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朝ドラ【風、薫る】仲間由紀恵演じる侯爵夫人が波乱を呼ぶ? りんと直美の成長を見守りたい

  • 2026.5.18

朝ドラ【風、薫る】仲間由紀恵演じる侯爵夫人が波乱を呼ぶ? りんと直美の成長を見守りたい

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

「看護」とは何かを説明する立場になる

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)を原案とし、激動の明治時代を駆け抜けた二人のナースを、見上愛・上坂樹里のダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説『風、薫る』の第7週「届かぬ声」が放送された。

テンポよく進むストーリーのもと、看護婦見習いとして、早くも病院での帝都医科大学附属病院での実習に突入、りん(見上愛)、直美(上坂樹里)たちは実際に患者と向き合うこととなった。

フィクションの世界でそれは何事においてもそうだと思うが、自身の感覚としてそれが当たり前になっているものを、存在しない状態から描くということは、演じ手、そして作り手側も難しい一面はあるだろう。スマホとか、ライターとか、その時代に存在しない便利アイテムなどによる衝撃などはコメディ演出などで効果的にしかもわかりやすく用いることができるだろうけれども。

このドラマで主人公たちが悩みながらも身につけていく「看護」とは、概念である。そして、職業としての看護師は、この時代の日本にはまだ浸透していない。早いテンポで進みながらもそこを土台とし、日本初のトレインドナースの誕生を見守りながらストーリーが展開していく。「梅岡女学校 付属看護婦養成所」の第1期生だったりんたちは、看護婦見習いとしても第1期、初の存在となる。これまで何度も描かれてきたが、当時は病人やけが人の看護とは、身分が低い者が行うものとされ、元家老の家系の娘のりん、医系家族の多江(生田絵梨花)らがその見られ方にとまどう部分も描かれてきた。

当時の病院には、看護師ではなく「看病婦」という存在のひとたちが病人の世話をしてきた。患者ばかりか医師ですら看護婦という存在をいまひとつ理解できていない状態で、看護婦見習いたちは、今度は自分たちがバーンズ(エマ・ハワード)の教育から学んだ「看護」とは何かということを説明する立場になる。実習で実際に訪れた附属病院は、見るからに不衛生な環境で、看病婦たちがやることといえば、医師の指示通りの投薬と食事の配膳ぐらいであった。

りんたちは、この環境から改善していこうと、前週バーンズから教えを受けたように、清潔であること、換気、花を飾る、患者の様子を記録することなど、病院に「看護」を導入しようと奮闘する。しかしそれは、「余計なこと」のようなあしらいを受け、しまいにはりんの担当患者で元警察署長だという園部(野添義弘)に「下女風情が」と患者に吐き捨てられるように言われる始末だ。

この園部が教授の今井(古川雄大)による総回診では「おかげさまで」とへこへこ頭を下げたりする。また、助教授の藤田(坂口涼太郎)も、「思い上がるな」と、医師と看護師見習いの圧倒的立場の違いを突きつけるような態度をみせる。当然、もともといた看病婦たちともぎくしゃくする。これらがりんたちの存在がどういう位置付けかを分かりやすく伝えてくれる。

そのように主人公たちが、視聴者目線では明らかに理不尽な苦難を突きつけられ、そこから道を切り開いていこうと奮闘する姿を描くのは、かつての朝ドラの定番の空気のようでもある。

直美は処世術を身につけていく

そんなりんたちを見守る立場といえるバーンズはといえば、温かく包み込むように励ますわけでもないところが、高いキャラクター性につながる。りんを「下女」呼ばわりした園部を、「いい患者に出会いましたね」と言い、りんにとって学びになる患者だという考え方を示す。もちろんりんだけでなく、見習いの彼女たちが人間関係を含む病院のさまざまな環境への不平やとまどいを、それがあなたちにできる最大の看護ですかと問いかける。冷たいようでいながら、決してやさしく手を差し伸べるでなく、自分たちで考えて乗り越えていけ、これがバーンズ流の愛情であり激励なのだろう。

りんたちは、自分たちの詰所を清潔に整え、記録をつけていくことから、あらためて始めていく。その一方で、りんが患者への接し方に悩み続けるのに対し、直美は藤田をうまくおだてるような扱いをし利用するという処世術を身につけていく。その対比がこの先の展開にも影響が出てきそうなところにも注目したい。

がんばりむなしく、りんは、手術の縫合不全がもとで容体が悪化した園部の担当を外されてしまう。その後、再手術は無事終わり、園部は退院するわけだが、もっと最初にうまく看護ができていればこれほど長引くこともなかったのではと後悔するりんは、退院する園部に声をかけたものの園部は最後までそっけない態度でりんにあたるのだった。なかなか通じないりんの思い。サブタイトルの「届かぬ声」そのままのやるせなさである。落ち込むりんに対して、バーンズは「ごうつくばり」「欲張り」と言い、そしてきっぱりと続けた。

「看護は見返りを求めてするものではありません。感謝されて気持ちよくなりたいのは、あなたの身勝手な欲です」

患者が回復し、退院していくこと、それが一番である。もっともである。あらためて看護とは何かを突きつけられることとなったりん。前週ラストで「もうここで教えることはなにもありません」とバーンズに言われ、「え、もう学ぶターンは終わり?」と驚いたが、それは学校での話で、「看護」という今までにない概念を学んでいく道のりはまだまだ始まったばかりであることがよく分かるやりとりであった。

つぎにりんが担当を命じられたのは、乳がんのため入院してきた侯爵夫人の千佳子(仲間由紀恵)である。VIP待遇にも不満を漏らし、看護婦・看病婦を「女中」呼ばわりするような分かりやすく厄介な患者の登場で、患者たちがある意味主人公たちの成長のためのクエストツール的存在にはなっているものの、元家老、元士族の娘が、侯爵夫人にどう接し、どう成長をしていくか、見守っていきたいところである。

そして、処世を身につけはじめた直美に、この先どのようにスポットが当たり、直美なりの成長につながっていくのか。次週以降に期待したいところである。

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