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8年前、17歳で“血塗られた復讐劇”を生き抜いた少女。数々の賞を獲得→NHKドラマで主演を張る「若手女優」とは

  • 2026.6.27
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2018年4月、映画『ミスミソウ』ヒット御礼舞台挨拶に出席した山田杏奈(C)SANKEI

俳優の魅力は、顔立ちや声の質から語られがちだ。とりわけ20代前半の若手女優にはその傾向が強い。

山田杏奈は、そこが違う。この人は役のたびに身体を作り直す。方言、所作、文化、現場の知識。役の中身を頭で読み解くのではなく、自分の身体で取りに行く。だからこの人が出ている画面には、いつも「いま、ここで初めて立ち上がった人物」の手触りがある。

身体ごと取りに行く若手。それが、山田杏奈という俳優の現在地だ。

出発点ですでに体当たりだった

10代の山田は、優しい役で売れる道もあった。だが映画初主演で背負ったのは『ミスミソウ』(2018)だった。

押切蓮介原作のいじめ復讐サスペンスである。雪深い田舎の中学校、いじめの末に家族を失った少女が、転校生として戻ってきて報復に走る。雪山の長期ロケ、流血と暴力。優しい入り口ではない。それを17歳の山田は単独主演で背負った。

同じ年にテレビ朝日系で連ドラ初主演となる『幸色のワンルーム』も走らせている。出発点で、すでに「身体ごと入る」働き方ができていた。後年、何度も繰り返される流儀の原型がここにある。

方言と土地ごと引き受けた『山女』

身体ごと取りに行くやり方が、評価のかたちで返ってきたのが2023年に主演をつとめた映画『山女』だ。

舞台は18世紀後半、東北の凶作の村。永瀬正敏、森山未來と並ぶ全編遠野弁の芝居である。森のなかの長期ロケで、村に根を張った少女・凛をまるごと立ち上げた。第35回東京国際映画祭コンペティション部門への出品を経て、第15回TAMA映画賞 最優秀新進女優賞を受賞している。

前年、NHK BS『テレビ版 山女』にも出演。映画版に先立ち、テレビ版で凛を演じ込み、翌年の劇場版に向けて土地と方言を身体に積み直して臨んでいる。役のために身体を作り直す時間を、現場のスケジュールが許す限り取りに行く。この巡り方そのものが、すでにこの人の働き方を物語っている。

アイヌの少女に文化と所作で化ける

文化ごと身体に入れに行った象徴が、2024年の映画『ゴールデンカムイ』のアシㇼパ役だ。

クランクインの3か月前から、走法・所作・乗馬・弓の稽古を重ねている。アイヌ文化研究者の中川裕と、アイヌ料理人・木彫家の秋辺デボの監修のもと、アイヌ語・所作、オンカミと呼ばれる礼拝の身振りまで身体に通した。衣装は、ひとつひとつ手縫いの一点ものだ。映画は当たり、WOWOWの連続ドラマ、最新作の劇場版『網走監獄襲撃編』へと続いている。

同年の藤井道人監督『正体』では、逃亡者をかくまう若い女性・酒井舞を演じて、第48回日本アカデミー賞 新人俳優賞(『ゴールデンカムイ』『正体』が対象)と優秀助演女優賞(『正体』)を併せて受賞した。

賞は積み上げた働き方を可視化したに過ぎない。賞の前後で山田が変わったわけではない。役のたびに身体を入れ直してきた数年が、賞というかたちで公認された、というのが正確だ。

知識を現場ごと引き入れる

身体は入れ替えなくとも、現場の知識を身体に通す仕事がある。2025年のNHK総合 土曜ドラマ『リラの花咲くけものみち』で山田が演じたのは、元ひきこもりの獣医学生・岸本聡里だ。藤岡陽子の同名小説が原作で、「伴侶動物」と呼ばれるペットの臨床現場が描かれる。診察、処置、別れ。撮影の側で動物医療の知識を引き入れなければ、画面の手つきは嘘になる。

地上波の単独主演と、日本アカデミー賞の新人俳優賞と優秀助演女優賞の同時受賞が並走した2025年は、山田にとって主演と評価が同じ年に並んだ時間として記録される。だが、年表で並べて終わる種類の年ではない。獣医学生を演じるために現場の知識を身体に通した、ひとつの「取りに行く」がまた一段重なった年として読みたい。

大動物の現場、もっとも重い臨床の側へ

2026年夏、NHKドラマ『リラの花咲くけものみち2』が放送される。岸本聡里役・単独主演での続投だ。シーズン2の舞台は、伴侶動物から大動物へ移る。獣医として、特定家畜伝染病が発生したときの殺処分の現場に立つ。生き物の命を、現場の手で扱う側の最も重い局面である。

『ミスミソウ』の雪山から、遠野の村、アイヌの大地、伴侶動物の診察室を経て、いま大動物の現場へ。山田の「身体ごと取りに行く」は、もっとも重い臨床の側に着地している。

次の章でこの人がどの現場の身体を取りに行くのか。それを見届けることこそが、いまもっとも面白い若手の一人を追うということなのだ。


※記事は執筆時点の情報です

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