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13年前、15kg増量→パンツを被った“変態ヒーロー”。NHK大河で100kgまで増量した「ストイック俳優」とは

  • 2026.7.5
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2026年3月、ドラマ『リブート』のファンイベントに参加した鈴木亮平(C)SANKEI

俳優の主演作を語るとき、多くは演技論や役柄の掘り下げから入る。表情、声、間合い。役者の引き出しの中身を読む。鈴木亮平の主演を語るとき、入口は少し違う。この人の主演は、いつも身体から始まるといっていいかもしれない。

15kgの増量、減量、30kgの増量、原作キャラクターの体格。役の体型に合わせて、身体そのものをまるごと作り換えてから現場に立つ。脚本を読み込む準備量と同じ重さで、自分の輪郭を作り替える準備量がある。それが鈴木亮平という主演俳優の正体だ。

身体ごと取りに行く出発点

2013年、映画『HK 変態仮面』色丞狂介役で、鈴木亮平は主演をつとめた。あんど慶周の漫画を実写化したアクションコメディで、ヒーローでありながら奇抜な姿で戦うという、設定そのものが冗談のような主人公だ。

笑いに振り切れる題材である。役者によっては、コメディなのだから身体は雰囲気で構わない、表情と所作で押せばいいと判断する場面だろう。鈴木は逆に行った。鍛えあげ、15kgの増量で身体を作り変え、画面の中心で笑える肉体まで自分で用意してから立った。コメディの説得力を顔と勢いに任せず、自分の身体に持たせにいった主演の出発点である。

ここで定まったのは、ひとつの順序だ。引き受けた役の体型に、こちらから歩み寄る。役の側に自分を寄せていく。鈴木亮平の主演は最初からこの順序で動いている。

減量と増量を同じ年に往復する

寄せる仕事の振れ幅が一気に広がったのが2015年だ。春から夏にかけて放送されたTBS系『天皇の料理番』で、鈴木は秋山周太郎を演じた。佐藤健演じる主人公の兄で、病弱で早世する役である。

前作で増やしたばかりの体重を、今度は逆方向に削って臨んだ。同じ年の秋に公開された映画『俺物語!!』では、河原和音原作・アルコ作画の少女漫画の主人公・剛田猛男を演じる。高校生離れの巨体そのものが原作のアイコンになっている男だ。鈴木は30kgの増量でこの剛田に身体を合わせた。

たった半年の間に、減量で病弱の兄を立ち上げ、大幅増量で硬派な巨漢に化ける。普通は、主演を張れる体型をひとつ作ったら、しばらくそれを資産にする。鈴木はそうしない。寄せる方向が往復で振り切れるところに、この俳優の主演の論理が立ち上がる。身体は完成品ではなく、毎回の役のために組み直す素材なのだ。

増量した身体のまま大河を走り切る

2018年、NHK大河ドラマ『西郷どん』で、鈴木は西郷隆盛役の主演を任された。西郷の体格に寄せるため、約100kgまで増量をした。大河の主演は1年間走り続ける仕事だ。短期の撮影でなく、1年間にわたって増量した体型を保ったまま、画面の中心に立ち続ける。

ここで「身体に寄せる」が一段、上に押し上がった。1回の撮影期間だけ作って終わるのではなく、長期にわたって役の輪郭を維持できる主演がいる。これは単なる役作りの逸話ではなく、現場側がこの俳優に何を期待しているかの話だ。

半年から1年単位で身体ごと役にいられる俳優を、日本の現場が大河の中心に置いた。鈴木亮平はこの1作で、そう呼ばれる存在になった。

所作まで原作の像に合わせる

2024年、Netflix映画『シティーハンター』冴羽獠役。北条司の漫画を本格的に実写化したNetflix作品で、鈴木は世界配信のグローバル主演に立った。冴羽獠は、世代を越えて世界中の読者が体つきと所作の像を強く焼き付けているキャラクターである。

期待値の中身が「鈴木亮平の冴羽獠」ではなく「冴羽獠そのもの」になっている役だ。鈴木は筋肉を作り直し、立ち方、銃の構え方、振り向く角度まで、原作の像に合わせて自分を寄せた。

身体に加えて、所作・佇まいまで設計の対象に入る。役のために身体を組み直す仕事が、Netflix発で世界に届くスクリーンの規模で機能している。日本のテレビ・映画の現場が育ててきた「身体に寄せる」が、グローバル配信の主演の前提条件として通用することを、この1作が証明した格好だ。

作り換える側と使い分ける側

2026年、鈴木亮平の主演が二本並ぶ。1月期のTBS系日曜劇場『リブート』で、鈴木は早瀬陸/儀堂歩の1人2役を演じた。同じ顔の二人の人物を、所作と声の温度で区別する仕事だ。2026年公開の映画『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜CAPITAL CRISIS』では、2021年からTBS系日曜劇場で演じ続けてきた喜多見幸太を、シリーズ最終章で再び主演で閉じる。長期にわたって同じ役の身体を保ち続けた仕事の、現時点の到達点である。

身体を作り換えてきた俳優が、いま「作り換える側」と「使い分ける側」の両軸を、同じ年に並べて見せている。『エゴイスト』で第47回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、『孤狼の血 LEVEL2』で第45回最優秀助演男優賞も受けているが賞はいつも、身体ごと寄せた主演の後ろから、それを認める形でついてきた。準備量で主演をやる俳優が、まだ準備量を惜しまずに次の役へ向かっている。次にどの体型で現れるか、見届けたくなる主演俳優なのだ。


※記事は執筆時点の情報です

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