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世界遺産、トゥールーズ=ロートレック、ナビ派の巨匠。いま、南仏アルビを訪れるべき3つの理由。

  • 2026.5.8

ユネスコの世界遺産に指定された、ほんのり赤いレンガ作りの建物が美しい景観を見せるアルビ。トゥールーズ=ロートレックの作品を数多く所蔵する美術館があるのは、この街だ。常設展も楽しみなこの美術館では、2026年の7月26日まで、ナビ派のリーダーでありながら長らくその名が語られることのなかったアンリ=ガブリエル・イベルスの回顧展が開催中だ。

空から見たアルビのバルビー宮殿。ここにトゥールーズ=ロートレック美術館がある。©mTL, Albi

Index

  • 1. 世界遺産、煉瓦造りの大聖堂を見学。
  • 2. 作家の生まれ故郷でトゥールーズ=ロートレック作品を堪能。
  • 3. ナビ派の創始者のひとり、イベルスを発見。

1. 世界遺産、煉瓦造りの大聖堂を見学。

大聖堂の内部は天井までフレスコ画に覆われている。photography: Masae Takata

世界史で習ったアルビジョワ(アルビの、の意味)派という言葉を記憶している人もいるかもしれない。南仏トゥールーズから車で1時間弱の町アルビは、12世紀にカトリック教会と袂をわかつ異端の拠点となった。13世紀になって十字軍の手でカトリック教会に取り戻された町は司教座として栄え、この地方独特のレンガ作りの司教都市はユネスコの世界遺産となっている。司教都市は、サンセシル大聖堂とベルビ宮殿からなり、タルヌ川を見下ろす立地だ。

200年の歳月をかけて建設されたサンセシル大聖堂は、南ラングドックの典型的な煉瓦造りの中世ゴシック様式で、教会というより要塞を思わせる重厚な姿。内部は壁から天井までルネサンス期のフレスコ画に覆われている。パリで見る教会とはまったく違う大聖堂の趣は必見だ。

2. 作家の生まれ故郷でトゥールーズ=ロートレック作品を堪能。

中世の建築の趣をいまに伝える常設展の展示室。©mTL, Albi

大聖堂に隣接するベルビ宮殿は、アルビの司教たちの居城だった建物。トゥールーズ=ロートレック美術館は、この世界遺産の宮殿に居を構えている。

左:アンリ・ドゥ・トゥールーズ=ロートレック「ジャンヌ・アヴリル」(1889年)ムーラン・ルージュの有名なダンサーだったジャンヌ・アヴリルの肖像。© cliche F.Pons, musee Toulouse-Lautrec, Albi, France 右:アンリ・ドゥ・トゥールーズ=ロートレック「ディヴァン・ジャポネ」(1892年)モンマルトルのカフェ・コンセールのために制作されたポスター。© cliche F.Pons, musee Toulouse-Lautrec, Albi, France

彼が亡くなった18年後の1919年、母親が生まれ故郷のアルビに作品を寄贈したことが美術館の始まり。1891年から1900年の間に彼が制作した31点のポスター、361点のリトグラフ、デッサンや習作など、アンリ・ドゥ・トゥールーズ=ロートレック作品最大のコレクションを所蔵する公立美術館だ。

10代の頃に描いていたアカデミックな作品から始まる展示は、やがてモンマルトルで発見するボヘミアンな世界にインスパイアされた独自の画風へと変化していく。アリスティッド・ブリュアン、ジャンヌ・アヴリル、イヴェット・ギルベール、ロイ・フラーといった19世紀末のパリで名を馳せたダンサーや歌手を、彼の残したポスターや版画の中で見知っている人も多いはずだ。美術館は、同時代人であるゴーギャンやドガ、ナビ派たちの貴重な作品も所蔵している。

3. ナビ派の創始者のひとり、イベルスを発見。

トゥールーズ=ロートレックが生きた19世紀末のパリは、ナビ派の時代でもある。その創始者のひとりで、彼と親交が深かったイベルスの初めての回顧展がトゥールーズ=ロートレック美術館で7月26日まで開催されている。

サーカスのワンシーンを描いた作品が展覧会のポスターに。

イベルスは、メディアに社会風刺画を多数残していることから「ナビ・ジャーナリスト」と呼ばれた。数々のポスターを残し、舞台衣装のデザインまで手がけていた彼は、当時の批評家が「至る所に彼の作品が」と評した売れっ子アーティストだが、その作品がまとまって語られることがなく、一般に忘れられていた存在だ。

若きアーティストに舞台を与えることを目的に開催された「ル・サロン・デ・サン」のためのポスター。イベルスは1894年のポスターを手掛けた。© Stéphane Pons.

この回顧展では、あえて時系列を辿ることなく、5つのテーマを通してその多才ぶりを紹介する。

“交流”では、ポートレートや友人たちの作品を通して家族や友人関係と時代背景を語る。“ナビ・ジャーナリスト”では、雑誌などのメディアのために描いた風刺画を紹介。

ドレフュス事件がフランスを揺るがした1989年、反ドレフュスを掲げた週刊誌「Psst…!」が刊行されると、親ドレフュス派の「Le Sifflet」も登場。「Le Sifflet」の表紙はイベルスによるもの。彼はのちに裁判官が軍帽を蹴飛ばす「Psst…!」の表紙を揶揄し、軍が裁判のシンボルである秤を蹴飛ばすイラストを描いている。©Ville d’Albi, mTL

“パリのスペクタクル”“サーカス”“シアターと舞台衣装”では、トゥールーズ=ロートレックと同様、イベルスも好んで題材に取り上げたパリのショービズの世界が描かれ、二人で共同で取り組んだプロジェクトも紹介されている。

常設展と併せて見学すれば、19世紀末のアートシーンが蘇ってくるに違いない。

1893年に刊行された『Le Café Concert』は、トゥールーズ=ロートレックとイベルスが共同で挿絵を描いた1冊。それぞれにモノクロで11点のリトグラフを制作し、表紙はイベルスが担当した。©Ville d’Albi, mTL.
イベルスによる『Le Café Concert』の表紙。©Stéphane Pons
イベルス「カフェ=コンセールにて」1892〜93年頃。コンサートを見ながら食事をするカフェ=コンセールはトゥールーズ=ロートレックやドガも好んで描いたテーマ。©Jean-Louis Losi
“サーカス”のテーマの展示より。©Ville d’Albi, mTL
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