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滞在時間は4時間のハワイ。━━トラブルも乗り越えて、トランジットの旅

  • 2026.3.28

みんなが行きたがるところには行きたくない。ましてやハワイなんて、王道中の王道には。

━━そう思っていた。

だが、ハワイには人々が惹かれずにはいられない魅力が、たしかにある。

それは青い海なのか。南国の雰囲気なのか。それとも、完璧に設計された観光地だからなのか。

理由はよくわからない。それでも世界中の人が、そこへ向かう。そして気づけば、私もその一人になっていた。

今回のハワイへの旅は、空港での弾丸トランジット。滞在時間は、わずか4時間。だが、その短い時間のあいだにも、いくつかのトラブルが起きた。

旅にトラブルはつきもの。トラブルも丸ごと愛せるようになったら。それこそが、真のトラベラーなのかもしれない。

今回は、そんなトラブルの体験と、私なりのちょっとした対処法について綴ろうと思う。

序章:旅は波乱の幕開け

10万円の上乗せフライト

夕方のハワイアンエアに乗って出発

連休初日。羽田空港は大量の旅行客でごった返していた。

「こんなはずじゃなかった」

本来の予定では、出発は2日前。空いている便でゆったりとハワイ入りするはずだったのだ。

早めに予約したはずのハワイ経由ロサンゼルス便で、日程をずらしただけで手数料10万円が上乗せされた。合計20万円のフライト。

旅はまだ、始まってもいない。それなのに、すでに最初のトラブルが起きたようなものだった。

旅程も2日削れ、さらにお金まで積んで、私はこれから一体何を得られるのだろうか。

「いい勉強代だ」と自分に言い聞かせるしかない。思い通りにいかないスケジュールを飲み込むことも、また、会社員の宿命なのだ、と。

最初のトラブル:ビールこぼし事件

ハワイアン航空も例に漏れず満席だ。

機内アナウンスとともに、いかにもハワイという感じの音楽が流れる。その瞬間「もうここはすでにハワイだ!」と、私はすっかり浮き足立っていた。

さっきまで10万円の上乗せフライトに頭を抱えていたはずなのに、飛行機に乗ってしまえば不思議なものだ。

「たまには贅沢な旅もいいじゃないか。これまで必死に頑張ってきたんだから」そんなふうに思いながら、少しだけ優越感に浸っていた。

隣の席には、60代くらいの男性。「一人旅同士、これも何かの縁だな」と、8時間のフライトを共にする相手に、勝手に仲間意識をもっていた。

……が、そんな思いも束の間。旅の最初のトラブルは、あまりに唐突な「ビールこぼし事件」だった。

隣の男性が静かに缶ビールを開けた瞬間、何かの拍子で中身がこぼれ、私のズボンにかかってしまったのだ。

このズボンは今回の旅の一張羅。10年も履き続けている、お気に入りの黒のワイドパンツだ。というかこれしか待ってきていなかった。そんな大事な相棒が、旅の序盤から見事にびしょ濡れになってしまった。

もちろん男性は謝ってくれたし、私も「そのうち乾くので大丈夫ですよ」と笑って受け流した。

ふと思う。日常ではこんなことはあまり起きない。それなのに、旅先ではなぜか起こってしまう。これもきっと、旅人あるあるなのかもしれない。

スカイブルーの海 直射日光に片目を瞑る

8時間のフライト。飛行機が高度を下げると、島々が見え始めた。目の前にはスカイブルーの海が広がる。

「ああ、これがハワイか」。なぜか、同じ太平洋に浮かぶ島、フィジーの記憶がよみがえってきた。パプアニューギニアやソロモン諸島を経由して行った、フィジーでの日々。

ホノルル空港に到着すると、南国特有のじわっとした湿気と、熱気が体をまとう。思わず片目を瞑りたくなるような強い日差しとともに、聞こえてきたのは"Welcome to Hawaii!"の声だった。

