1. トップ
  2. レシピ
  3. ハチドリは「1日1杯」相当のアルコールを摂取している

ハチドリは「1日1杯」相当のアルコールを摂取している

  • 2026.3.31
ハチドリは毎日アルコールを摂取している / Credit:Canva

「1日の終わりにビール1本飲むのが楽しみだ」という人は少なくありません。

その1杯で少し酔ってしまうこともあるでしょう。

ところが自然界には、毎日のようにアルコールを口にしているのに、人間のように酔った様子を見せているわけではない生き物がいます。

アメリカのカリフォルニア大学バークレー校(UCB)の研究チームは、花の蜜に微量のアルコールが広く含まれていること、そしてハチドリなどの花粉媒介者が「人間換算で1日1杯」相当のアルコールを摂取している可能性を示しました。

論文は2026年3月15日付の学術誌『Royal Society Open Science』に掲載されています。

目次

  • 花の蜜にはアルコールが含まれている
  • ハチドリは毎日、体重比で「人間の1杯」に近いアルコールを摂取している

花の蜜にはアルコールが含まれている

私たちは花の蜜を、甘い砂糖水のようなものだと考えがちです。

しかし研究者たちは、この見方は少し単純すぎるのではないかと考えました。

蜜は糖分が非常に豊富で、しかも外気や昆虫にさらされるため、微生物が入り込みやすい環境です。

そこに酵母が入れば、糖を分解する発酵が起こり、アルコールの一種であるエタノールが生まれても不思議ではありません。

実際、果物ではこうした発酵はよく知られていますが、花の蜜については幅広い調査がほとんどありませんでした。

そこで研究チームは、「花の蜜にはどの程度アルコールが含まれているのか」を広く調べ、さらにそれが蜜を多くなめる動物にとって無視できない量になりうるのかを見積もることにしました。

研究では、カリフォルニア大学バークレー校の植物園などで29種類の植物から花蜜を採取し、合計147サンプルについてエタノール濃度を測定しました。

あわせて、蜜の糖濃度や、その花が主にどの動物に利用されるかも調べています。

その結果、147サンプルのうち48%でエタノールが検出され、29種中26種では少なくとも1サンプルでアルコールが確認されました。

検出されたサンプルの濃度は平均すると約0.016%で、最大でも0.056%です。

数字だけ見ればかなり低濃度ですが、「花の蜜にアルコールが含まれるのは珍しい現象ではない」と分かったのは大きな発見でした。

さらに、糖濃度が高い蜜ほどエタノール濃度も高くなる傾向が見られました。

ここまでで見えてくるのは、花蜜が単なる「無菌の甘い水」ではなく、発酵の影響を受ける動的な資源だということです。

では、その微量アルコールは、実際に蜜をなめる動物にとってどの程度の意味を持つのでしょうか。

ハチドリは毎日、体重比で「人間の1杯」に近いアルコールを摂取している

花蜜に含まれるアルコールはごく微量ですが、重要なのは濃度そのものよりも、それを毎日どれだけ飲むかです。

ハチドリのような鳥は、1日に自分の体重の50%から150%にも相当する量の蜜を摂取します。

つまり、薄いアルコールでも、体の大きさに対して見れば無視しにくい量になる可能性があります。

研究チームは、既存の文献から各動物の体重や必要エネルギー量をもとに、1日にどれだけのエタノールを摂るかを推定しました。

その結果、アンナハチドリ(学名:Calypte anna)では体重1キログラムあたり1日約0.2グラムのエタノールを摂取する可能性があると見積もられました。

これは、人間が1日に標準的なアルコール飲料を1杯飲む量におおむね近い水準です。

つまり、「ハチドリは毎日、体重比で見ると人間の1杯分に近いアルコールを摂取している」と言えるのです。

では、そんなに飲んでいるなら本当に酔わないのでしょうか。

現時点では、少なくとも人間の酔いのような分かりやすい影響が出ているとは示されていません。

ただし、この研究はハチドリの酔いそのものを直接測ったものではありません。

研究者たちは、ハチドリの極端に高い代謝のため、取り込んだアルコールが体内に長く残る前に処理されている可能性があると考えています。

さらに興味深いのは、ハチドリやハチがアルコール摂取量を調整しているように見える点です。

彼らは低濃度のエタノールを含む蜜は問題なく摂取しますが、濃度が高くなると回避する傾向が見られたのです。

ちなみに、花の蜜に含まれる微量成分が動物の行動に影響を与える例はすでに知られています。

例えばカフェインやニコチンは、花粉媒介者の訪問頻度や記憶に影響を与えることが確認されています。

ただし、現時点ではアルコールがどの程度行動に影響しているのか、また植物側にとってそれが有利に働いているのかは明確ではありません。

今後は、こうした微量アルコールが動物の意思決定やエネルギー利用にどう関わるのか、さらに詳しい研究が必要です。

今回の研究は、花と動物の関係を単なる「蜜と受粉の交換」としてではなく、微生物や発酵まで含めた複雑な相互作用として捉え直すきっかけとなるものです。

私たちにとって酒は好みが分かれる嗜好品ですが、自然界ではもっと日常的なものかもしれません。

花から花へと飛び回るハチドリは、私たちとはまったく違う形で、毎日の「1杯」と付き合っているのです。

参考文献

Hummingbirds Get a Daily Buzz from Nectar, the Equivalent of One Drink Per Day
https://www.zmescience.com/science/news-science/hummingbirds-get-a-daily-buzz-from-nectar-the-equivalent-of-one-drink-per-day/

Birds do it, bees do it … sip alcohol, that is
https://news.berkeley.edu/2026/03/25/birds-do-it-bees-do-it-sip-alcohol-that-is/

元論文

Low-level ethanol is widespread within floral nectar
https://doi.org/10.1098/rsos.250847

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる