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「こんなことになるんですね…」ブレーキの異音を放置した20代女性客を待っていた“恐怖の修理費”

  • 2026.5.18
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「最近、ブレーキを踏むとキーキー鳴るんです」

車を運転していると、一度は経験する“ブレーキ鳴き”。特に走行距離が増えてきた車では珍しくありません。しかし、その音を「まだ止まれるから大丈夫」と軽く考えた結果、修理費が大きく膨らんでしまうケースがあります。

今回は、20代女性のお客さんの事例をもとに、「異音」がなぜ高額修理につながるのかを解説します。

「キーキー音がするだけですよね?」点検で見えた限界状態

これは、筆者が車検や一般整備を担当していた時の話です。ある日、20代女性のお客さんが来店されました。

「最近、ブレーキを踏むとキーキー鳴るんです。ちょっと恥ずかしくて」

まずは同乗確認を実施。低速でブレーキを踏むと、確かに高い金属音のような“キー”という音が出ています。ただし、ブレーキの音は必ずしも異常とは限りません。冷間時や雨天時、スポーツ系のブレーキパッド装着車などでは、正常な状態でも軽い鳴きが出ることがあります。しかし今回の音は、明らかに今までとは違う状態でした。工場へ戻り、タイヤを外して点検すると、原因はすぐに判明。ブレーキパッドの残量がほとんどなかったのです。お客さんに説明しました。

「今ならブレーキパッド交換だけで済みます。ディスクローター(ブレーキの円盤部品)はまだ使えそうです」

すると、お客さんは少し困った表情でこう返しました。

「音だけですよね? もう少し乗れますか?」

もちろん、この時点ですぐブレーキが効かなくなるわけではありません。しかし、限界が近い状態であることは間違いありませんでした。

「急に止まれなくなるケースは少ないですが、早めの交換が安心です」

そう説明しましたが、その日は見積もりだけで帰られることになりました。

数週間後、“キーキー”は“ゴリゴリ”に変わった

それから数週間後。再びそのお客さんが来店されました。今度は駐車場へ入ってきた瞬間、こちらが振り返るほど大きな音が響いていました。

「ゴリゴリゴリ」

前回とはまったく違う、耳障りな異音です。すぐに点検すると、ブレーキパッドは完全に摩耗。摩擦材がなくなり、金属部分がディスクローターへ直接当たっている状態でした。こうなると、ブレーキを踏むたびに金属同士が削れ合います。ローター表面には深い傷が入り、段付き摩耗も発生。再利用は不可能でした。

お客さんも驚いた様子で、

「こんなことになるんですね」

と苦笑い。結果的に必要になったのは、

  • ブレーキパッド交換
  • ディスクローター交換
  • 工賃一式

当初の“パッド交換だけ”だった見積もりに対し、費用は2倍以上になってしまいました。

「いつもと違う音」は、車からの重要なサイン

ブレーキは、車の中でも特に安全に直結する部品です。そのため、「いつもと違う音」は軽視してはいけません。特に今回のように、

  • 音が以前より大きくなった
  • キーキーからゴリゴリへ変化した
  • ブレーキ時だけ音が出る
  • 停止直前に異音が出る

こうした変化は、摩耗限界が近いサインである可能性があります。さらに、摩耗した状態を放置すると、

  • 制動距離の増加
  • ブレーキ性能低下
  • ローター損傷
  • 修理費の高額化

といったリスクにもつながります。

特に最近の車は静粛性が高いため、小さな異音にも気付きやすくなっています。「少し変だな」と感じた時点で点検することが、大きな故障を防ぐ近道です。

対策としておすすめなのは、

  • オイル交換時にブレーキ残量も確認してもらう
  • 定期点検を習慣化する
  • 「まだ止まるから大丈夫」と自己判断しない
  • 音の変化を記録する

といったシンプルなことです。

ブレーキ鳴きには正常範囲のケースもありますが、「以前と違う」「音質が変わった」という違和感は重要です。整備現場では、“違和感が出た時点で交換タイミングだった”というケースを何度も見てきました。だからこそ、「ただの音」と軽く考えず、早めの点検をおすすめします。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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