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「強烈に弾けるコミカルなイケメン俳優」じゃない。俳優→“映画プロデューサー”へ進化した実力派とは

  • 2026.7.5
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2025年9月、カルティエ銀座4丁目ブティックオープニングイベントに現れた賀来賢人(C)SANKEI

俳優の任され方は、年を追うごとに収束していくのが普通だ。当たり役が立てば似た色の依頼が重なり、立ち位置が定まると芝居の振れ幅もそこに落ち着く。賀来賢人は逆を行く。

『今日から俺は!!』で爆発したコメディにはじまり、画面の中に立つ仕事と画面そのものを作る仕事まで。芸能一族の整った顔立ちと長身を備えながら、その顔を毎回違う回路で着替えてみせる。賀来賢人の任され方は、両端を抱えたまま広がり続けてきた。

朝ドラの寡黙な兄で注目される

賀来のキャリアでまず1つ挙げたいのが、土の匂いがする農村の長男だ。NHK連続テレビ小説『花子とアン』(2014)。ヒロイン花の兄・安東吉太郎を演じている。山梨の貧しい農家を継ぐべき長男で、家族と土地の重みを一身に背負った寡黙な人物だ。

賀来の整った顔立ちと長身は、本来であれば朝の画面で一番映える材料に見える。ところがこの役で賀来は、その材料を全部抑え込んだ。背を丸めて土仕事の身体に降り、口数を削り、視線の置きどころを低くした。華のある血筋の青年が、家の重さに押し殺された農村の長男として、確かにそこに立っていた。

朝ドラの兄役は本来、地味で目立たない持ち場だ。賀来はここでわざと派手さを脱ぎ、自分の見栄えを役のために殺せる俳優だと、ここで証明した。整った顔の上に違う人物をすっぽり被せてみせる作法は、出発点で完成していたのだ。

コメディ主演で全国の画面を塗り替えた

そこから一気に振り切ったのが、金髪リーゼントの不良コメディだった。日本テレビ系『今日から俺は!!』(2018)。三橋貴志役で主演を任され、福田雄一監督のもと、金髪リーゼントで暴れ回るバカ高校生を、シリアスとナンセンスの境目で全力で演じきった。

朝ドラで土仕事の兄を演じていた俳優が、リーゼントを立てて全国の画面を爆笑で塗り替える。同じ身体から、まったく別の周波数の人物が引き出された。コメディは引き算の芝居だとよく言われるが、賀来の三橋は引き算と全力投球を同時にこなす芸当で、ドラマを全国規模のヒットに押し上げた。この主演で第99回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞を受けている。

朝ドラで派手さを殺せる俳優が、コメディで派手さを全開にすれば爆発する。賀来は自分の素材を抑えるのも振り切るのも、どちらの操作も自在に持っていた。コメディで世間に通った瞬間は、賀来の任され方が一段大きくなった転機だった。

日曜劇場で硬派の側へ振れる

コメディで広がった任され方を、賀来は正反対の重さで上書きしてみせる。TBS系日曜劇場『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(2021)。演じたのは厚労省の医系技官・音羽尚だ。

走る緊急救命室を率いる主役の対岸に立ち、官僚の論理で現場を縛り、やがて現場の医療と志を共有していく重要な役どころで、白衣でなくスーツの皺ひとつ崩さない硬質な佇まいを通した。リーゼントで暴れていた俳優が、日曜劇場のスーツ姿で霞が関の冷たい光を背負っている。同じ俳優の出演歴だとは、並べて見るまで気づかない。

ここで賀来が示したのは、この広がりそれ自体ではない。コメディで通った主演俳優が、その人気で稼げる似た役を引き受けるのではなく、むしろ最も遠い体温の硬派へ進んで身体を運んだという、選択の意志だ。賀来の任され方は、当てに行く方向ではなく、自分の引き出しを増やす方向に毎回ベクトルが向いている。

日曜劇場の音羽尚は、コメディと硬派の両端を一人の俳優の中に常設したという宣言だったのだ。

演じる側から、つくる側へも立つ

賀来が同世代の俳優たちと一線を画したのは、ここから先の動き方だった。役の幅だけでなく、立場の幅まで自分で広げに行く。Netflix『忍びの家 House of Ninjas』(2024)。主演の俵晴を演じただけでなく、原案、そして共同エグゼクティブプロデューサーとしてもクレジットに名を連ねている。

現代に生きる忍び一族の次男という設定そのものを賀来自身が持ち込み、企画開発から世界配信の座組みまで内側に立った。作品は非英語部門でグローバルTOP10の首位に立ち、日本人俳優が主導した企画が世界の家庭の画面に並んだ。

同じ年、賀来は映画監督デイヴ・ボイルと共同で映像製作会社SIGNAL181を立ち上げる。そして映画『Never After Dark/ネバーアフターダーク』(2026)に主演+プロデューサーとして参加し、SXSWミッドナイター部門観客賞を受けた。俳優として任される側に居続けながら、同じ手で企画と製作の側にも回る。

役を引き受けるだけの俳優なら、コメディと硬派を行き来する一流で完結する話だ。賀来はそこから、誰がどんな企画を立て、どんな海外配給に乗せ、どんな作家と組むかという業界の地図まで自分の手で書き換えに行った。役の幅と立場の幅を、賀来は両手に同時に持っているのだ。

主演級の真横で、最初の硬派へ戻る

2026年8月、賀来はまたあの硬派の役に戻ってくる。シリーズ最終章となる映画『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜CAPITAL CRISIS』。第3章で書いた厚労省の医系技官・音羽を、シリーズの大団円で再び背負う。

日本最大級の人気医療ドラマの最終章で、主演級の真横に医系技官として立ち、コメディで通った主演俳優が、硬派の頂点でシリーズを締める側に回る。朝ドラの寡黙な兄、コメディの金髪リーゼント、日曜劇場の冷たい官僚、世界配信の忍び、SXSWのスクリーン、そして再び医系技官。並べて共通点を探しても、見つかるのは賀来賢人という一人の俳優の顔だけだ。

役の幅も、立場の幅も、年を追うごとに閉じずに広がり続けている。次に任される現場が地上波になるか、配信になるか、それともSIGNAL181の自社製作になるか。どこに立っても、賀来賢人がそこの体温を一身に背負ってみせることだけは、もう確かなのだ。


※記事は執筆時点の情報です

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