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【事件現場のリアル】法医学者が明かす意外な真実! テレビドラマはどこまで本当?

  • 2026.3.26

【事件現場のリアル】法医学者が明かす意外な真実! テレビドラマはどこまで本当?

1万体以上の検死・解剖に立ち会ってきた法医学医が見てきた、事件現場の“人間の物語”。一見すると不可解な死も、わずかな手がかりをたどることで、事件の真相が浮かび上がってきます。ノンフィクションでありながら、まるでミステリーのように読み進められる世界。『死体は語りだす』フィリップ・ボクソ著(三笠書房刊)から、一部抜粋してお届けします。第1回は、テレビドラマでは描かれない「現場のリアル」をのぞいてみます。

テレビドラマでは描けない「死体現場のリアル」

テレビドラマはどこが誤っていて、視聴者を騙しているのだろう?

第一は服装だ。

テレビや映画の事件現場では、現場の汚染を回避するために必須である保護服を、ほぼ誰も着用していない。フランスでもベルギーでも、保護服を着用せずに事件現場に出入りすることは重大な規律違反である。

とは言え、鑑識が着ているゴミ袋のようなオーバーオールはセクシーではないし、画面では見栄えがしない。私もこれは認めよう。


テレビドラマにはそのほかにも間違いが多々あり、いずれも私のような専門家に言わせると荒唐無稽である。例えば、木製の義肢から血が流れるシーンを見たことがある。人造血管を組み込むことに成功した前代未聞の義肢だ!

また、頭蓋骨の割れ目が、被害者の頭部に振り下ろされた凶器の形状とぴったりと一致している——まるで凶器の指紋であるかのように——シーンもよく見かけるが、これもあり得ない。

さらに、液体の中に放置された死体が膨れるのではなく、腐敗作用で皮膚が顔から剥がれる、という展開をテレビで見たことがある。シャンパンで満たされた噴水の中で若い女性が溺死しているのが発見され、証拠としてコンタクトレンズ1枚が見つかり、そこから犯人のDNAを検出する……というエピソードもあったが、これもいただけない。アルコールが細胞とそこに含まれるDNAにどのように作用するかを考えると、不可能な話だ。

以上だけではない。死体発見現場が清潔すぎる。

特に室内の場合は、事件の前にきちんと掃除されていたらしく、殺人と関連するもの以外の痕跡は奇跡的に残されていないようだ。そのおかげで、現場で発見される痕跡はすべて殺人に関連している。

現実はどうかと言えば……鑑識が足を踏み入れる現場は多くの場合、想像を絶するほど汚らしい。汚物の真っただ中で暮らす人間がどれほど多いかを知れば、皆さんは驚くことだろう。足を踏み入れる前に破傷風の予防注射を打っておくべき、と思わせるほど不潔な犯罪現場が存在するのだ。


20年前、テレビ番組に登場する鑑識官はやりたい放題だった。幸いなことに現在では制作側の意識も変わり、俳優が演じる科学捜査班のスタッフはそれぞれ専門分野を持つようになった。

だが、私の口癖である「餅は餅屋」という言葉の通り、専門外の領域では誤りが生じやすく、今でもテレビの制作者はときどき間違いを犯している。

著者 Profile

フィリップ・ボクソ(Philippe Boxho)
法医学医。作家。
1965年生まれ。ベルギーを代表する法医学医であり、同分野の第一人者。リエージュ大学法医学教授、および同大学法医学研究所所長を務める。そのキャリアにおいて6000体を超える検案、4000体以上の司法解剖を執刀。膨大な専門知識を有する医学の権威として、重罪裁判所での証言回数は300回以上に及ぶ。医学・学術界への貢献に加え、作家としてもフランスやベルギーで絶大な人気を誇り、本書を含め、著作は世界で累計160万部を売り上げる。「死」や「法医学」という厳粛な現実を、人々の知的好奇心を揺さぶる一級の物語へと昇華させるその筆致は、多くの読者を魅了してやまない。

※この記事は『死体は語りだす』フィリップ・ボクソ著、神田順子訳(三笠書房刊)の内容を、ウェブ記事用に再編集したものです。

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