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車掌がマイクを握って話すのは古い?現役の鉄道社員が語るAIが変えた車内アナウンス

  • 2026.6.1
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

通勤や通学、あるいは旅行で電車を利用する際、私たちの耳に自然と入ってくるのが車内アナウンスです。駅名や種別の案内といった実用的な情報だけでなく、独特のイントネーションに旅情を感じたり、ふとしたときに添えられる車掌の温かい一言で気分が和んだりした経験を持つ方も多いでしょう。

かつての車内アナウンスは、車掌がマイクを握って自らの口で語りかける「肉声放送」が一般的でした。しかし、近年は車掌の業務負担軽減や多言語対応へのニーズから、自動音声を採用する会社が急速に増えています。日々乗客を乗せて走る電車の中で、実は大きな進化を遂げている車内アナウンスの裏側をご紹介します。

アナウンス文例集と肉声放送の時代

昔ながらの車内アナウンスといえば、やはり車掌による肉声放送です。鉄道会社の社員が車掌としてデビューするためには、長い教習を受けます。その際、必ずと言っていいほど配られるのがアナウンス文例集です。

基本となる駅の案内から、乗り換え、お詫び、異常時の対応まで、あらゆるシチュエーションが網羅されたこの文例集をもとに、教習生たちは来る日も来る日も練習を重ねてから実務へと臨んでいました。筆者自身もかつて、この文例集を片手にたどたどしい口調でアナウンスの練習を繰り返したものです。マイクを通した自分の声が車内に響き渡る緊張感は、今でも鮮明に記憶に残っています。

多様化する業務と地下鉄における早期導入

現在でも、旅客案内の基本として肉声アナウンスの教習を行う会社は数多く存在します。しかし、発車時や停車時の厳格な安全確認、車内巡回、お客様への直接の案内対応など、車掌の役割は極めて多岐にわたります。こうした業務負担を軽減し、より安全確認に注力できるよう、自動放送による省力化を図る動きが加速してきました。

地下鉄では他の路線に先駆けて早くから自動音声の導入が進められていました。その背景には、単なる省力化だけでなく地下鉄特有の環境が関係しています。騒音の反響が大きいトンネル内でも確実に情報を届けるためには、均一で聞き取りやすい自動音声が適していたのです。また、都市部を走る地下鉄では企業などの「広告放送」を流したいという商業的な狙いもあり、導入が広がっていきました。

多言語対応とAI・タブレットの活用

2010年代に入ると、この自動化の流れはさらに加速します。インバウンドの増加に伴い、多言語での案内が急務となったためです。省力化と多言語対応を同時に解決する手段として、タブレット端末を活用した自動音声システムが多くの会社で採用されるようになりました。

電車を利用している際、車掌が手元のタブレット端末を操作している姿を見かけたことがある方も多いでしょう。あの端末には、入力された文章をAI技術によって自然な音声データに変換したものがインストールされています。車掌が状況に合わせて画面を操作するだけで、日本語だけでなく英語や中国語、韓国語などの車内放送がスピーカーから流れる仕組みです。

GPS連動による自動化

最近では技術がさらに進歩し、GPSの位置情報と連動して放送内容を自動判定する機能を備えたシステムも登場しています。

このシステムを使えば、電車が駅の手前の一定地点に到達した瞬間に自動で到着アナウンスが流れ、特定のエリアを通過するタイミングで広告放送を流すといった運用が可能になります。車掌が手動でタイミングを見計らって操作する手間までも省かれ、さらなる省力化が実現しつつあります。

変わらない基本

このようにデジタル化と自動化が急速に進む一方で、あえて肉声放送の価値を再認識し、重視している鉄道会社もあります。その代表例がJR東海です。

東海道新幹線や在来線で、車掌自身が英語で案内放送を行っているのを聞いて驚いた方も少なくないでしょう。前述の通り、アナウンスは案内業務の基本です。システムによる省力化や効率化を図りつつも、自分の言葉でお客様に伝えるという基本を忘れない姿勢も感じられます。

次に電車に乗って車内アナウンスを耳にしたときは、それが自動なのか肉声なのか、少しだけ注目してみてください。そこには、最新技術によって進化を続ける鉄道の姿と、いつの時代も変わらない案内業務の根底にある考え方が共存していることに気づくはずです。


参考:
車内放送自動化アプリ - SDHA(JR東日本)
車内放送装置(多言語対応)(近鉄車両エンジニアリング株式会社)
東日本旅客鉄道株式会社 八王子支社 様 | 導入事例(NTTテクノクロス)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、鉄道業界を15年以上経験。鉄道部門だけでなく、関連事業部門のタクシーやバス、小売りなどを幅広く経験。現在はWebライターとしても活躍し、広報を担当した経験からコラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで幅広く活躍中。


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