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ナルシストほど「失敗が避けられない」とき、普通の人より動揺しやすい

  • 2026.4.23
Credit: canva

「どう計算しても、これはうまくいかない…」

そんな“失敗が見えている状況”に置かれたとき、みなさんはどう感じるでしょうか。

落ち込むものの、ある程度は受け入れて次に進もうとする人もいれば、強く動揺し、現実を直視できなくなる人もいます。

この違いは単なる性格の差なのでしょうか。

独ヴィッテン・ヘァデッケ大学(Witten/Herdecke University)の研究チームはこのほど、失敗や否定的な評価に直面したときの反応が、ナルシシズム(自己愛傾向)によって大きく異なることを明らかにしました。

ナルシストほど「失敗が避けられない状況」において、強い動揺と自己防衛的な反応を示す傾向があることがわかったのです。

研究の詳細は2025年の心理学誌『Social Psychological and Personality Science』に掲載されています。

目次

  • 失敗は「自己への攻撃」になる
  • ナルシストはなぜ動揺しやすいのか

失敗は「自己への攻撃」になる

まず前提として、人は誰でも失敗や批判を受けると、不快感を覚えます。

これは心理学では「自己脅威(self-threat)」と呼ばれ、自分の価値や能力が否定されたように感じる状態です。

たとえば試験に落ちたり、仕事で評価されなかったりすると、人は無意識のうちにその衝撃を和らげようとします。

評価の基準を疑ったり、「今回は運が悪かっただけだ」と考えたりするのが典型的な反応です。

しかし今回の研究で明らかになったのは、この「自己防衛の強さ」が人によって大きく異なるという点です。

研究チームは約1700人を対象に、共感力を測るテストを受けさせ、その結果について意図的に「良い評価」または「悪い評価」を与えました。

そしてその後、参加者がどの程度その評価を疑うかを調べたのです。

すると、ナルシシズム傾向が強い人ほど、否定的な結果を受け入れず、失敗に対して敏感で、テストや評価そのものの妥当性を強く疑うことが確認されました。

つまり、失敗そのものに動揺するだけでなく、「これは正しい評価ではない」と現実を歪めることで、自分を守ろうとするのです。

ナルシストはなぜ動揺しやすいのか

では、なぜナルシシストは失敗や否定的な評価に対して、ここまで強く反応するのでしょうか。

鍵となるのは、彼らが持つ「称賛への強い欲求」です。

ナルシシズムが高い人は、自分を有能で価値ある存在だと感じていたいという欲求が非常に強く、周囲からの評価に大きく依存しています。

そのため、失敗や否定は単なる出来事ではなく、自己の核心を揺るがす脅威として感じられるのです。

特に興味深いのは、自分が自信を持っている分野で否定されたときほど、防衛反応が強まるという点です。

たとえば「自分は人付き合いが得意だ」と思っている人が、その能力を低く評価されると、強く反発しやすくなります。

さらに今回の研究では、意外な結果も示されました。

一般的には、自己理解を重視する人(自己評価動機が高い人)や、マインドフルネスが高い人は、失敗を受け入れやすいと考えられています。

しかし実際には、こうした人たちも完全に冷静でいられるわけではなく、評価者の能力を疑うなど、一定の自己防衛を示すことがわかりました。

つまり、人はどれだけ理性的であっても、自分を守ろうとする傾向から完全に自由ではないのです。

失敗をどう受け止めるかが分かれ道になる

今回の研究は、「ナルシストは打たれ弱い」という単純な話ではありません。

むしろ重要なのは、人は誰でも失敗に直面すると現実を歪めてしまう可能性があるという点です。

ただしナルシシズムが強い場合、その傾向はより顕著になります。

失敗が避けられない状況においても、それを認めることが難しく、強い動揺や否認につながりやすいのです。

では、どうすればよいのでしょうか。

研究者たちは、外の評価を否定するのではなく、自分自身に目を向けることの重要性を指摘しています。

自分の弱点や限界を現実的に受け止めることができれば、失敗は単なるダメージではなく、次に進むための手がかりになります。

誰にとっても、失敗は避けがたいものです。しかしそれをどう解釈するかによって、その後の行動は大きく変わります。

自分を守るだけでなく、自分を理解する視点を持てるかどうかが、その後の人生を左右する分かれ道になるのかもしれません。

参考文献

When Failure Is Imminent, What Happens to the Narcissist?
https://www.psychologytoday.com/us/blog/fulfillment-at-any-age/202604/when-failure-seems-imminent-what-happens-to-the-narcissist

元論文

The Ego’s Bodyguard: The Role of Personality in Self-Protective Reactions
https://doi.org/10.1177/19485506251345925

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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