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「外出がおっくう」は危険サイン⁉ 【フレイル】の入り口を左右する2つのポイントとは?

  • 2026.4.5

「外出がおっくう」は危険サイン⁉ 【フレイル】の入り口を左右する2つのポイントとは?

フレイル(虚弱)という言葉を聞くと、筋力や体力の低下を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも実は、その始まりはもっと身近なところに! 最近、人と会う機会が減ったり、外に出るのがおっくうになったり——そんな何気ない変化が、フレイルの入り口になっていることも。国立長寿医療研究センター理事長特任補佐の鈴木隆雄さんに、食事・運動・社会参加の3つの面から、今日から無理なく始められるヒントを教えていただきました。

フレイルの兆候が最初に現れるのは?

フレイルは、一つの顔しか持たない。そう思い込んでいる人は多いかもしれない。

しかし実際には、フレイルは
「身体的フレイル」
「精神・心理的フレイル」
「社会的フレイル」
という3つのタイプが重なり合い、影響し合いながら進んでいく。

身体的フレイルは、筋力の低下やサルコペニア(筋肉量の減少)、口腔機能の低下、低栄養などが代表的だ。

精神・心理的フレイルは、気力の低下やうつ、軽度認知障害(MCI)などを指す。

そして社会的フレイルは、閉じこもりや孤立、孤食といった、社会や人との繋がりの喪失だ。

高齢者を追跡調査した研究から、フレイルの兆候が最初に現れるのは、社会的要因であることが多いとわかってきた。鈴木さんはその悪循環をこう説明する。

「高齢になり、社会との繋がりが薄れる→孤独感や疎外感を覚え精神的にうつっぽくなり、外出が減って運動不足に→料理も面倒になり、食欲も減退し、栄養不足に→こうして身体的にも衰えていく。この悪循環に陥らないためには、まず社会的フレイルを起こさない対策をすることが第一です」

退職、子どもの巣立ち、引っ越し、病気……。日常の変化をきっかけに、社会との接点が少しずつ失われていく。そのプロセスに、自分ではなかなか気づけないことも多い。

「社会と繋がり続けること」とは?

社会的フレイルへの対策として、鈴木さんがまず挙げるのは「楽しい交流を継続すること」だ。

会社人間だった男性よりも、地域のつながりやママ友との交流を大切にしてきた女性のほうが、社会的フレイルに陥りにくい傾向があるという。

「たとえば週一回レストランで友人とランチを楽しむ、といった習慣は非常にいい」

ただし、一人でいることを好む人に、無理に外出や交流を促す必要はない。大切なのは、本人がストレスなく楽しめるかどうかだ。

「家で本を読み、テレビやラジオを視聴しているほうが楽しいという人もいます。それも一つの社会参加。自分のストレスにならない方法で社会と繋がることが大切です」

たとえば、NHK「ラジオ深夜便」を聴くことも、立派な社会参加のひとつだと鈴木さんは言う。幅広いリスナーの声に共鳴したり、異なる考え方から学んだり、自分から発信したりすることも、人と繋がるひとつの形なのだ。

65歳を過ぎたら「太らない」より「きちんと食べる」

フレイル対策の2つ目の柱は、食事による栄養の確保だ。

年をとると食が細くなり、さっぱりしたものを好む傾向が強まる。肉など脂っこいものを避けた結果、体重が減り、筋肉も落ちてしまう。高齢者の栄養不足は、身体的フレイルのリスクを高める大きな要因となる。

特に意識して摂取したいのが、たんぱく質だ。

「9つの必須アミノ酸を含有する動物性たんぱく質を積極的にとりましょう。なかでも筋肉を合成するときの主成分となる分岐鎖アミノ酸をバランスよく含有するのが肉類。1日1食は肉料理をおすすめします」

また、1日3食きちんと食べることの重要性も鈴木さんは強調する。

できるだけ家族や友人と「共食」し、食事の時間を楽しむことは、社会的フレイルの予防にもつながるという。

食が細くなってきた場合は、食べる順番を変える工夫も有効だ。主食より副食(おかず)を優先し、鶏のから揚げなどのたんぱく源を先に食べることで、必要な栄養をしっかり確保できる。

さらに、近年問題になっているのが女性のビタミンD不足だ。過度な日焼け止め対策などにより、骨の健康を守るビタミンDが不足しがちになっている。

骨粗しょう症のリスクを高め、転倒や骨折を招く危険性があるため、鮭・さんま・いわし・干ししいたけ・卵黄などから食事でとることに加え、春・夏は1日10分程度の日光浴を習慣にすることを鈴木さんは勧める。

フレイルの進行に深く関わる「サルコペニア」とは?

フレイルの進行に深く関わるのが、筋肉量の減少「サルコペニア」だ。筋肉が減ると活動量が落ち、食欲も減り、さらに筋肉が減るという悪循環に陥る。特に歩行能力の衰えは、要介護への危険因子となりやすい。

しかし、筋肉は何歳からでも増やせる。鈴木さんは「無理せずストレスなくできる運動を続けることが大切です」と言い、まずは座っている時間を減らすことからのスタートを勧める。

「たとえば通勤で一駅分歩く、階段を使う、テレビを見ながらストレッチをするなど、こまめに体を動かすことを意識しましょう」

なかでも、つまずき・転倒の防止に効果的なのが「かかと上げスクワット」だ。

ふくらはぎの下腿三頭筋と太腿二頭筋を同時に鍛えられる動きで、かかとを上げたままスクワットをするシンプルな運動だが、足腰の筋力強化に大きな効果が期待できる。

腰が反らないよう気をつけながら、日常の習慣として取り入れてみてほしい。

フレイルは、気づいた今この瞬間から対策を始められる。鈴木さんの言葉は、優しくも力強い。ぜひ今日から、社会との繋がり・食事・運動の3つを意識した生活を始めてみてほしい。

教えてくれた人

鈴木隆雄さん・国立長寿医療研究センター理事長特任補佐
すずき・たかお●1951年北海道生まれ。1982年東京大学大学院博士課程修了。都老人総合研究所副所長、国立長寿医療研究センター研究所長などを経て、2015年より現職。専門は老年医学、疫学、古病理学。2015年日本老年医学会尼子賞受賞。

イラスト/足立有加・ピクスタ

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