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性的ディープフェイク作成者は自分たちの行為を「冗談」「悪ふざけ」だと考えている

  • 2026.5.11
性的ディープフェイク作成者の多くは、冗談半分で加害行為に加わっている / Credit:Canva

AI技術の発展によって、実在する人物の顔や身体を使った性的ディープフェイク画像や動画が、以前よりはるかに簡単に作れるようになりました。

自分や家族、親しい友人の性的ディープフェイクがネット上に出回る状況は、多くの人にとって悪夢のように感じられるでしょう。

ところが、Googleなどの研究チームによる新たな研究では、こうした画像を作成・共有する人の中には、それを「冗談」や「遊び感覚」と捉えている人も少なくないことが明らかになりました。

研究は2026年2月18日付で学術誌『Computers in Human Behavior』に掲載されています。

目次

  • 性的ディープフェイク作成者は「冗談」「悪ふざけ」のつもり
  • 「被害者を無視した感覚」が広まっている

性的ディープフェイク作成者は「冗談」「悪ふざけ」のつもり

性的ディープフェイクとは、AIなどを使って、実在する人物が裸になったり性的行為をしているように見せかける偽画像・偽動画のことです。

有名人の顔をポルノ映像に合成する例は以前から問題視されていましたが、近年では「服を脱がせる」AIアプリや、画像を自動生成するサービスが急速に普及し、専門知識がなくても作成しやすくなってきました。

問題なのは、それが“偽物”であっても、実在の人物に見える性的画像が出回れば、評判や人間関係、精神状態に現実の被害が及び得る点です。

そのため研究者たちは、これを単なる悪ふざけではなく、「AI-generated image-based sexual abuse」、つまりAIで作られた性的画像による加害行為として扱っています。

しかし、これまでの研究では「どれくらいの人がやっているのか」「なぜやるのか」「見る人はどんな感覚なのか」があまり分かっていませんでした。

そこで研究チームは、オーストラリア、イギリス、アメリカの成人7231人を対象に大規模オンライン調査を実施しました。

各国およそ2400人ずつを集め、年齢、性別、性的指向、障害の有無なども含めて分析しています。

参加者にはまず、本人の許可なく「偽またはデジタル加工された性的画像」を作成・共有・共有すると示唆した経験があるかを尋ねました。

そのうえで、その画像にAIが使われていたかを確認しています。

例えば、「18歳以降に、本人の許可なく、偽またはデジタル加工された性的画像や動画を投稿・送信・表示したことがありますか?」といった具体的な設問が用いられています。

また、研究では加害行為だけでなく、「性的ディープフェイクを意図的に見たことがあるか」も調査されました。

その結果、全体の3.2%が、AIを用いた性的ディープフェイクの「作成」「共有」「共有すると脅す行為」のいずれかを行ったと回答しました。

さらに、18%もの人が、性的ディープフェイクを意図的に閲覧したことがあると答えています。

注目すべきは、加害行為をした人たちが挙げた理由です。

加害行為を報告した人たちの中では、「技術を試してみたかった」「見せびらかしたかった」「冗談や遊びだった」といった理由が目立ちました。

では、彼らの動機をより詳しく見ていきましょう。

「被害者を無視した感覚」が広まっている

研究では、加害行為に関わった人々の動機も詳しく分析されています。

性的ディープフェイクを作成した人では、「AI技術を試してみたかった」「見せびらかしたかった」という理由が特に目立ちました。

つまり、一部の人は、被害者がいる行為としてではなく、新しいAI機能を試す延長のように捉えていた可能性があります。

また、「見せびらかしたかった」という回答が多かったことから、AIでリアルな偽画像を作れること自体が、一種の“腕前アピール”になっていたとも考えられます。

さらに衝撃的なのは、共有した人の約4割が「面白かったから」「冗談だったから」と答えていた点です。

研究チームは、ここに大きな危険性があると考えています。

本来、性的ディープフェイクは、本人の同意なく性的イメージを作り出す行為です。

しかし加害者の一部は、それを深刻な加害ではなく、「ネタ画像」や「悪ふざけ」に近い感覚で扱っていたのです。

一方で、すべてが軽いノリだったわけではありません。

画像を共有した人の約26%、作成した人の約22%は、「相手の評判を壊したかった」と答えています。

また、一部には金銭目的も存在し、共有者の約20%は経済的利益を理由に挙げていました。

つまり、性的ディープフェイクは、「遊び」と「悪意」の両方が入り混じった形で広がっていると考えられます。

さらに興味深いのは、“見る側”の心理です。

性的ディープフェイクを見た理由として最も多かったのは、「好奇心」でした。

研究者たちは、ここに「正常化」の危険があると指摘しています。

つまり、作成する人だけを取り締まっても、「ちょっと見てみたい」「面白そう」という消費の空気が残る限り、性的ディープフェイクは軽い娯楽のように扱われ続ける恐れがあります。

AIによって、かつては高度な技術が必要だった偽造が、以前よりはるかに身近なものになりました。

そして今、問題になっているのはAIそのものだけではなく、「本物じゃないから大したことはない」「冗談だから問題ない」と受け止めてしまう人間側の感覚なのかもしれません。

参考文献

Perpetrators of AI sexual abuse often view their actions as a joke, new research shows
https://www.psypost.org/perpetrators-of-ai-sexual-abuse-often-view-their-actions-as-a-joke-new-research-shows/

元論文

AI-generated image-based sexual abuse: Perpetration and consumption across three regions
https://doi.org/10.1016/j.chb.2026.108935

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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