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物価高騰から小さな動物園を救った「人の善意」 不便な場所にありながらも愛され続ける草津熱帯圏

  • 2026.4.8
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物価高騰の波は、私たちの生活だけでなく、動物園の運営も直撃しています。特に私営の小規模な園にとって、跳ね上がる光熱費やエサ代は、運営の根幹に関わる深刻な問題です。そんな中、群馬県・草津温泉にある「草津熱帯圏」では、少し変わった光景が見られます。厳しい社会情勢とは裏腹に、動物たちの食卓が、地域やファンの温かな善意によって守られているのです。

予算を超えた「おいしいプレゼント」

「お客様や地域の方々からの『プレゼント』で、エサ代を抑えられています」

草津熱帯圏の公式YouTubeを開くと、そんな感謝の言葉とともに、動物たちが色鮮やかなフルーツや野菜をおいしそうに食べる姿が映し出されます。これらはファンから届いた差し入れや、近隣のスーパーが「売り物にはならなくなってしまったけれど、味は確か」として届けてくれた食材なのだそうです。

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草津熱帯圏公式YouTubeより

山盛りのブドウやリンゴをおいしそうに食べる動物たち。見ているこちらまで幸せな気持ちにさせてくれます。こうした「お裾分け」が、私営の動物園の苦境を支える大きな力となっているようです。

「1,300円」に込められた私営の意地

草津熱帯圏の入園料は、大人1,300円。 全国にある公営動物園の多くが、無料~数百円ほどで入園できることを考えると、一見「少し高いかな?」と感じるかもしれません。しかし、ここは1970年(昭和45年)の創業以来、公的な補助に頼らず歩んできた「私営」の動物園です。

老朽化が進む施設を維持し、冬の寒さが厳しい草津で熱帯環境を保つための光熱費を捻出しながら、この価格を維持していること。それは、並大抵ではない企業努力があったのではないでしょうか。

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草津熱帯圏公式YouTubeより

また、草津は日本屈指の温泉地ですが、首都圏からのアクセスは決して良くありません。新幹線は通っておらず、JR吾妻線の「長野原草津口」駅からバスで25分。そんな「わざわざ足を運ぶ場所」でありながら、50年以上も愛され続けてきたのは、一体なぜなのでしょうか。

完璧な施設ではないけれど、ここには「愛」がある

その答えは、園内に一歩足を踏み入れれば分かります。「お客さまに楽しんでもらいたい」というスタッフの熱意が感じられます。そして、新設された「ふれあい館」に象徴されるような、動物たちとの驚くほど近い距離感も魅力の一つです。

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草津熱帯圏公式YouTubeより

設備が整った巨大な園ではありませんが、「この場所を、みんなで守りたい」という気持ちになります。多くのファンがそう感じるから、差し入れが届き、リピーターが遠路はるばる足を運ぶのでしょう。

ライターコメント

1,300円という入園料を「高い」と感じるか「安い」と感じるか。草津熱帯圏を一度訪れると、その価値が後者に変わるから不思議です。スーパーからの食材提供も、単なる廃棄ロス削減ではなく「ここの動物たちに食べてほしい」という地域の愛なのだと思います。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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