関係の二重性が、本作の面白さだ。
それはみなとと他の生徒の関係にも当てはまる。 ある場面では教える側だった人が、別の場面では、教わる側に変わるという、年齢や境遇を超えた関係が劇中では繰り返し描かれるのだが、お互いを尊敬し学び合う人間関係は、とても風通しがよく、観ていて心地良い。

中学や高校が舞台の学園ドラマだと教師と生徒の関係は、年齢や人生経験の差が存在するため、教師の側が絶対的な存在として描かれがちだ。
だが『時すでにおスシ!?』では、講師の大江戸もまた、未熟で迷っている存在として描かれており、プライベートではみなと達と対等な人間関係を築いている。
生徒の世代がバラバラで、年齢によってこれからの人生に対する考え方が違うということが丁寧に描かれていたことも心地よく、大人の学園ドラマとして最後まで見応えがある作品だった。

新進気鋭の若手脚本家・兵藤るりの新境地

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火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』最終話(C)TBS

本作の脚本を担当した兵藤るりは、新進気鋭の若手脚本家で、2024年に執筆した連続ドラマ『マイダイアリー』で第43回向田邦子賞を受賞している。
『わたしの一番最悪なともだち』や『マイダイアリー』といった連続ドラマで、大学生を中心とした若者の物語を書いてきた兵藤は、真面目で一生懸命だが、繊細で傷つきやすい令和の若者の心情描写が高く評価されてきた。

対して今回の『時すでにおスシ!?』は、50歳の女性が主人公で、登場人物の年齢層も境遇もバラバラだったが、どの人物の心情も丁寧に描かれており、書くことができる登場人物の幅が大きく広がったと言える。
今後、テレビドラマの脚本を書いていく上で、本作が大きなステップとなったことは間違いないだろう。

兵藤は現在、NHK夜ドラ『ミッドナイトタクシー』という新たな連続ドラマを手掛けている。本作は29歳のタクシー運転手の女性が主人公のドラマで、タクシーの乗客たちの人間模様を描いた不思議な群像劇となっている。
本作もまたこれまでとは違う幅広い年齢の人々が登場するドラマだが、若者たちの物語を書いていた兵藤が『時すでにおスシ!?』で大人のドラマを書いたことによって、作風にどのような変化が生まれるのか、今後が楽しみである。


TBS系 火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』毎週火曜よる10:00〜

ライター:成馬零一
76 年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に 『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレ ビドラマを更新する 6 人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』 (PLANETS)がある。

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