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男性の脳も「父親になると再配線」されると判明

  • 2026.5.26
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

赤ちゃんが生まれると、生活は一変します。

夜泣きに起こされ、泣き声に耳を澄ませ、ミルクやおむつのタイミングを気にする毎日が始まります。

では、その変化は生活習慣だけでなく、父親の「脳」そのものにも起きているのでしょうか。

母親の脳は、妊娠や出産を通じて大きく変化することが知られています。

しかし父親は、妊娠そのものを経験するわけではありません。

そのため、男性の脳が父親になることでどのように変わるのかは、これまで十分に分かっていませんでした。

ドイツのアーヘン工科大学(RWTH Aachen University)などの研究チームは、父親になった男性25人の脳を、出産直後から産後24週まで追跡。

その結果、父親の脳では、出産後の数週間で灰白質の体積や脳内ネットワークが大きく変化していることが示されました。

研究成果は2026年5月14日付で学術誌『Translational Psychiatry』に掲載されています。

目次

  • 父親の脳は、産後すぐに大きく変わり始める
  • 愛着や警戒心に関わる脳ネットワークも変化していた

父親の脳は、産後すぐに大きく変わり始める

研究チームは、パートナーの出産後1〜6日以内に父親たちを募集し、MRIによって脳の変化を調べました。

測定は、産後1週、3週、6週、9週、12週、24週の合計6回行われています。

調べられたのは、脳の構造を示す灰白質体積と、脳の各領域がどのように連携しているかを示す機能的結合です。

その結果、最も大きな変化は産後最初の6週間に見られました。

父親の脳では、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉など、広い範囲で灰白質体積の減少が確認されたのです。

「脳の体積が減る」と聞くと、不安に感じるかもしれません。

しかし、これは単純に脳が衰えているという意味ではありません。

脳では、新しい環境に適応するために、不要になった神経のつながりを整理し、必要な経路を効率化することがあります。

ちょうど、散らかった部屋を片づけて、必要な道具をすぐ取り出せるようにするようなものです。

父親になった男性の脳でも、赤ちゃんの泣き声や表情、世話のタイミングに素早く反応するため、神経回路の「再配線」が進んでいる可能性があります。

興味深いことに、灰白質の変化は一方向ではありませんでした。

産後12週以降には、一部の領域で体積の増加も見られました。

たとえば左前部帯状皮質など、注意の切り替えや課題の予測に関わる領域で変化が確認されています。

これは、赤ちゃんの世話という新しい課題に合わせて、父親の脳が段階的に調整されていくことを示しているのかもしれません。

愛着や警戒心に関わる脳ネットワークも変化していた

今回の研究では、脳の構造だけでなく、脳内ネットワークの変化も調べられました。

特に注目されたのは、

・サリエンス・ネットワーク

・デフォルト・モード・ネットワーク

・前頭頭頂ネットワーク

です。

サリエンス・ネットワークは、重要な刺激に気づく働きに関わります。

赤ちゃんの小さな泣き声や異変に反応する力を考えると、父親の育児にも関係しそうなネットワークです。

デフォルト・モード・ネットワークは、自己認識や他者理解、社会的な認知に関わります。

前頭頭頂ネットワークは、注意の制御や判断、実行機能に関係します。

研究では、これらのネットワークが産後初期に変化しており、とくにサリエンス・ネットワークでは産後9週ごろに再編成が目立っていました。

さらに重要なのが、扁桃体の変化です。

扁桃体は、感情処理や警戒心に関わる脳領域です。

チームは、扁桃体と他の脳領域との結合が、父親の愛着スコアと関連していることを確認しました。

つまり、赤ちゃんへの愛着や親としての警戒心には、扁桃体を中心とする脳のつながりが関わっている可能性があります。

これは、父親の脳が単に「育児に慣れる」だけでなく、赤ちゃんを守り、気にかけ、関係を築くための神経的な準備を進めていることを示唆します。

ただし、この研究には注意点もあります。

対象者は25人と少なく、父親でない男性との比較群や、出産前の脳スキャンはありません。

そのため、今回見られた変化をすべて「父親になったことが原因」と断定することはできません。

また、調査は産後24週までで終わっているため、これらの脳変化がどれほど長く続くのかも分かっていません。

それでも今回の研究は、父親の脳が出産後の短期間で大きく変化する可能性を、縦断的なMRIデータから示した重要な成果です。

父親になることは、単に家族構成が変わる出来事ではありません。

赤ちゃんの泣き声に反応し、眠い目をこすりながら世話をし、少しずつ親子の関係を築いていくなかで、男性の脳もまた、新しい役割に合わせて作り替えられているのかもしれません。

父親の脳は、赤ちゃんを迎えた瞬間から、静かに「親の脳」へと変化し始めているのです。

参考文献

Fatherhood Dramatically Rewires Your Brain, Scans Reveal
https://www.sciencealert.com/fatherhood-dramatically-rewires-your-brain-scans-reveal

元論文

The paternal brain: longitudinal insights into structural and functional plasticity and attachment over 24 weeks postpartum
https://doi.org/10.1038/s41398-026-04082-7

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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