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非音楽家でも、脳は”音楽のルール”を理解している

  • 2026.4.10
音楽のトレーニングを受けていなくても、音楽のルールを理解している / Credit:Canva

音楽はトレーニングを受けた音楽家だけのものではありません。

世界中のほとんどの人が、専門的な音楽経験の有無にかかわらず音楽を楽しんでいます。

新しい研究では、アメリカ・ロチェスター大学(University of Rochester)の研究チームが、人は特別な訓練を受けていなくても、音楽の「音の流れ」を自然に取り込んでいると報告

それを使って次の展開を予測し、覚え、まとまりとして捉えていることを示しました。

研究成果は2025年12月19日に学術誌『Psychological Science』でオンライン公開されました。

目次

  • 人は「音の流れ」で音楽を理解している
  • 訓練がなくても脳は「音楽のまとまり」を読んでいる

人は「音の流れ」で音楽を理解している

私たちは音楽を聴くとき、単にその場その場の音を聞いているだけではありません。

無意識のうちに、「このあとにはこういう音が来そうだ」と感じながら聴いています。

こうした感覚を支えているのが、曲の中にある「音の流れ」です。

どの音が落ち着いて聞こえるか、どの音が次につながりやすいかといった関係が、音楽の中にはあります。

しかし、こうした「音の流れ」を理解する力が、音楽の訓練によって強く身につくものなのか、それとも日常生活の中で自然に育つものなのかは、これまではっきりしていませんでした。

さらに、人が音楽を理解するとき、直前の数音だけを手がかりにしているのか、それとももっと長いまとまりを使っているのかも重要な問題でした。

そこで研究チームは、チャイコフスキーのピアノ曲を使い、音色やテンポなどの音響的な手がかりはなるべく揃えたまま、曲の構造だけを異なる単位で崩して比較しました。

曲をそのまま聴かせる条件に加え、8小節ごと、2小節ごと、1小節ごとに区切って並び替えた条件を用意し、「音の流れ」がどれだけ保たれているかを変えたのです。

研究では、音楽経験のある人とない人の両方に4つの課題が行われました。

音楽の一部を覚えられるかを調べる課題、次の音を予測する課題、音楽の中で「ここで一区切り」と感じる場所を示す課題、そしてどの程度バラバラにされた音楽かを見分ける課題です。

その結果、音楽家でも非音楽家でも、曲の流れが長く自然なまま残っているほど、記憶も予測も良くなることが分かりました。

私たち皆は、断片的な音だけで判断しているのではなく、ある程度まとまった「音の流れ」を使って音楽を理解しているのです。

では、音楽家と非音楽家ではどんな違いがあったのでしょうか。

訓練がなくても脳は「音楽のまとまり」を読んでいる

今回の研究で特に興味深いのは、音楽経験のない人でも、音楽家とかなり近い形で音楽を処理していたことです。

記憶と予測の課題では、音楽家だけが特別に有利という結果にはなりませんでした。

これは、私たちがふだんの生活の中で音楽を聴くだけでも、「音の流れ」をかなり自然に身につけていることを示しています。

音楽を区切る課題では、人は単に音をつなげて聞いているのではなく、短いフレーズや、その上に重なるより大きなまとまりを手がかりにしていることも示されました。

つまり私たちは音楽を、ばらばらの音の列ではなく、大小のまとまりが重なった構造として捉えているのです。

一方で、音楽家にまったく差がなかったわけではありませんでした。

音楽家は、より長い単位のまとまりに敏感で、音楽がどの程度スクランブルされているかを見分ける課題でも優れていました。

訓練によって、音楽の構造を意識的に見抜いたり、言葉にしたりする力は高まりやすいと考えられます。

つまり今回の研究は、「訓練が不要」と言っているのではなく、「音楽を理解する土台そのものは、訓練がなくてもかなり育つ」ことを示しているのです。

この結果は、音楽が感情を動かす仕組みを考えるうえでもヒントになります。

私たちは音の流れの中で、次に来る展開をうっすら期待しながら聴いています。

その期待が満たされたり、少し裏切られたりすることで、「明るい」「落ち着く」「不安になる」といった感覚が生まれているのかもしれません。

ただし今回の研究には限界もあります。

使われたのは西洋クラシック音楽であり、世界中のあらゆる音楽で同じような結果になるかは、まだ分かっていません。

また、この研究は人の行動から音楽理解を調べたもので、脳の中で何が起きているかを直接見たわけではありません。

今後は脳画像研究などによって、音楽を聴いているときに脳がどのように長い流れやまとまりを処理しているのかが、さらに詳しく調べられるとよいでしょう。

音楽は、楽譜が読める人だけのものではありません。

私たちの脳は、日々音楽に触れるだけで、その中にあるルールやまとまりを思った以上にしっかり学んでいるのです。

参考文献

Why Your Brain Already Understands Complex Music Theory Without Ever Taking a Single Piano Lesson
https://www.zmescience.com/science/news-science/your-brain-understands-music-theory/

Even nonmusicians pick up on music’s context
https://www.eurekalert.org/news-releases/1117318

元論文

Listeners Systematically Integrate Hierarchical Tonal Context, Regardless of Musical Training
https://doi.org/10.1177/09567976251400331

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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