陽気な挨拶とともに流れるフラの音楽。フラダンスを習っていた私は、思わず踊り出したくなる気分だった。

外国にいるというのに、まわりには日本人も多くて、不思議なほど安心感がある。それでいて南国特有のゆったりとした雰囲気だ。ハワイが人々を惹きつける、その理由がなんとなくわかる気がした。

次のトラブル:空席待ち

あなたの席は空席待ちです

空港内でアメリカ価格のミネラルウォーターを買い、カットフルーツを食べながら、深夜便の移動で疲れた体を休める。

「次のフライトまでは4時間。ひと眠りしておこうかな」

念のため、先に航空券の発券だけはしておこうと空港カウンターへ向かった。ところが、スタッフが何度確認しても、返ってくるのは「NO」の一言。

━━え? 私の席、取れてないの?

まさかの事態だった。事前に予約を済ませていたはずなのに、なぜか「ヴェイカンシー(vacancy)」という、“空席があれば乗れる”スタンバイ扱いに回されていたのだ。

「私は予定どおりアメリカにたどり着けるのか……? いや、ここも一応アメリカなんだけどさ」

そんな不安が、さっきまでの眠気を一気に吹き飛ばす。旅程はカツカツ、小さな遅れも許されない。ここで立ち止まるわけにはいかないのだ。

一人旅好きなのに、心配性な私はいてもたってもいられなかった。

トラブル時の不安解消術:認知行動療法(CBT)の出番

ハワイでもスターバックス

まずは少し頭を冷やそうと、私は空港内のスターバックスへ向かった。コーヒーを買い、椅子に座って深呼吸をする。

どうすればいいのか、まずはスマホで情報を探る。だが、わかったことはひとつだけ。結局、私はただ「待つ」しかないのだ。

こういうとき、頼れる相手がいないのが一人旅の欠点でもある。助けてくれる人はいない。つまり、私の状況を解決できるのは自分だけなのだ。

ふと頭に浮かんだのが、以前仕事で学んだ「認知行動療法(CBT)」だった。

不安が膨らむときこそ、「思考・感情・行動」を切り分けて眺めてみる。「今、実際に何が起きているのか」「自分は今、何を感じているのか」「次にできる行動は何か」

ひとつずつ整理していく。私は医療従事者として、日々ストレスと向き合う患者さんを多く見てきた。だからこそ、こうしたアプローチの大切さは身に染みている。

まさかこんなハワイの空港で、仕事で培ったスキルが役に立つとは思わなかったけれど。

旅のトラブルは、ある意味CBTの実地トレーニングだ。そうやって冷静さを取り戻す力が、少しずつ自分の中に蓄積されているのかもしれない。

無事に座席確保

ホノルル空港は思っていたよりシンプルで

藁にもすがる思いで、搭乗ゲートの隅でぎりぎりまで待ち続けた結果━━。

ようやく、私の名前がよばれた。ロサンゼルス行きの座席が確保できたのだ。

安堵とともに、張り詰めていた全身の力がふっと抜けていく。

これでアメリカ本土へ飛び立てる。ロサンゼルス、そしてニューヨークへ。

空港では一睡もできなかったため、機内に乗り込むと、疲れと共に深い眠気が襲ってきた。飛行機が高度を上げる「ゴオオ……」という音が耳に響く。

ここからロサンゼルスまで、約6時間のフライト。旅はまだ始まったばかりだ。

まとめ:トラブルも旅の一部

「あのとき旅をしていなかったら、どうなっていただろう」ふと、そんなことを思うときがある。

振り返れば、今回の旅はトラブルだらけだった。10万円の上乗せフライト。機内でのビール事件。そして空席待ち。

それでも、あとになって思えば、そのすべてが旅の思い出だ。

そして私は、ハワイの“本当の顔”をまだ見ていない。だからこそ、次はもう少しゆっくり歩いてみたいと思う。

ビールを浴びた黒のワイドパンツを眺めた。このズボンは、もう10年も履き続けている。

果たしてこの先、どんな旅が待っているのだろう。そんなことを考えながら、飛行機の固い座席の上で、私は静かに目を閉じた。

All photos by Risa Yamada

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