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「コス(COS)」がソウルで描いた“シネマティックな美”。2026年春夏コレクションを現地レポート

  • 2026.4.7
Justin Shin / Getty Images

2026年3月25日(水)、ロンドン発のファッションブランド「COS(コス)」は、ブランド初となる韓国でのランウェイショーをソウルにて開催した。

Justin Shin / Getty Images

クリエイティブ・ディレクターのカリン・グスタフソンが今回探求したのは、シネマティックな美。それは単なる視覚的な華やかさではなく、衣服がもつ情緒的な奥行きと、映画のワンシーンのような物語性をはらんだ表現である。ショーの舞台となったのは、かつて使用されていたスイミングプール。むき出しのコンクリートが目を引くブルータリズム建築の空間を、幻想的なオブジェと巨大なキャンバスで、芸術的な舞台へと塗り替えた。

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全40ルックを構成するのは、スレートグレー、温かみのあるブラウン、クリーム、ホワイトといった「コス(COS)」らしい知的なパレット。そこに深みのあるオックスブラッドレッドやブルーのアクセントが加わることで、タイムレスなスタイリングに現代的なリズムを刻んでいる。

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注目すべきは、素材への深い探求だ。レザーやテクニカル素材は、計算されたドレープによって彫刻的なフォルムを浮き彫りにし、動くたびに光を反射する。紙のような質感のしわ加工が表情をもたらし、リネンのメランジがさりげなく深みを添える。体のラインを見せるシアーな質感と、風をはらむエアリーなファブリックには、現代女性にふさわしい軽やかな洗練が宿っていた。

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コレクションは、1990年代のミニマリズムを象徴するそぎ落とされたシンプルさが核となっている。繊細なシアーリブニットのドレスやセットアップが体を優しく包み込む一方で、1980年代のパワードレッシングを彷彿(ほうふつ)とさせる力強いショルダーラインが、芯の強い女性像を表現。

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特に視線を集めたのは、アトリエの技術が光るシルクの扱いだ。精緻なプリーツや優雅なドレープは、計算し尽くされたカッティングによって、驚くほどしなやかな動きを実現。中でも、シルクで表現されたトロンプ・ルイユ(だまし絵)のデニム風ルックは、クラフトマンシップと遊び心が同居する、今季を象徴するマスターピースといえる。

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1980年代のスタイリングから着想を得たトーン・オン・トーンの着こなしは、異素材の組み合わせによって奥行きを生み出し、都会的でありながらどこかエフォートレスなムードを漂わせる。足元を彩るしなやかなレザーサンダルや軽やかなローファー、くったりとしたやわらかい質感のバッグも、クラシックな装いに心地よいリラックス感を与えていた。

Justin Shin / Getty Images
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洗練されたミニマルなデザインと、革新的な素材使い――「コス(COS)」がソウルの地で示したのは、流行に左右されることのないタイムレスな価値そのものであり、それは着る人の個性を引き立て、日常を映画のワンシーンのように彩ってくれるワードローブだ。その絶妙なバランスこそが、私たちの日常に長く、心地よく寄り添ってくれる理由なのだろう。

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「コス(COS)」クリエイティブ・ディレクター、カリン・グスタフソン Justin Shin / Getty Images

ショーの翌日、同ブランドのクリエイティブ・ディレクター、カリン・グスタフソンに、今回のコレクションに込めた思いを聞いた。

――今回なぜ、開催地にソウルを選んだのでしょうか?

カリン:ほかにも検討した場所や行きたかった都市はいくつもありましたが、今回のコレクションのコンセプトや、実際に使ったあのブルータリズム建築の空間、そして現地のカルチャー、特に音楽カルチャーやモダンさが、とても自然にマッチしていると感じたのです。そういった要素を踏まえて最終的にこの場所にたどり着きました。

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――今シーズン、1980~90年代のムードからインスピレーションを得たきっかけは何だったのでしょうか?

カリン:映画『アメリカン・ジゴロ』におけるメインキャスト、リチャード・ギアとローレン・ハットンの衣装からもインスピレーションを受けました。80年代特有のプロポーションが、改めて魅力的に感じられたのです。その作品では、ジョルジオ・アルマーニが衣装を手がけていたのですが、彼にとっても非常に重要な時期であり、同時に80年代らしい力強さを感じさせながらも、決して過剰にならず、とても洗練された表現になっていたのが印象的でした。

一方で、私たちはそれを自分たちなりの解釈へと昇華させることを大切にしています。そのため、あえて異なる要素として、90年代の空気感や、リチャード・セラの彫刻といった要素を取り入れました。そうすることで、コレクション全体に心地よいコントラストを生み出せたのではないかと思います。

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――ニュートラルなカラーと奥行きの感じられる素材使いも印象的でした。「コス(COS)」らしいミニマリズムを保ちながら、常に新しさを生み出すうえで大切にしていることは何でしょうか?

カリン:前提として感じているのは、人々の装いが大きく変化してきているということです。「気楽さ」や「肩の力が抜けたエレガンス」といった価値観が広がり、より快適なシルエットやリラックス感を取り入れながらも、エレガンスを保ったスタイルが受け入れられるようになりました。

さらに今後は、スポーツウエアの要素が引き続きレディ・トゥ・ウエアに影響を与える一方で、このようなリラックスしたシルエットと、再び台頭するスリムなシルエットとのコントラストが、より際立っていくのではないかと考えています。

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――あなたが手掛ける「コス(COS)」のミニマルな世界観であれば、ウィメンズとメンズの境界線はより曖昧になり、たとえば「男性も楽しめるスカート」のような提案も自然なかたちで受け入れられるのではないかと思いますが、どうでしょうか。

カリン:「コス(COS)」において興味深いのは、性別を超えて好きなアイテムを選ぶ消費者が多く存在している点です。自分の個性に合わせて着こなしを選べるというのは、とてもポジティブなことですよね。そして、それに対して私たちが「こう着るべき」と決めるものではないと考えています。メンズとウィメンズの境界がますます曖昧になり、着こなしの自由が広がっていく流れを私自身もとても楽しみにしています。

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――間もなくブランド創設20周年を迎えますが、「コス(COS)」が今後も守り続けるものとは。

カリン:創業当初から、シーズンを超えて長く着られるタイムレスなデザインにフォーカスしてきましたが、その姿勢はこれからも変わらないでしょうし、変わることは想像できません。そして、それはとてもポジティブなことだと考えています。

一方で、カジュアルとフォーマル、日中の装いとドレスアップの境界はますます曖昧になっており、その流れは今後も続いていくでしょう。そして、ファッションにおける最も大きな変化は、やはりシルエットにあると感じています。だからこそ私たちは、今後もその部分を軸に進化し続けていくのだと思います。

ショーで発表されたアイテムの一部は、COS 店舗および公式オンラインストアにて発売中。ぜひチェックしてみて。

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国内外から数多くのセレブリティも駆けつけた「コス(COS)」ランウェイショーの舞台裏をお届け!

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