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「好きなメンバーだけひいきしている」と部下からクレームが…Googleのマネジャーが反論の代わりにしたこと

  • 2026.4.10

「単なる組織上の上司」と「信頼されるマネジャー」はどこがちがうのか。Googleの社員としてマネジメントに携り、それぞれのチームを率いた経験のある元マネジャー3人が解説する――。

※本稿は、中谷公三・諸橋峰雄・水野ジュンイチロ『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

「あなたは不公平だ」と部下に言われた

「あなたは不公平だと思います」

部下からそう言われたことがあります。思いがけない指摘に、私はとても驚きました。この部下いわく、いつも特定のメンバーばかりと仲良くして、ひいきしているように見える、と。

私にしてみれば、そんなつもりはまったくなく、ただ積極的に声をかけてくれるメンバーに自然と応じていただけでした。指摘してきたその人は内向的で、自分から声をかけるのが苦手なタイプだったのです。

その瞬間、私は傷つきましたし、思わず「そんなつもりはないのに」と否定したくなる気持ちでいっぱいになりました。でも、もしかしたら、自分が「正しい」と思っている態度や判断が、誰かにとっては「正しくない」と見えているのかもしれない、しばらく経ってそう思いはじめました。

そこで初めて、「正しさ」には常に両面があることに気づいたのです。自分では誠実に接しているつもりでも、そのあり方が他者を遠ざけ、傷つけることもある。私はそのとき、「正しさの罠」というものの本質に気づいたのでした。

いま振り返ると、その部下は、私とほかのメンバーとのコミュニケーションにどこか疎外感を抱いていたのでしょう。けれど、自分から同じように距離を縮めにくるのは難しかったのだと思います。おそらく「マネジャーであるあなたが、気を配って平等に接するべきではないか」と感じていたのかもしれません。

『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』
出典=『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
「なぜそう感じたのか」を相手に聞いてみる

実は、こうした「否定したくなる瞬間」こそが、マネジャーとしての本当の試されどころなのです。

マネジャーである以上、どれほど真摯にメンバーと向き合っていても、誤解されたり、理不尽な批判を受けたりすることは避けられません。思いもよらないことで陰であれこれ言われることもあるでしょう。

しかし、「そんなふうに思われるなんて心外だ」「私はマネジャーとしてやるべきことをやっているんだ」と感情的になるのではなく、「なぜそう感じたのか」を落ち着いて聞いてみる。そして、相手の気持ちに寄り添いながら、未来に向けた建設的な対話を始めることができるかどうか――それが、「単なる組織上の上司」と「信頼されるマネジャー」の違いなのです。

「正しさの罠」に陥っていないか

マネジャーという役割に就くと、自然と情報が集まり、意見を求められ、意思決定の権限も手にするようになります。やがて、組織の中で自分が持つ「権威」や「パワー」の重みを自覚するようになるでしょう。

そうなると、マネジャーとして業務の全体像を誰よりも把握し、的確な判断を下しているという自負が芽生えてきます。それが次第に、「自分の考えの方が正確で、より合理的だ」という意識を強めていきます。

気がつけば、メンバーを導こうとして意見を押しつけたり、失敗を未然に防ごうと細かく介入したりする。どれも一見すると「責任あるマネジメント行動」に見えます。

厄介なのは、本人にとっては善意からの行動に見えることです。「自分が甘すぎたのではないか」「もっと厳しく接することこそ、メンバーを鍛えるために必要なのではないか」――そんなふうに自問しながら、あえて部下に苦言を呈することについて自己正当化してしまうのです。

私はこの現象を「正しさの罠」と呼んでいます。これまでに、何人ものマネジャーがこの罠に陥るのを見てきました。これはひいてはパワハラの温床になりかねません。

その態度の裏にはどんな感情があるのでしょうか? 「自分の方が深く考えている」「相手はまだ未熟だ」――そんな無意識のバイアスが、知らぬ間に染みついてはいないでしょうか。

あなたが正しさを語るたびに、部下たちはうなずきながらも反論することなく、少しずつ静かに心を閉ざしているかもしれません。気づけば「裸の王様」になっていることさえあります。

『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』
出典=『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』
「論理で打ち負かすこと」が正義ではない

今日のビジネスの世界では、論理に基づいて議論することが当たり前のように語られており、筋の通ったロジックで他者を説得したり、打ち負かしたりすることが評価されがちです。

実際、「論破」という言葉にも象徴されるように、相手を論理で打ち負かすことが、あたかも正義であるかのように捉えられがちです。

感情を排除し、事実と論理に基づいて意思決定を下すことは、一見すると最も正しく、合理的なリーダーのあり方に見えるかもしれません。けれどもそのたびに、周囲の人々があなたの顔色をうかがい、口をつぐむようになると困ったことになります。反論が減り、会議では静寂が支配し、誰も本音を語らなくなります。

忖度と保身がチームに蔓延し、意思決定は早くなったように見えても、チームはやがて停滞し、創造性も助け合いも失われてしまうでしょう。

こうした状態が続くと、チームは互いに距離を取りながら、割り振られたタスクを淡々とこなすだけの「作業集団」になっていきます。果たしてそれは、私たちが目指す組織の姿でしょうか?

