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塚本晋也監督が国際キャストと共に“戦争加害者の傷”を描く『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』公開決定!

  • 2026.3.29

監督、俳優として世界から高い評価を受ける鬼才、塚本晋也の監督最新作『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が9月に日本公開することが決定。3月29日の「ベトナム戦争退役軍人の日(National Vietnam War Veterans Day)」にあわせて情報解禁となり、あわせて場面写真1点と監督コメントも到着した。

【写真を見る】メガホンをとった塚本晋也監督

【写真を見る】メガホンをとった塚本晋也監督 [c]Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners
【写真を見る】メガホンをとった塚本晋也監督 [c]Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners

原作は、ベトナム戦争に従軍したアレン・ネルソンが、自らの戦争体験と帰還後の葛藤を綴ったノンフィクション。ネルソンはその体験を基に日本全国で1200回以上の講演を行い、「本当の戦争」を語り続けてきた人物だ。戦争の加害者としての葛藤や痛みを包み隠さず語るネルソンの姿は、多くの聴衆に深い衝撃と学びを与えた。現在は日本で永眠しており、日本とは深い縁を持つ人物でもある。

『野火』(14)が第71回ヴェネツィア国際映画祭コンペティションに出品され、その凄絶な戦争描写で衝撃と感動を与え、『斬、』(18)、『ほかげ』(23)と立て続けに世界の映画ファンを唸らせてきた塚本監督。待望の監督最新作は、国際的な評価を受けた同3作に次ぐ、戦争をテーマにした作品となった。本作では、ベトナム戦争をめぐる“戦争加害者の傷”というタブーに切り込む。

キャストには『シャイン』(96)や『英国王のスピーチ』(10)、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズで知られるオスカー俳優ジェフリー・ラッシュをはじめ、ブロードウェイミュージカル「RENT」のオリジナル・キャストおよびクロージング・キャストを務めたロドニー・ヒックス、ほかタチアナ・アリ、マーク・マーフィーらが集結。ニューヨーク、タイ、ベトナム、日本と、国境を越えた異例のスケールで撮影が敢行された。

主人公アレンは、ニューヨークの貧しい家庭に生まれ、差別と貧困から抜けだすため、18歳で海兵隊に入隊する。沖縄のキャンプ・ハンセンを経て、1966年、映画のヒーローのように誇り高い兵士になれると信じ、彼はベトナム戦争の最前線へ送られる。だがそこで待っていたのは栄光ではなかった。村人のなかにベトコンが紛れ込んでいるという理由で、老若男女すべてが疑われ、命を奪われていく。ただ人を殺すことを強いられる、恐るべき凄惨な現実だった。命を奪う経験を重ねるうち、アレンの心はしだいに感覚を失っていく。

23歳で帰国した彼を待っていたのは、戦場の記憶に縛られる日々だった。大きな音や暗闇に怯え、家族との関係も崩壊し、やがてホームレスへ。孤独と絶望のなかで生きるアレン。そんな彼の前に、彼と真正面から向き合い、救いだそうとする退役軍人病院のダニエルズ医師が現れる。

さらに公開決定に際し、塚本監督からコメントも到着した。「『野火』を映画化するとき、いろいろな資料、書籍を読んだが、そのとき出会ったなによりも恐ろしいノンフィクションが『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』だった。アレン・ネルソンさんは、ベトナム戦争で多くの人を殺した。そして戦争後遺症に生涯悩まされ続けた。自分の犯した罪とその後の人生を包み隠さず吐露した本は、いつまでも頭から離れず強烈に自分の心に刻み付けられた」と原作との出会いを回顧。

しかし、完成までの7年間で、この映画を作りたいという気持ちと、戦争の恐ろしさや人間の暗部から目を背けたいという気持ちの間で葛藤し続けたという。そのうえで、生涯を懸けて戦争体験を語り続けたネルソンの物語は、「あちこちで戦火をあげているいまの世界」にこそ、絶対に必要な物語だとコメントしている。

そんな切実な想いから生まれた本作は、これまで戦争と人間、そして人を殺めることの恐ろしさを描き続けてきた塚本監督にとって集大成とも言うべき作品となった。はたして、終戦から80年が過ぎたいまの日本社会に、ネルソンの言葉はどのように響くのだろうか?

<スタッフコメント>

●塚本晋也(監督)

「大岡昇平さんの『野火』を映画化するとき、さまざまな資料、書籍を読んだが、そのとき出会ったなによりも恐ろしいノンフィクションが『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』だった。アレン・ネルソンさんは、ベトナム戦争で多くの人を殺した。そして戦争後遺症に生涯悩まされ続けた。自分の犯した罪とその後の人生を包み隠さず吐露した本は、いつまでも頭から離れず強烈に自分の心に刻み付けられた。これがもし映画になったら?と想像すると、いまの世の中に絶対必要なことに思えた。戦争がどういうものか。戦争が人をどう変えるか。周囲の人にどういう影響を与えるか。同時に、そんな恐ろしい考えは持たないようにしよう、と逃げる理由も考えた。映画化はあまりに難しく、逃げる理由はいくらでも並べることができた。その物語に近づこうとするたび、人間の暗部がいやというほど浮き彫りになり、苦痛を感じた。しかし、体は、この企画の実現のためにとどまることを忘れ休みなく動き続けた。はたして映画化は困難を極め、作らなければ、でも逃げたい、というせめぎ合う気持ちは7年もの間完成に到るまで続いた。あちこちで戦火をあげているいまの世界。それをますます身近に感じるようになった。これは、アレン・ネルソンというアフリカ系アメリカ人の一人の兵士を描いた真実の物語だ。いまは亡くなってしまったアレンさんを蘇らせ、人々に知ってもらうことがいまの世の中にどうしても必要、という考えを捨て去ることができずに、多くの人たちの理解と協力を得て完全なものとして出来上がった。彼の生きる姿が、皆さんの心に届くことを心から願っています」

文/山崎伸子

※塚本晋也の「塚」は旧字体が正式表記

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