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手術で“90万円”支払うことになった60代男性→『高額療養費制度で安く済む』はずが…健康保険から告げられた“思わぬ事実”

  • 2026.5.27
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 IFAの石坂です。

入院や手術が必要になったとき、「高額療養費制度があるから、医療費は大きな負担にならないはず」と考える方は少なくありません。たしかに高額療養費制度は、医療費の自己負担が一定額を超えた場合に、超えた部分が払い戻される大切な制度です。

ただし、自己負担限度額は誰でも同じではありません。年齢や所得区分によって変わり、住民税が非課税かどうかも関係します。

今回は、年金生活に入った60代夫婦が、入院費を確認する中で気づいた「住民税課税区分」の落とし穴について見ていきます。

「高額療養費があるから大丈夫」と思っていた夫婦の誤算

68歳の夫と66歳の妻は、夫婦で年金を受け取りながら生活していました。

夫の年金収入は年220万円、妻の年金収入は年90万円ほどです。毎月の生活費は約23万円。住宅ローンはすでに完済しており、夫婦は「年金生活だから、医療費の負担もそこまで重くならないだろう」と考えていたそうです。

ところが、夫が検査入院をしたあと、手術を受ける可能性が出てきました。病院からは、保険診療分の医療費が総額で約90万円になる可能性があると説明されたそうです。医療費が90万円で3割負担の場合、単純計算では窓口負担は約27万円です。

夫婦は驚きましたが、「高額療養費制度を使えば、最終的には数万円で済むのでは」と思っていました。
そこで加入している健康保険へ確認したところ、69歳以下の自己負担限度額は、所得区分によって変わることがわかりました。

厚生労働省の資料では、69歳以下の住民税非課税者の自己負担限度額は35,400円とされています。一方、所得区分によっては57,600円、または「80,100円+医療費から267,000円を差し引いた額の1%」になる場合があります。

夫婦は「年金生活=住民税非課税」と思い込んでいました。しかし、年金収入や各種控除を確認したところ、住民税が非課税とは限らないことがわかりました。

そのため、想定していた自己負担額と実際の限度額に差が出る可能性があったのです。

「非課税のつもり」が医療費の見込み違いに

この事例で注意したいのは、「高額療養費制度が使えるかどうか」ではありません。大切なのは、自分がどの所得区分に入るかです。

69歳以下の高額療養費では、所得区分によって自己負担限度額が変わります。住民税非課税者の区分であれば、月の自己負担限度額は35,400円です。しかし、住民税が課税される区分に入ると、限度額が57,600円や「80,100円+一定額」になることがあります。

今回のように医療費が90万円かかった場合、仮に「80,100円+一定額」の区分に該当すると、自己負担限度額は次のように計算されます。

  • 80,100円+(900,000円-267,000円)×1%=86,430円

一方、住民税非課税者の区分なら35,400円です。

この例では、同じ医療費90万円でも、区分によって自己負担限度額に約5万円の差が出ます。

もちろん、実際の区分は年金収入だけで決まるわけではありません。公的年金等控除・基礎控除・配偶者控除・社会保険料控除などを差し引いたうえで判断されます。

※なお、実際の区分は加入している健康保険によって判定方法が異なります。会社員などの健康保険では主に標準報酬月額・国民健康保険では所得をもとに判定されるため、健康保険組合や自治体に確認することが大切です。

「年金生活だから非課税」とは言い切れません。

また、高額療養費制度の対象になるのは、主に保険診療の自己負担分です。入院時の食事代・差額ベッド代・保険適用外の診療費・日用品代などは、自己負担限度額とは別に支払いが必要になる場合があります。

つまり、自己負担限度額だけを見て「この金額だけ用意すれば大丈夫」と考えると、実際の支払いで慌てる可能性があります。

FP視点で見る医療費準備の落とし穴

医療費対策では、民間の医療保険に入っているかどうかだけでなく、公的制度を正しく確認することが大切です。特に確認したいのは、加入している健康保険・自分の年齢・住民税の課税状況・所得区分です。

高額療養費制度では、同じ月に支払った医療費が一定額を超えると、超えた部分が払い戻されます。
さらに、直近12か月で高額療養費に3回以上該当した場合、4回目以降は限度額が下がる「多数回該当」という仕組みもあります。

ただし、加入する保険者が変わると、過去の回数が通算されない場合があります。退職後に会社の健康保険から国民健康保険へ変わる人は、特に確認しておきたい部分です。

また、マイナ保険証を利用して限度額情報が医療機関等へ提供される場合、または限度額適用認定証などを提示する場合は、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えやすくなります。マイナ保険証を使う場合は、オンライン資格確認を導入している医療機関等であることが必要です。

医療費は、実際に病気になってから調べると、制度の確認だけでも負担に感じやすいものです。だからこそ、60代以降は「自分の医療費の上限はいくらくらいか」を事前に見ておくことが大切です。

年金生活でも、住民税が非課税とは限りません。「高額療養費があるから大丈夫」と考えるだけでなく、自分が住民税非課税にあたるのか、課税される区分なのかを確認しておくことが、家計を守るうえで大切な準備になります。


※高額療養費制度の所得区分の判定基準や多数回該当の適用ルール、住民税の非課税ラインはお住まいの自治体の条例や加入している健康保険組合によって細かく異なります。万が一の際の正確な自己負担額を知りたい場合は、自己判断せず、必ず事前に加入している健康保険の窓口や、お住まいの役所の福祉課へ直接ご相談ください。

執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。

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