1. トップ
  2. 「結婚しない40歳の子どもが心配…」親の不安を軽くする禅の考え方とは?【禅僧・枡野俊明さん】

「結婚しない40歳の子どもが心配…」親の不安を軽くする禅の考え方とは?【禅僧・枡野俊明さん】

  • 2026.4.2

「結婚しない40歳の子どもが心配…」親の不安を軽くする禅の考え方とは?【禅僧・枡野俊明さん】

今回は、40歳になっても結婚しない子どもを心配するお母さんからのご相談です。さて、禅僧・枡野俊明さんのお答えは?

門を開けば

「開門福寿多(門を開けば福寿多し)」
自ら門を開くことで福を招き入れようという禅の言葉です。

<今月のテーマ>
独身の子どもたちが気がかりです

二人の子どもに恵まれましたが、二人とも結婚していません。結婚には消極的なようです。40歳になり、なかなか若い人のように出会いがないようで……。自分の生活を楽しんでいるみたいですが、このままでよいのかと心配にもなります。

結婚しない令和の若者、その背景にあるものは

お子さんが二人とも結婚しないことが気がかりなのですね。ご心配なお気持ちはよくわかります。しかし21世紀に入って婚姻率は低下の一途をたどり、「20代や30代になれば結婚するのが当たり前」ではなくなりました。

原因の一つに、個人の生き方が尊重される世の中になったことがあげられると思います。これは喜ばしいことです。昭和の頃であれば、「男がいつまでも嫁を持たないなんて、一人前とは認められない」と言われたものです。

女性の場合はもっと深刻で、男性との賃金格差が大きく、一人で生活するには厳しいほどの額だったと思います。生きるために結婚は必須で、結婚しない場合には兄や弟の世話になる人もいたようです。しかし現代社会では、女性も一人で生きていけるだけの収入を得ることは可能になり、人生の選択肢は増えました。その面では、いい世の中になったと言えるでしょう。

それでも実際には、「いつかは結婚したい」と思っている若い人は多いようです。問題は、相談者さんも言うように「出会いがない」ことです。

以前は、職場結婚がとても多かったですね。ただ最近は、仕事と無関係な飲み会などに誘うとセクハラやパワハラととらえられることもあります。「仕事帰りに異性を飲みに誘うことなんて、とてもできません」という声も聞きます。会社は出会いの場ではなくなったのかもしれません。

もっと減っているのは、お見合いでしょうか。昔はお見合い写真をいくつも持ち歩き、「おたくの〇〇さんにぴったりだと思うの!」と結婚相手候補を紹介してくれる人もいましたね。そんな風景も失われました。

自分で踏み出さないと出会うこともできない

かわって登場したのが結婚相談所、お見合いパーティー、そして最近の主流はマッチングアプリです。スマホのアプリで自分にピッタリの相手を選び、それまでまったく知らなかった人同士が出会うのだそうです。最初に聞いたときには驚きましたが、20代から30代の既婚夫婦の33%が「アプリ婚」だという調査もあります。「今度、息子が結婚するんですが、マッチングアプリで知り合ったそうです」という話も最近はよく耳にします。

マッチングアプリや結婚相談所は一見気軽なようですが、あくまでも動くのは自分です。自分でアプリに登録したり、結婚相談所まで足を運んだりしなくては何も始まらないのです。そう考えると、おせっかいな親戚からお見合い写真をもらって「気乗りしないけど、会ってみるか……」と言えた状況は、ある意味ラクだったのでしょう。

さて、このような時代状況を考えると、相談者さんにできることは、おそらくあまりないと私は思います。できるとすれば「マッチングアプリっていうものがあるみたいね。私が独身だったらやってみたかったなぁ。あなたも登録してみたら?」とか、「〇〇結婚相談所ってすごくいいみたいよ」など、圧力にならない程度に背中を押すことくらいでしょう。

人間関係はご縁。焦らず待つことが大事

春来草自生――はるきたって おのずからくさしょうず

春がくれば草木は自然に育つ。
時期の違いこそはあるとしても
ご縁を結ぶ日はきっときます

禅には「春きたって、おのずから草、生ず」という言葉があります。草木は冬の間にひっそりと芽吹きの準備を始め、春というタイミングがきたらいっきにつぼみをふくらませ、枝葉を伸ばす、という意味です。人間だって同じこと。いつがその子にとっての春なのかは、そのときになってみなければわかりません。

大事なことは、ご縁が訪れたときにそれをきちんと結べるよう、自分を磨いておくことだと思います。親御さんはハラハラすると思いますが、お子さんの自尊心を傷つけないように、今はじっと見守るしかありません。

少し前ですが、俳優の大竹しのぶさんが新聞のエッセイで「息子が結婚しました」と書いていました。数年前に「40歳までに結婚する」と宣言して、実際にその通りになったのだとか。時代がかわり、出会いの形がかわり、人生のパートナーと出会う時期もかわってきています。いつかきっと芽吹くのだと信じましょう。

そしてもし、お子さんが「自分は結婚に興味がない。一人で生きていくのも悪くない」と思っているのであれば、それも人生です。ただし現在の日本では、血縁関係や家族関係のある人でなければできないことも多いもの。介護、医療、そして埋葬や死後の手続き……そのようなことを依頼できる若い世代の親戚との、橋渡し役になることが親の仕事かもしれません。

アドバイスいただいたのは

枡野俊明さん
曹洞宗徳雄山 建功寺住職
1953年神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山 建功寺第18世住職。庭園デザイナー。多摩美術大学名誉教授。「禅の庭」を通して国内外から高く評価され、2006年ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100人」に。『悩みを手放す21の方法』(主婦の友社)など著書多数。

取材・文/神 素子

※この記事は「ゆうゆう」2026年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる