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NHK朝ドラに引っ張りだこの「好青年俳優」二世の枠を超え大役を担う「誠実なる名優」とは

  • 2026.6.23
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2014年5月、プロ野球交流戦「西武対ヤクルト」で始球式を務めた工藤阿須加(C)SANKEI

好青年。工藤阿須加と聞いて、まず思い浮かぶのはこの言葉だろう。実直で、明るく、信頼できる青年。NHKの朝ドラに何度も呼ばれてきたのも、たぶんこの印象が大きい。

ただ、最近この俳優の仕事を続けて観ていると、好青年だけでは収まらない手つきがいくつも見えてくる。

顔と目つきを二段で切り替える芝居。身体の側から役を組み立てる流儀。受け継いだものを次世代に手渡そうとする橋渡し役。別々に育ってきた三つの技が、2026年7月、復活するドラマ『GTO』の宮澤龍之介役で、たった一人の役の中に集まる。

穏やかな顔のまま、目つきだけが入れ替わる

工藤の芝居でまず効くのは、顔と目つきを二段で切り替える技だ。代表作は2017年のフジテレビ系『明日の約束』。井上真央演じる藍沢日向の恋人・本庄和彦を演じた。序盤は、誰もが安心して観られる好青年である。ところが物語が進むと、その下に隠れていた別の顔が、ふっと出てくる。

日向が親への不満を漏らした瞬間、本庄は突然激高して相手を遮る。穏やかな表情の輪郭は崩さないまま、目つきだけが鋭く力強く入れ替わる。派手な豹変ではない。同じ顔のまま、内側の温度だけを入れ替える。だから怖い。

好印象の容器に、屈折を仕込む。これは案外できる人がいない。たいていの俳優は、悪い顔を作るときに顔ごと作り替えてしまう。工藤は、好青年の輪郭を残したまま裏を覗かせた。ひっくり返すには、まず本物の好印象が要る。工藤の場合、最初の好印象が本人にちゃんと宿っている。だから裏返したときに刺さるのだ。

身体の側から、役を組み立てる

工藤にはもう一つ、身体のほうから役へ入っていく流儀がある。その原型が、2014年のTBS系日曜劇場『ルーズヴェルト・ゲーム』だ。演じた沖原は、高校時代の挫折で野球を封印していた青島製作所の契約社員。社内野球大会で153キロを投げて才能が発覚し、社会人野球部の主軸投手として立ち上がる役だ。

工藤本人は野球未経験である。それでも父で元プロ野球選手・工藤公康に、投球フォームの体重移動や脱力を一から仕込まれた。投手の身体を先に手に入れて、その身体ごと役の内側へ入っていった。

この流儀が極まったのが、映画『ゴールデンカムイ』シリーズの月島基だ。帝国陸軍北海道第七師団の軍曹だ。工藤の地声は、緊張すると上擦りやすい側にあるという。月島はそれと真逆の、重く据えた声を要する。工藤は外形から声を組み立て直し、目線も伏せ気味にして、軍人の陰影を身体に宿らせた。

感情を内側から滲ませるのではない。声の重さ、目の伏せ方、佇まいの角度。外形を先に整えて、そこへ役を流し込む。父が一生、身体で勝負した人だった。山梨で畑を借り、年間15品目ほどの野菜を育てているというのも、土を相手に身体で仕事するという意味で地続きだ。月島の所作が説得力を持つのは、たぶんそういう人の身体だからだ。

受け継ぎ、手渡そうとした俳優

三つめは、先輩から受け継いだものを次世代に手渡そうとする位置に立つ役どころだ。

2021年のフジテレビ系『教場II』。宮坂定を演じた。宮坂は、前作『教場』で第198期風間教場の訓練生だった青年である。『教場II』では神奈川県警の所轄で交番勤務をしながら、第200期の仮入校期間中の指導員として現場に立つ。入校式で風間(木村拓哉)と再会し、短く言葉を交わす。

橋渡しの位置にいた。198期で風間から受け継いだものを、200期の新人に手渡そうとする側に回っていた。ところが、宮坂は前編の終盤で殉職する。仮入校中の200期生・漆原に自分の過去を重ねた矢先、橋渡しの仕事を終える前に、突然消えていく。

受け継いだものを次に手渡そうとした男が、手渡しきれずに退場する。物語のもっとも重い位置を、工藤は引き受けた。派手な見せ場ではない。けれど、上の世代から下の世代へと何かが受け渡されていく連鎖を、宮坂という一点で支え、そこで消えなければならない。それを観た人の胸に残せる俳優は、案外少ない。

三つが、一人の役で出会う

2026年7月、フジテレビ系のドラマ『GTO』が帰ってくる。工藤が演じる宮澤龍之介は、かつての鬼塚の教え子役。学生時代、型破りな鬼塚の指導を真正面から受けてきた生徒の一人で、いまは私立誠進学園の運営に関わる企業から出向した職員として、教師となった鬼塚の前にふたたび現れる。誰よりも鬼塚の本質を理解している人物として、50代となった鬼塚の現在地を映し出す重要な役どころだ。

この設定に、工藤の三つが全部効く。教え子だった青年が、出向職員として戻ってくる。穏やかな顔の下に過去や立場の含みを潜ませる二段切り替えがそのまま使える。学園運営に関わる企業から派遣された職員という外形を、身体から組み立てる流儀がそのまま支える。

そして何より、かつて鬼塚から受け継いだものを、いま学園運営という別の位置から、もう一度この男に手渡し直そうとする橋渡し役。『教場II』の宮坂で背負った、受け継いで手渡す位置の重みが、ここで本領を発揮する。

別々に育ってきた三つの技が、宮澤龍之介という一人の人物で出会う。工藤阿須加にしか任せられない、という見立ては、誇張ではない。

同じ時期、工藤は2026年度後期のNHK連続テレビ小説『ブラッサム』で島村辰彦も演じる。広島の師範学校を出た岩国の尋常小学校教師だ。教える側と、かつて教わって戻ってきた側。立場の異なる二つの役をほぼ同時に引き受けられるのも、三つの技を備えた俳優だからだ。

工藤は派手な見せ方ではなく、役を内側から確かに立たせる手つきで歩いてきた。鬼塚の今を、その手つきがどんな宮澤として立ち上げるのか。ドラマ『GTO』の画面で、見届けたい。


※記事は執筆時点の情報です

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