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紙で指を切った40代男性。絆創膏を貼って放置→ある夜、激痛と高熱で救急搬送され…男性を待ち受けていた“想定外の悲劇”

  • 2026.6.28
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。あらゆる病気をお持ちの方に日々対応し、麻酔科医としてまた集中治療の現場で緊急手術に関わる松岡です。

今回は、日常の小さな傷を放置したことで、腕を失うことになってしまった男性のお話です。

「紙で少し深く切れてしまったけど、問題ないだろう。絆創膏でも貼っておこう」。そう判断して、仕事に追われる日々を過ごしていたCさん(40代男性)。

しかしある夜、腕全体を襲う激痛と高熱で救急搬送され、彼を待っていたのは「命を救うための腕の切断」という究極の選択でした。現在は失った腕の幻肢痛に苦しみ、義手を使った不自由な生活の中で「あの時、すぐに病院へ行っていれば」と悔やむ日々を送っています。

なぜ、日常の取るに足らないと思った傷がこれほどの悲劇を招いたのでしょうか。

小さな傷口から始まる「見えない組織破壊」の連鎖

なぜ「ただの切り傷」が数時間で腕を失う大惨事になるのでしょうか。これは「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(いわゆる人食いバクテリア感染症)」という、致死率が30〜40%にも達する恐ろしい感染症のためです。

【感染から組織破壊へのフロー】

  • 侵入:喉の風邪などを引き起こすありふれた菌が、紙で切ったような小さな傷口、足のひび割れなどから皮膚の奥深くへ侵入します。
  • 増殖と毒素:菌は筋膜などの通常は無菌的な部位に到達し、強力な毒素を猛烈な勢いで放出します。
  • 壊死と劇症化:毒素が筋肉や脂肪組織を溶かしながら急激に広がります(壊死性筋膜炎)。早い場合には痛みが出てから数時間程度で手足が壊死し、多臓器不全へと進行するケースもあります。

「ただの化膿」と「危険な感染症」の境界線

「紙で切ったくらいで病院に行くなんて大げさだ」「市販の薬を塗っておけば問題ない」。そう考え、日常の小さなケガを「いつものこと」とやり過ごそうとするのは人間としてごく自然な心理です。忙しい日々の中で、つい自分のからだを後回しにしてしまうことは誰にでも心当たりがあることだと思います。

しかし、今回のケースを通してお伝えしたい「危険な境界線」があります。この病気の原因となる菌は日常のどこにでも存在しており、基礎疾患のある方はもちろん、健康な人であっても突然発症する可能性があるのです。

恐ろしいのは、「ただの化膿」だと思い込んでいる間に、皮膚の奥深くで組織が急速に破壊されていて、これを放置してしまうことです。初期段階では表面的な症状がはっきりしないことも多いため、いよいよ痛みに耐えきれなくなった時には、腕の切断や命の危機に瀕していることも少なくないのです。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

重症化する前に、以下のサインがある場合は注意が必要です。

1. 傷や腫れの程度に見合わない「異常な激痛」

見た目の赤みや腫れがまだはっきり現れる前から、傷の程度とは釣り合わない強い痛みが先行して現れることがあります。

2. 急激に広がる赤みと腫れ

発症後、数時間〜24時間という非常に短い時間で多臓器不全が完結するほどの進行スピードがこの病気の特徴です。赤みや腫れがみるみる拡大していく場合は非常に危険なSOSです。

3. 「全身のだるさ」や「血圧低下」を伴う

局所の問題にとどまらず、菌の毒素が全身に回り始め、ショック状態に陥りかけている極めて緊急性の高いサインです。

急な激痛や異常な腫れは、迷わず救急外来へ

「たかが切り傷で救急車を呼ぶなんて」という思いや、周りに迷惑をかけまいと痛みを我慢してしまうお気持ちは痛いほどよくわかります。しかし、劇症型の感染症は、時間単位での早期の抗菌薬投与、ときには手術が命と手足を救う唯一の鍵となります。「小さな傷でも、異常な痛みや急激な腫れ」に襲われたら、自己判断で我慢せず、迷わず救急外来を受診してください(または♯7119等の救急電話相談を利用してください)。

また、感染の初期段階においては、今回の切り傷のような感染の入り口が見当たらないケースも50%程度あるといわれています。思い当たるような傷がなくとも強い腫れや痛みを感じる時には注意が必要というのもこの病気の特徴なのです。稀な病気ではありますが、いつ誰にでも起こりうるというのがこわいところです。だからこそ、この病気があることを知っておいて、受診のタイミングを逃さない意識をもつことから始めましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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