マネジャーである前に一人の人間

マネジャーは「マネジャーである前に、一人の人間である」という事実をしっかり認識しておく必要があります。自分にだって得手不得手があり、他者を誤解することもあれば、相手の置かれている環境や思いを見落とすこともあります。

だからこそ、自分のあり方や振る舞いが、相手の目にどう映っているのかを問い続ける姿勢が欠かせません。マネジャーという肩書きにあぐらをかき、「自分は正しい」と思い込んでしまうことこそが最も危ういのです。

チームをエンパワメントするというのは、リーダーが正義を振りかざすことでも、正解を提示することでもありません。大切なのは、メンバー一人ひとりが意見を持ち、それを表現し、自ら考え、行動する力を信じること。そして、その力を自然に引き出せる環境を整えることが私たちマネジャーの仕事なのです。

『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』
出典=『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』
いつの間にか「レッテル貼り」をしていないか

マネジャーとしてもう1つ気をつけておかなければいけないことが、「レッテル貼り」や「切り捨て」のような言動です。

たとえば、「Aさんはいつもやる気がないなあ」「Bさんはコミュニケーションが苦手だよね」といった何気ない一言は、あなたにとってはただの感想や現状分析のつもりでも、それを聞いている周囲のメンバーには、大きな影響を与えます。

そうした言葉は、本人がその場にいなくてもチームに伝わり、「あの人はそういう人なんだ」

という固定観念を根づかせてしまいます。そして、知らず知らずのうちに本人の発言機会を奪い、挑戦のチャンスを遠ざけ、チームの結束を壊してしまうのです。

その場にいたメンバーも、「自分も陰で何か言われているのでは」と疑心暗鬼になり、信頼関係が少しずつ揺らいでいきます。万一その言葉が本人の耳に入れば大きな痛手となり、自己肯定感や意欲に深刻な影響を及ぼすこともあるでしょう。

マネジャーが不用意に放った一言が、メンバーの可能性の芽を摘んでしまう――その責任の重さを、私たちは深く理解しておく必要があります。

マネジャーには「過去ではなく、未来に目を向ける姿勢」が求められます。現状の延長線で相手を判断せず、その人がこれからどう成長できるのか、どんな可能性を持っているのかに目を向け続ける。エンパワメント型マネジャーにとって、それは揺るがぬ基本姿勢であるべきなのです。

求められるのは「自制心」と「謙虚さ」

こうした「正しさの罠」を乗り越えるために、マネジャーに求められるのは何よりも「自制力」と「謙虚さ」です。

たとえば、あなたが会議で「自分ならもっとよい結論を出せる」と感じたとき、その思いを即座に言葉にしてしまえば、きっとチームの雰囲気は台無しになってしまいます。メンバーは「なんだ、結局自分の中に答えがあるんだ」と感じてしまい、気持ちが萎えてしまいます。

まずは、部下の意見を最後まで聞き切ること。沈黙に耐えて、話をまとめようとする気持ちを抑えて、相手に考えを展開させる時間を与えること。これが「自制力」です。

また、メンバーの提案が自分の考えよりも浅かったり、非効率に思えたとしても、「それは違う」とすぐに否定せずに「なぜそう考えたのか」「どう工夫できそうか」と問いかけてみる必要があります。なぜなら、そこにあなた自身が気づかなかった視点や、新しい解決策が潜んでいることも少なくないからです。これが「謙虚さ」の実践です。

【図表1】マネジャーが陥りがちな問題行動の代表例
出典=『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』
怒りを問いに変える

怒りを覚えたときにマネジャーに求められるのは、「怒りを問いに変える力」です。

たとえば、部下が明らかなミスをしたとします。そのとき、「なんでこんなこともできないんだ!」と叱責するのではなく、「何がこういう判断につながったんだろう」「このミスが起きた背景には、どんな構造的な要因があるのだろう」と問い直してみることです。

中谷公三・諸橋峰雄・水野ジュンイチロ『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
中谷公三・諸橋峰雄・水野ジュンイチロ『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

これは単なる言い換えではなく、視点の切り替えです。怒りをぶつけるかわりに、関心と探究心を持つことで、あなた自身の感情を制御しつつ、問題の本質に近づくことができます。

成熟したマネジャーは、感情の根底にある「期待」や「信頼」に目を向けます。なぜ、そこまで強い感情を持ったのか? その感情が生まれた背景には部下への期待や信頼があったはずです。

その期待を「怒り」ではなく、「信頼の再表明」として伝えることで、建設的な対話に変換できるはずです。

このほかにも、マネジャーとして伸び悩む人が陥りがちな問題行動はいくつかあります。図表1にまとめたので、参考にしてみてください。

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