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”やる気を高める”フィットネス投稿が「逆効果」になる理由

  • 2026.5.6
フィットネス投稿に注意すべき理由とは / Credit:Canva

「明日から運動を頑張ろう」「食生活を見直そう」と思って、SNSでトレーニング動画や健康的な食事の投稿を見る人は多いはずです。

引き締まった体や努力の成果を目にすると、不思議とやる気が湧いてきます。

しかし、その“やる気を引き出すはずの投稿”が、実は逆に自尊心を下げてしまう可能性があるとしたらどうでしょうか。

アメリカ・イリノイ州にあるノースウェスタン大学(Northwestern University)の研究チームは、この意外な影響を明らかにしました。

この研究は2026年5月3日に学術誌『Health Communication』でオンライン公開されています。

目次

  • 健康や運動を促すSNS投稿は、本当に健康に役立つのか?
  • 「理想の体」と比べることで、やる気が自己否定に変わる

健康や運動を促すSNS投稿は、本当に健康に役立つのか?

今回の研究で注目されたのは、「fitspiration(フィットスピレーション)」と呼ばれるSNS投稿です。

これは、fitness(フィットネス)とinspiration(刺激・やる気を与えるもの)を組み合わせた造語で、運動や健康的な食事、引き締まった理想的な体型などを見せて、「自分も健康的な生活を目指そう」と促すコンテンツを指します。

SNSでは「fitspo」と略されることもあります。

一見すると、fitspirationはとても前向きな投稿に見えます。

筋トレを続ける人の動画や、健康的な食事、努力で変わった体の写真は、見る人の背中を押してくれそうです。

しかし研究者たちは、こうした投稿が本当に健康的な行動だけを促しているのかに疑問を持ちました。

そこで研究チームは、2015年から2023年までに発表された26本の実験研究を対象に、合計6111人の若年成人のデータを統合するメタ分析を実施。

対象者は18〜33歳で、研究はアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、アイルランド、イタリア、ニュージーランドなど複数の国で行われていました。

分析対象となった各実験研究では、参加者に10〜100枚程度のfitspiration画像や動画を見せ、その後の心理状態や行動意図を測定していました。

そして、fitspirationではないコンテンツを見た人たちと比べることで、fitspirationへの接触が心理や行動にどのような影響を与えるのかを調べたのです。

その結果、fitspirationを見た人では、他人との比較が増え、身体イメージや外見への満足度、自尊心、感情に悪い影響が見られました。

また、ダイエットや運動への動機づけも強まっていましたが、それは必ずしも健康的な方向とは限らず、極端または持続しにくい行動へ向かう可能性が示されました。

では、なぜ「健康のため」に見ているはずの投稿が、逆に心を苦しくしてしまうのでしょうか。

より詳しい結果とその背景について、次に見ていきます。

「理想の体」と比べることで、やる気が自己否定に変わる

今回の分析で特に重要なのは、fitspirationが単に運動への意欲を高めるだけではなかった点です。

研究では、fitspirationへの接触によって、社会的比較が増え、身体イメージが悪化し、ネガティブな感情が強まり、自尊心や外見への満足度が下がる傾向が示されました。

ここで鍵になるのは、fitspirationが「健康」だけでなく「理想の外見」も同時に見せていることです。

たとえば、引き締まった体、整った食事、努力の成果がはっきり分かる投稿を見ると、私たちは自然に自分と比べてしまいます。

その比較が「自分も頑張ろう」という前向きな気持ちだけで終わればよいのですが、実際には「自分はまだ足りない」「自分の体は理想から遠い」という感覚につながることがあります。

この点で、fitspirationはやや厄介です。

普通の広告や雑誌と違って、SNSではこうした画像や動画が日常的に次々と流れてきます。

しかも、それらは厳選され、理想化された形で提示されることが多いため、見る側はそれを“現実の標準”のように受け取ってしまう可能性があります。

その結果、健康的な行動への動機づけが、いつの間にか「理想の体に近づかなければならない」というプレッシャーに変わることがあるのです。

研究では、fitspirationに触れた人ほど、不健康なダイエットや運動への動機づけが強まる傾向も確認されました。

つまり、問題は「運動したくなること」自体ではありません。

その動機が、自分を大切にする方向ではなく、自己否定や無理な努力に結びつく可能性があるということです。

ちなみに、性別、年齢、体格指数(BMI)をまたいで、おおむね同じ方向の傾向が見られました。

ただし、この研究にも限界があります。

対象となった参加者は主に先進国の若年成人であり、女性の割合が多く、人種や民族、体組成に関する情報は研究によって十分に揃っていませんでした。

そのため、異なる文化圏や年齢層、より多様な体型の人々でも同じ影響が出るのかについては、今後さらに調べる必要があります。

それでも、この研究は重要な注意点を示しています。

「やる気を高めるはずのフィットネス投稿」が、実は見えないプレッシャーを生み出しているかもしれない。

SNSで健康情報を見るときにも、「本当に自分のためになる見方ができているか」を立ち止まって考える必要があるのです。

参考文献

They look like healthy motivation, but these viral posts may do more harm than good for young adults
https://phys.org/news/2026-05-healthy-viral-good-young-adults.html

元論文

Lifting the Screen on Fitspiration: A Meta-Analysis
https://doi.org/10.1080/10410236.2026.2653191

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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