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実現しないバイクをなぜ本気で作るのか?|第2回 日本のバイクはなぜカッコいいのか?【二輪の華】

  • 2026.4.27

なぜメーカーは、実現しないかもしれないバイクを本気で作るのか。市販化を前提としないコンセプトモデルには、効率や合理性では測れない“バイク愛”が詰まっている。そこにあるのは、未来を切り拓こうとする技術者たちの純粋な衝動だ。

日本のバイクはなぜカッコいいのか?|第1回 挑戦が生んだ技術の物語

PHOTO/T.HASEGAWA, H.ORIHARA, S.MAYUMI, K.ASAKURA,

HONDA, YAMAHA, SUZUKI, KAWASAKI, Red Bull, STLC Classic Wheels

TEXT/G.TAKAHASHI, K.ASAKURA

コンセプトモデルに覗く「隠し切れないバイク好き」

回転式ダイヤル電話と最新のスマートフォンは、同じ“電話”には見えない。だが、1885年にゴットリーブ・ダイムラーが生み出したガソリンエンジン搭載の二輪車と、現代のスーパースポーツは、同じ“バイク”だと直感的に分かる。

どちらもタイヤはふたつで、その中央にエンジンを備える。人がまたがり、人が操作し、人の繊細な感覚が重視される乗り物──それがバイクだ。

こうした“人の身体性”に強く結びついた構造ゆえに、二輪車は大きく形を変えにくく、どうしても保守的にならざるを得ない。実際、現在のバイクに採用されている多くの基本技術は、1900年代初頭に出揃ったものの熟成版に過ぎない。

それでもメーカーの内部には、「新しいバイクを切り拓こう」という強い意思が確かに存在する。その象徴が、1985年の東京モーターショーに登場したスズキ ファルコラスティコであり、その後に続く数々のコンセプトモデルだ。

【ファルコラスティコ (1985年発表/スズキ)】
【ファルコラスティコ (1985年発表/スズキ)】10年後にあたる’95年の世界をイメージして作られたコンセプトモデル。ガングリップ式ハンドルや前後センターハブステアリング、チェーンレス液圧ドライブなどは今もなお鮮烈。電動スクリーンやボタン式シフトチェンジなど、時を経て現実化された技術も搭載

そこにあるのは、実用性だけではない。二輪技術者たちの夢であり、理想であり、そして遊び心でもある。近未来的な造形には、優秀な技術者たちの稚気がそのまま表れ、隠し切れない“バイク好き”がにじみ出ている。

こうした途方もない発想が、すぐに現実になるとは限らない。だが、大昔のSF映画に描かれた世界が少しずつ現実になってきたように、イメージされた未来は、やがて現実へと近づいていく。

その積み重ねこそが、日本のバイクの進化を支えているのかもしれない。

【MOTOROiD (2017年発表/ヤマハ)】
【MOTOROiD (2017年発表/ヤマハ)】自らサイドスタンドを払って自立し、ライダーの働きかけに応じて自走する。AIを活用して人とバイクの親密な関係性を構築し、「モノ」から「パートナー」への転換を目指す
【MOTOROiD2 (2023年発表/ヤマハ)】
【MOTOROiD2 (2023年発表/ヤマハ)】人とバイクの関係性を追求し、「人生の伴侶」というコンセプトに昇華。ライダーが主、バイクが従という「使役」の間柄から、仲間として呼応するコミュニケーションを図る
【J (2013年発表/カワサキ)】
【J (2013年発表/カワサキ)】AIがライダーの心理・身体状況や路面・天候況などを検知し、ポジションを変化させる電動三輪ビークル。’22年に中国・ホーウィン社がAIによる360度検知システム搭載のコンセプトモデルを発表したが、その先駆けと言える
【PAS(1993年発表/ヤマハ)】
【PAS(1993年発表/ヤマハ)】’89年にプロトタイプが開発され、’93年に世界で初めて製品化・発売された電動アシスト自転車。世になかった製品を現実化し、一大カテゴリーに成長したあたりは、「夢のコンセプトモデル」の成功例だ

次を読む:第三回|“独自性”が生む静かな美しさ

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